美咲の夢
分かりずらかったため、大幅修正しました
ご迷惑おかけしてすみません
私、佐伯美咲は、ひかりが突然姿を消してから何ヶ月も経っているというのに、今でも朝起きるたびに「もしかしたら帰ってきているかもしれない」と期待してしまっていて、そのたびに空っぽの現実を突きつけられていた。
教室へ入る。
窓際の席。
ひかりの席。
今もそこだけ時間が止まっているようだった。
「おはよう、美咲」
クラスメイトが声をかけてくる。
私は笑顔を作った。
「おはよう」
みんな心配してくれている。
だけど。
誰もひかりを見つけられない。
警察も。
先生たちも。
家族も。
誰も。
私は席へ座りながら窓の外を見た。
青空だった。
「ひかり……」
小さく呟く。
その名前を呼ぶたびに胸が痛くなる。
授業が終わった放課後。
私はいつものようにひかりの家へ向かっていた。
ひかりのお母さんもお父さんも、今では私を本当の娘みたいに迎えてくれる。
「美咲ちゃん、来てくれたのね」
「はい」
私は笑顔を作る。
だけど。
本当は泣きたい。
ひかりの部屋へ入る。
机。
本棚。
制服。
全部そのままだ。
私は机の上に置かれていたノートを手に取る。
そこには綺麗な字で将来の夢が書かれていた。
『たくさんの人を笑顔にしたい』
思わず涙が零れた。
「ひかりらしいな……」
本当に、どこまでも優しい。
その夜。
私は自室のベッドへ横になった。
最近は夢を見ることが増えていた。
不思議な夢。
知らない場所の夢。
知らない人たちの夢。
だけど、どこか懐かしい夢だった。
やがて意識が遠のいていく。
そして私は夢の中へ落ちていった。
白い花畑だった。
優しい風が吹いている。
見たことがない場所なのに懐かしい。
私はゆっくりと歩き出した。
すると遠くに誰かが立っているのが見えた。
女の子だった。
長い髪。
優しい笑顔。
どこかで見た気がする。
少女は私を見ると微笑んだ。
『やっと会えた』
私は目を見開く。
「誰?」
少女は少しだけ寂しそうに笑った。
『まだ思い出せないよね』
その声を聞いた瞬間。
胸の奥が熱くなる。
初めて会ったはずなのに。
涙が出そうだった。
「どうして……」
私が呟く。
少女はゆっくりと近付いてきた。
そして私の頬へ触れた。
その手は温かかった。
『ずっと待ってた』
「待ってた?」
『うん』
少女は優しく頷く。
『だって私たちは――』
その瞬間。
強い風が吹いた。
花びらが舞い上がる。
少女の姿が霞んでいく。
「待って!」
私は手を伸ばした。
だけど届かない。
少女は最後に微笑んだ。
そして。
『ひかりをお願い』
その言葉だけを残して消えていった。
私は勢いよく目を覚ました。
「はぁっ……!」
時計を見る。
深夜三時だった。
夢。
そう。
夢だった。
だけど、あまりにも鮮明だった。
私は胸を押さえる。
まだ温もりが残っている気がした。
「誰だったの……?」
知らない少女。
なのに、懐かしかった。
そして、最後の言葉。
『ひかりをお願い』
私はゆっくりと窓の外を見る。
月が輝いていた。
その瞬間だった。
頭の中に一つの名前が浮かぶ。
理由は分からない。
聞いたこともないはずなのに。
自然と口から零れた。
「セレナ……?」
自分でも驚いた。
どうしてそんな名前が出てきたのか分からない。
だけど、胸が締め付けられる。
まるで、大切な人の名前を呼んだみたいに。
同じ頃。
私、結城ひかりは、異世界の空に浮かぶ満月を見上げながら、なぜか美咲のことを思い出していたのだけれど、その夜はいつも以上に会いたい気持ちが強くなっていた。
「元気かな……」
小さく呟く。
返事はない。
だけど、どこかで誰かが私を呼んだ気がした。
風が吹く。
そして白い花びらが夜空を舞った。
私は知らなかった。
今この瞬間。
離れた二つの世界で。
二人の親友が同じ月を見上げていたことを。




