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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
月と太陽の架け橋
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30/58

月下の約束

私は、最近見る夢や神殿で起きた出来事、それにアリアや美咲との不思議な繋がりについて考えることが増えていたのだけれど、考えれば考えるほど分からないことばかりで、気付けば夜風に当たりたくなって城の庭園へ足を運んでいた。

夜空には満月が浮かんでいる。

静かな夜だった。

昼間の賑やかさが嘘みたいに静かだ。

私は噴水の近くへ腰を下ろした。

「綺麗だなぁ……」

異世界へ来てから何度も見ている月。

だけど。

何度見ても綺麗だった。

その時だった。

後ろから足音が聞こえる。

振り返る。

「レオン王子?」

そこにいたのはレオン王子だった。

彼は少し驚いたような顔をする。

「ひかりか」

「レオン王子も眠れないの?」

私が聞くと、レオン王子は小さく笑った。

「少しな」

そう言って私の隣へ来る。

最近はこういうことも増えた。

最初は緊張していたけれど、今は自然と話せるようになっている。

不思議なものだ。

「神殿のことを考えていたのか」

レオン王子が聞く。

私は頷く。

「うん」

「やっぱり分かる?」

「顔に出ている」

即答だった。

私は思わず笑う。

「そんなに?」

「そんなにだ」

レオン王子も少しだけ笑った。

夜風が吹く。

花びらが舞う。

穏やかな時間だった。

しばらく沈黙が続く。

だけど。

嫌な沈黙じゃない。

むしろ心地良かった。

その時だった。

レオン王子が静かに口を開く。

「ひかり」

「ん?」

「怖くないのか」

私は少し考える。

怖い。

もちろん怖い。

夢のことも。

封印のことも。

未来のことも。

全部怖い。

だけど。

「一人じゃないから」

私はそう答えた。

「みんながいるし」

「アリアもいるし」

「シリウス王子もいるし」

「レオン王子もいるから」

私が笑うと、レオン王子は少しだけ目を見開いた。

そして、なぜか困ったように笑う。

「そうか」

短い言葉だった。

だけど、どこか嬉しそうだった。

私は首を傾げる。

「どうしたの?」

「いや」

レオン王子は視線を夜空へ向ける。

そして、静かに言った。

「お前は本当に変わらないな」

「え?」

「自分より先に他人のことを考える」

私は少し苦笑した。

そんなつもりはないんだけどな。

その時だった。

レオン王子が真剣な表情になる。

私は思わず背筋を伸ばした。

「ひかり」

「うん」

「もし何が起きても」

彼の赤い瞳が真っ直ぐ私を見つめる。

「俺がお前を守る」

私は息を呑んだ。

真っ直ぐな言葉。

迷いのない声。

冗談じゃない。

本気だ。

そのことが伝わってきた。

胸が少し熱くなる。

「ありがとう」

私がそう言うと。

レオン王子は少しだけ照れたように視線を逸らした。

そんな姿が少し新鮮で、私は思わず笑ってしまった。

「なんだ」

「いや」

「レオン王子も照れるんだなって」

その瞬間、レオン王子は固まった。

私はさらに笑う。

すると、珍しく彼がため息をついた。

「忘れてくれ」

「無理」

「頼む」

「やだ」

二人で笑う。

その時間がとても楽しかった。


俺、シリウス・ルナリアは、たまたま夜の見回りをしていたのだけれど、庭園で楽しそうに話している二人の姿を見つけた瞬間、思わず足を止めてしまっていた。

ひかり、そして…レオン。

二人とも笑っている。

その光景を見ているだけで分かる。

お似合いだ。

本当に。

だからこそ胸が痛かった。

「参ったな」

小さく呟く。

叶わない恋かもしれない。

それでも、好きになってしまったものは仕方がない。

シリウスは空を見上げた。

満月が輝いている。

そして、心の奥で静かに決意する。

もし、ひかりが笑える未来があるなら。

自分はそれを守りたい。

たとえ、その隣にいるのが自分ではなくても。


私、佐伯美咲は、その夜も机へ向かっていたのだけれど、最近は勉強をしていても気付けばひかりのことを考えてしまっていて、親友が突然消えてしまったあの日から時間が経っているのに、どうしても諦めることができずにいた。

「ひかり……」

小さく呟く。

その時だった。

窓の外から風が吹く。

ノートのページがめくれた。

そしてそこにはいつの間にか描かれていた白い花と月の紋章。

そして、一人の少女。

「誰……?」

見たことがないはずなのに。

懐かしい。

涙が出そうになる。

その少女は。

まるで、どこかの王女様みたいだった。


遠く離れた異世界にて。

わたくし、アリア・ルナリアは、自室の窓から月を眺めながら、なぜか胸の奥が温かくなるような感覚を覚えていたのだけれど、その理由が分からないまま、ふと知らない少女の笑顔が頭に浮かんでいた。

黒髪。

優しそうな笑顔。

そして。

どこか懐かしい瞳。

「誰なのでしょう……」

その呟きは夜風に消える。

けれど、離れた二つの世界で少しずつ。

二つに分かれた魂は再び引き寄せられ始めていた。


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