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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
夢と召喚と
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16/60

約束の始まり

私は王都郊外に大量のシャドウが現れたという知らせを聞いてからというもの、胸の奥に嫌な予感が広がり続けていて、それがただの不安ではなく、これから何か大きな出来事が起きる前触れのような気がしてしまい、馬車の窓から流れる景色を見つめながら何度も手を握り締めていた。

王都の外。

広大な草原。

そこには。

黒い影が無数に蠢いていた。

シャドウ。

舞踏会を襲った魔物たち。

だけど、あの時とは比べものにならない。

三百。

いや、それ以上いるかもしれない。

まるで闇そのものが大地を埋め尽くしているようだった。

「ひかり」

隣からレオン王子が声をかける。

私は顔を上げた。

赤い瞳が真っ直ぐこちらを見ている。

「危険だと思ったらすぐ下がれ」

私は小さく笑った。

「心配しすぎです」

すると、レオン王子は少しだけ眉をひそめる。

「心配する」

即答だった。

私は思わず目を丸くしてしまう。

その言葉があまりにも真っ直ぐで。

嘘がなくて。

少しだけ胸が熱くなった。


俺、レオン・ソレイユは、自分でも驚くほどひかりのことが気になってしまっているのだけれど、その理由を考えようとすると決まって夢の中の花畑が浮かんできてしまうため、最近は深く考えないようにしていた。

守りたい。

ただ、それだけでいい。

今は。

「来るぞ!」

シリウスの声が響く。

騎士たちが武器を構える。

そして。

戦いが始まった。

シャドウたちが押し寄せる。

騎士たちが迎え撃つ。

剣がぶつかる音。

魔法が炸裂する音。

叫び声。砂煙。

私は後方から光の力で負傷者を支援していた。

だけど、次第に異変へ気付く。

「……え?」

シャドウたちが、私を見ている。

違う。

見ているんじゃない。

集まってきている。

「ひかり!」

アリアの声が聞こえる。

だけど、もう遅かった。

数十体のシャドウが一斉に私へ向かって飛び出してくる。

怖い。

身体が動かない。

逃げなきゃ。

そう思うのに、足がすくむ。

その瞬間だった。

大地が光る。

白い光。暖かな光。

そして、花びら。

「え……?」

私は足元を見た。

そこには、一輪の白い花が咲いていた。

一輪。また一輪。

次々と無数の花々が咲いていく。

風が吹く。

花びらが舞う。

戦場だったはずの場所が。

まるで夢で見た花畑みたいになっていく。

その瞬間。

頭の中へ映像が流れ込んできた。

青空。

花畑。

笑い声。

四人の人影。

『約束ですよ』

誰かが笑う。

『ずっと一緒です』

優しい声。

『何があっても守る』

力強い声。

涙が溢れそうになる。

知らないはずなのに。

懐かしい。

どうして。

こんなに。

『思い出して』

声が聞こえる。

『約束を』

光が弾ける。

その瞬間。

周囲のシャドウたちが一斉に消滅した。

誰も動けない。

戦場が静まり返る。


俺、シリウス・ルナリアは、その光景を見た瞬間に心臓が大きく脈打ったのだけれど、それは千年前の伝承でしか聞いたことがない奇跡が今まさに目の前で起きていたからだった。

白い花と聖なる光。

約束の花畑。

伝説そのもの。

「まさか……」

思わず呟く。

その時だった。

空が暗くなり、全員が見上げる。

黒い雲ではない。

闇だ。

空そのものが黒く染まっていく。

そして、巨大な紫色の瞳が現れた。

世界を見下ろすような瞳。

『見つけたぞ』

低い声が響く。

『ようやく』


私、結城ひかりは息を呑む。

ネヴァ。

『フィオラ』

また。

その名前。

「違う!」

気付けば叫んでいた。

「私はフィオラじゃない!」

静寂。

「私は結城ひかり!」

胸が苦しい。

だけど、それだけは絶対に譲れなかった。

前世が何であろうと。

誰の生まれ変わりだろうと。

私は私だ。

その瞬間。

ネヴァの瞳が揺れた。

驚いたように。

悲しんだように。

『そうか……』

小さな声。

『お主はそう言うのじゃな』

どこか寂しそうだった。

そして。

闇は消えていく。

シャドウたちも消滅する。

戦いは終わった。

だけど。

誰も理解できなかった。

なぜネヴァがそんな顔をしたのか。

なぜ私の胸が苦しくなったのか。


わたくし、アリア・ルナリアは、その夜バルコニーで月を見上げながら考えていたのだけれど、ひかりが現れてから世界が大きく動き始めていることだけは確かであり、それが希望なのか、それとも新たな悲劇の始まりなのか分からずにいた。

それでも、わたくしは決めている。

何があっても。

ひかりの味方でいると。

月明かりが静かに降り注ぐ。

そして、千年前に交わされた約束が。

再び動き始めようとしていた。

第一章『夢と召喚と』 完

次章――第二章『月と太陽の架け橋』へ続く

ここで、第一章は終了です!

ここまで呼んでくださった読者の皆様には心より感謝申し上げます

さて、次章に関しましては、少し時間が開きます

なるべく早く投稿できるよう、努めてまいります

初投稿で、誤字や脱字、設定のズレや時系列のズレなど、不備は沢山あったと思います

何かありましたら、優しさと思って教えて頂けますと幸いです

設定や人物紹介をもっとしっかりして欲しいなどのご要望後あれば、お申し付けください!

章の間に関係や性格、どんな立ち位置なのか、ネタバレなしでまとめたいと思います

一章では、途中から視点の表し方に変更があったと思います

そこをこれから全話統一していく所存でございますので、編集後のお話も読んで頂けたら嬉しいです

感想やご意見、評価やブクマなど、お待ちしております

第二章、近日投稿です

お楽しみに!

これからも応援よろしくお願いします


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