第四話
僕が我に返ったとき、三好さんが持っていた白紙のカードに≪恋人≫の絵がついた。僕はくわしくないけれど、多分アダムとイブの絵だろう。
三好さんは細い指でタロットカードを僕に渡すと、図書館の奥に歩いていく。そっと行き先をのぞくと、二条先輩の後ろ姿が見えた。
三好さんがタロットカードに吸われた記憶のことは、誰にも話さない。重大なプライバシーに関わることだし、もしもそんな噂が出回ってしまったら、彼女は自分の居場所をなくしてしまうような気がした。
二条先輩に笑いかける三好さんの横顔が見える。たとえそうなっても、きっと二条先輩は変わらないんだろう。なにより、三好さんはもう、タロットカードに吸われた記憶を覚えていない。
タロットカードが導く記憶の旅をするのが、僕でよかった。悪い奴だったら、脅迫に使いかねない。僕なら、ただ映画を見るようにながめて、いつの間にか忘れる。愚者というのは言い得て妙だなと、僕は苦笑した。
本棚の前で、サナが本を選んでいる。今日は長い髪の毛を結い上げていた。クラシカルな立襟とロングスカートは、昔の外国の家庭教師が着ていそうな服だった。
あれもゴスロリ服なんだろうかと僕が首を傾げていると、サナが手を伸ばした。広がった袖口には細かなレースがついていて、ドレープの波打つ線が綺麗だった。よく見ると、ブラウスのボタンのところに布地と同じ色のレースがついていて、シックなゴスロリ服という印象を受けた。
新聞記事や検索をしてみたけれど、結局早苗の家が火事になったという記事は見つけられなかった。僕は早苗の苗字も、住所でさえも知らなかった。
図書館内に僕のスマホの音が響いて、あわてて音量を下げる。メールだった。
骨董品屋を営む叔父から、骨董市に出るのを手伝って欲しいという内容だった。
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