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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
残された親友
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39/59

月を見上げる少女

私、佐伯美咲は、最近夜になると無意識に月を見上げるようになっていたのだけれど、その理由は自分でもよく分かっていなかった。

ただ。

月を見ると少しだけ安心する。

まるで遠くにいる誰かと繋がっているような気がするのだ。

その日も私は自宅のベランダに出て夜空を見上げていた。

丸い月が輝いている。

静かな夜だった。

「ひかりも見てるかな」

小さく呟く。

もちろん返事はない。

だけど。

なぜかそんな気がした。


私、結城ひかりは、その頃王宮の庭園にある噴水の近くで夜風に当たっていたのだけれど、ふと空を見上げた瞬間に美咲の顔が浮かんできて思わず笑ってしまった。

「また考えてる」

自分でも呆れる。

離れてからずいぶん経った。

だけど。

忘れた日は一日もない。

「会いたいな」

そう呟きながら月を見る。

すると不思議なことに胸が少し温かくなった。


俺、シリウス・ルナリアは、王宮へ戻る途中で庭園にいるひかりを見つけたのだけれど、その横顔がどこか寂しそうに見えて足を止めていた。

「こんな時間に何してる」

声を掛ける。

ひかりは振り返った。

「あ、シリウス王子」

「月を見てた」

俺も空を見上げる。

綺麗な満月だった。

「故郷のことか」

ひかりは少し驚いた顔をした。

「分かる?」

「顔を見ればな」

ひかりは苦笑する。

そして小さく頷いた。

「美咲のこと考えてた」

その名前を聞くたびに思う。

会ったこともない少女なのに。

なぜか気になる。

「その親友」

俺は隣へ腰を下ろした。

「そんなに大切なのか」

ひかりは即答した。

「うん」

迷いがない。

少し羨ましくなるくらい真っ直ぐな答えだった。

「どんな子なんだ」

ひかりは嬉しそうに笑う。

「明るくて」

「優しくて」

「面倒見が良くて」

「私が落ち込んでる時は絶対に放っておかない」

聞いているうちに自然と笑ってしまった。

「なるほど」

「お前みたいな奴か」

「え?」

ひかりが首を傾げる。

「いや」

俺は慌てて視線を逸らした。

何でもない。

そう言いながらも心の中では納得していた。

似た者同士なのだろう。


わたくし、アリア・ルナリアは、自室の窓辺で本を読んでいたのだけれど、ふと風に乗って運ばれてきた白い花びらを見つけて手を止めていた。

「また……」

最近よく見る。

夢の中でも。

現実でも。

白い花びらを見ることが増えた。

わたくしはそっと花びらを手に取った。

その瞬間、知らない記憶が頭をよぎる。

白い花畑。

笑い合う少女たち。

そして。

『セレナ!』

誰かがそう呼ぶ声。

「っ……!」

アリアは思わず立ち上がった。

今のは何だったのだろう。

夢ではない。

だけど記憶でもない。

胸だけが苦しくなる。

「セレナ……」

最近よく聞く名前。

なぜこんなに気になるのだろう。


私、佐伯美咲は、月を眺めているうちにいつの間にか眠ってしまっていたのだけれど、その夜の夢は今まで以上にはっきりとしていた。

白い花畑。

優しい風。

そして、一人の少女。

今度は顔が見えた。

長い髪。

優しい瞳。

どこか懐かしい笑顔。

少女は私を見る。

そして微笑んだ。

『月が綺麗だね』

美咲は目を見開いた。

その言葉をどこかで聞いた気がした。

「あなたは誰なの?」

少女は答えない。

だけど、悲しそうに笑った。

『もう少しだから』

また同じ言葉。

あと少し。

何が?何のために?

聞きたいことはたくさんあるのに。

少女の姿は少しずつ薄れていく。


私、結城ひかりは、その夜眠りについた後で同じ花畑に立っていたのだけれど、今度は誰もいないはずの場所から歌声が聞こえてきて思わず足を止めていた。

懐かしい歌だった。

知らないはずなのに。

知っている気がする。

私は歌声の方へ歩いていく。

すると遠くに人影が見えた。

白い服。

長い髪。

そしてその隣には黒髪の少女が立っていた。

「美咲……?」

私は思わず呟く。

だけど次の瞬間。

夢は終わってしまった。

朝日が差し込む。

二つの世界で。

二人の少女が同じタイミングで目を覚ました。

そして同時に窓の外を見た。

そこにはまだ消えかけた月が浮かんでいる。

誰も知らない。

離れた世界で。

二人が同じ月を見上げていることを。

そして、その二人を繋ぐ存在が少しずつ目覚め始めていることを。

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