同じ夢
私、結城ひかりは、最近眠るたびに白い花畑の夢を見るようになっていたのだけれど、その夢は少しずつ鮮明になっていて、目を覚ました後も心の中に強く残るようになっていた。
その夜も私は不思議な感覚に包まれながら眠りについた。
そして気付けば。
また白い花畑に立っていた。
どこまでも広がる白い花。
優しい風。
懐かしい香り。
「ここ……」
私は辺りを見回す。
すると遠くに誰かがいた。
女の子だった。
黒髪。
少し茶色がかった瞳。
見覚えのある後ろ姿。
私は思わず走り出した。
「待って!」
少女が振り返る。
その瞬間。
私は息を呑んだ。
「美咲……?」
私、佐伯美咲は、その夜も夢を見ていたのだけれど、今までとは違って今回は誰かの気配がはっきりと感じられていて、不思議と胸が高鳴っていた。
白い花畑。
見慣れてしまった景色。
だけど今日は違う。
誰かがいる。
私はその気配を追いかけるように歩き出した。
すると、遠くから声が聞こえた。
「待って!」
その声を聞いた瞬間。
胸が大きく鳴った。
聞き間違えるはずがない。
私は勢いよく振り返る。
「ひかり……?」
そこには。
ずっと会いたかった親友が立っていた。
私、結城ひかりは、美咲の姿を見た瞬間に涙が溢れそうになったのだけれど、本当に本人なのか信じられなくて、その場から動けなくなっていた。
「美咲……」
「ひかり……」
お互いに名前を呼ぶ。
だけど、距離は遠い。
走っても。
歩いても。
なぜか近付けない。
まるで見えない壁があるみたいだった。
「本当にひかりなの!?」
美咲が叫ぶ。
「うん!」
私は大きく頷いた。
「美咲だよね!?」
「そうだよ!」
その瞬間。
二人とも泣きそうになった。
私、佐伯美咲は、ひかりが無事だったことが嬉しくてたまらなかったのだけれど、同時に聞きたいことも山ほどあって、何から話せばいいのか分からなくなっていた。
「今どこにいるの!?」
「分からない!」
ひかりが苦笑する。
「異世界みたいなところ!」
「異世界!?」
私は思わず叫んだ。
夢だと思っていた。
だけど今目の前にいるひかりは本物だ。
そんな気がした。
「みんな心配してるよ!」
私が言う。
するとひかりの表情が少し曇った。
「ごめん……」
その声を聞いて胸が痛くなった。
ひかりだって帰りたいはずだ。
きっと。
私以上に。
私、結城ひかりは、美咲に謝りながらも本当は泣きそうになっていて、だけど心配をかけたくなくて必死に笑顔を作っていた。
「でも元気だから!」
私はそう言った。
「友達もできたし!」
「本当?」
「うん!」
私はアリアのことを思い出す。
レオン王子。
シリウス王子。
アリア。
みんな大切な仲間だ。
すると美咲が少し笑った。
「ならよかった」
その言葉を聞いて胸が温かくなる。
やっぱり、美咲は美咲だ。
その時だった。
花畑に強い風が吹いた。
白い花びらが舞い上がる。
そして、二人の間に一人の少女が現れた。
長い髪。
優しい笑顔。
白い服。
見たことがないはずなのに。
なぜか懐かしい。
「誰……?」
私と美咲が同時に呟く。
少女は微笑んだ。
『会えたんだね』
優しい声だった。
そして、どこかアリアにも似ている。
「あなたは?」
美咲が尋ねる。
少女は少しだけ寂しそうに笑った。
『まだ秘密』
その言葉と同時に身体が光に包まれる。
「待って!」
私は手を伸ばした。
だけど、届かない。
少女は最後に言った。
『もうすぐ全部繋がるよ』
次の瞬間。
景色が崩れ始めた。
花畑が消えていく。
夢が終わる。
「ひかり!」
「美咲!」
二人は同時に叫ぶ。
「また会おう!」
「絶対だよ!」
その言葉を最後に。
世界は光に包まれた。
私、佐伯美咲は、勢いよく目を覚ましたのだけれど、胸の鼓動が止まらなくて、しばらくベッドの上で呆然としていた。
夢だった。
だけど、夢じゃない。
そんな確信があった。
「ひかり……」
私は窓の外の月を見上げた。
すると不思議なことに。
もう前ほど寂しくなかった。
生きている。
どこかで頑張っている。
それが分かったから。
私、結城ひかりは、同じ頃に目を覚まして窓の外の月を見上げていたのだけれど、美咲と話せた喜びで胸がいっぱいになっていた。
そして、あの少女。
あの優しい笑顔。
どこかで見たことがある気がする。
「誰なんだろう……」
小さく呟く。
すると窓辺に一枚の白い花びらが舞い降りた。
まるで、答えはもうすぐだと告げるように。
次回
第38話 届かない手紙
――ひかりは美咲へ想いを伝えようと手紙を書く。しかし世界を越えることはできなくて――。




