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残像少女  作者: 網笠せい
6 恋人 「Whose doll am I ? Where does the shelf lie?」
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第三話

 私はしばらく、二条先輩を避けた。二条先輩がいそうなときはゼミに近づかず、オンラインで済みそうなものは済ませた。どうしてもゼミの研究室に行かなくちゃいけないときは、二条先輩がいなさそうなときを狙った。


 顔を合わせづらいというよりは、二条先輩にふられたのだと認識した。


 なのに、私が提出した論文の添削は、二条先輩から返ってきた。


 事務的な内容で、とても二条先輩らしいメールだった。最後に一言、まるで追伸のように「この本が参考になる」とリストが書いてあった。


 私は以前二条先輩がくれた手書きのメモを思い出して、カバンのなかにしまっていたそのメモをそっと取り出した。


 達筆でもないし、下手でもない、強いて言うなら、味のある字だった。


 二条先輩はどう考えているのだろう。ちっとも想像ができなかった。


 教わった本を大学図書館に借りに行くと、二条先輩に出くわした。


「二条先輩」

「……ああ、三好か。論文は進んだ?」

「まあ、そこそこですね」


 図書館外持ち出し禁止の本を読む私の隣に、二条先輩が座る。


 信じられないことに、私の胸は少し高鳴っていた。


 なんで? 二条先輩って面倒くさそうじゃん。


 何度も同じところを読んでいることに気がついて、私はそっと二条先輩に声をかけた。


「二条先輩、怒ってないんですか?」

「……怒ってる」

「じゃあなんで」


 二条先輩はため息をつきながら、本のページをめくった。


「お前はお前でいればいい。誰かといるために、代償なんて払おうとするな」


 薄暗い図書館に差し込む光がまぶしかった。古い紙の匂いがして、日差しのなかでホコリが舞っている。


 私はそのとき、ようやく景色を見ることができた。


 自分と、自分に関わってくる人間しか見ていなかったことに気がついた。


 図書館のなかでゆっくりと落ちてくるホコリは、ホコリなのに、とても綺麗だった。

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