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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
残された親友
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38/60

届かない手紙

私は、美咲と夢の中で再会した日からずっと胸が温かくて、それと同時に直接言えなかった言葉がたくさん残っていることにも気付いていた。

元気だよ。

心配しないで。

いつか帰るから。

本当はもっと話したかった。

だけど夢は終わってしまった。

「手紙でも書こうかな……」

私は自室の机に向かった。

もちろん届くはずがない。

それでも書きたかった。

『美咲へ』

私はペンを動かし始める。

『元気にしてますか?』

書いた瞬間に苦笑した。

元気なのは私の方が聞かれる立場だ。

『私は元気です』

『優しい人たちに助けてもらっています』

『レオン王子とシリウス王子は相変わらずです』

そこまで書いて少し考える。

相変わらずって何だろう。

思わず笑ってしまった。

『アリアという友達もできました』

『きっと美咲とも仲良くなれると思う』

その時だった。

コンコン。

扉が叩かれる。

「ひかり?」

アリアだった。

「入って!」


わたくし、アリア・ルナリアは、ひかりの部屋へ入った瞬間に机へ広げられている手紙を見つけたのだけれど、その文字からひかりがどれほど親友を大切に思っているのかが伝わってきて胸が温かくなっていた。

「お手紙ですの?」

「うん」

ひかりは少し恥ずかしそうに笑う。

「届かないけどね」

その笑顔が少し寂しそうで。

わたくしは胸が痛んだ。

「きっと届きますわ」

思わずそう言った。

ひかりは驚いた顔をする。

「え?」

「想いは届きます」

わたくしはそう答えた。

なぜそんなことを言ったのか自分でも分からなかった。

だけど、本当にそう思ったのだ。


私、佐伯美咲は、その日の放課後もひかりの家へ立ち寄っていたのだけれど、最近はひかりの部屋にいる時間が少しずつ増えていて、自分でも不思議に思っていた。

本棚を見る。

机を見る。

写真を見る。

そこにいるはずのない親友の気配を探してしまう。

「何してるんだろうな」

私は写真立てを手に取った。

文化祭の日の写真だった。

私とひかりが笑っている。

懐かしい。

その時、ひらり。

また白い花びらが舞った。

「!」

私は立ち上がる。

最近よく見る花びら。

だけど今日は違った。

花びらは机の上へ落ちる。

そのすぐ隣。

一冊のノートが置かれていた。

私は何気なくノートを開いた。

すると最後のページに文字が書かれている。

ひかりの字だった。

『もし私がどこか遠くへ行ってしまっても』

私は息を呑む。

『美咲ならきっと笑っていてくれると思う』

胸が苦しくなる。

『だから泣きすぎないでね』

『また会えるから』

ページをめくる手が震える。

『約束』

その二文字を見た瞬間。

涙が溢れた。

「ばか……」

私は写真を抱きしめる。

「心配するに決まってるじゃん……」


私、結城ひかりは、手紙を書き終えた後もなかなか席を立てなくて、窓の外の月を見上げながら美咲のことを考えていた。

今頃何してるかな。

ちゃんとご飯食べてるかな。

無理してないかな。

考え始めると止まらない。

すると風が吹いた。

机の上の手紙がふわりと浮かび上がる。

「え?」

私は目を見開いた。

手紙は白い光に包まれる。

そして。

一枚の花びらへ変わった。

「うそ……」

花びらは窓から夜空へ舞い上がっていく。

私は慌てて窓辺へ駆け寄った。

だけど、もう見えない。

まるで世界を越えて飛んでいったみたいだった。


その夜。

私、佐伯美咲は、机の上に置かれた一枚の白い花びらを見つめていたのだけれど、それがどこから来たのか分からないのに、なぜか捨てる気にはなれなかった。

そっと手に取る。

すると胸が少しだけ温かくなる。

不思議だった。

まるで、誰かの想いが込められているみたいに。

「ひかり……?」

私は小さく呟く。

もちろん返事はない。

だけど、窓の外の月が優しく輝いていた。

まるで、離れた世界の誰かが見守っているように。

第39話 月を見上げる少女

――月を見るたびに胸が締め付けられる美咲。そして異世界でも、ひかりは同じ月を見上げていて――。

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