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2話 国王会議 下編

「えっと……二人とも俺に何か用でも?」


 今は会議じゃないと割り切ったグレイスは普段の口調でザーテル国、マージェス国の両国王に問いかける。


「ここはわしから話すとするかのぉ、それでもよいか、マージェス国王よ」


「構わない、あなたの深刻そうな顔になるようなほどの用件ではないので」


「うむ、すまないのぉ……グレイス殿、単刀直入に聞くが、お主の父親は会議で言った通りで間違いないんじゃな?」


 会議で言った通り、というのはグレイスが新参の王であるため身元証明と言わんばかりに自己紹介を強いられて説明したのだ。もちろん、混乱を避けるために魔界に住んでいることなどは伏せた状態であらゆる事を説明した。ただ一つ説明し忘れているとすれば既婚者であることぐらいである。

 グレイスは父親のことも話しているので合点が言ったようで頷く。


「えぇ、まぁ、そうですけど……それが何か?」


「そうか、そうか……あの時、まだゲオルは生きておったのか……それで今ゲオルは――」


「三年前、山賊の襲撃から立ち向かってそのまま」


「そうじゃったか……すまないのぉ、気に病むことを聞いてしまって」


「いえ、もう仇もけじめもつけてる事です。気にしないでください。――それよりもなぜ、父に執着するんですか?何も繋がりが――」


 この通り、ここの会話に至るまでグレイスは見落としていた。ザーテル国王ヴァルフリートの姓もまたヴェリタスなのだ。


「そうじゃ、ゲオルはわしの息子でな、本来ならば第一王子として生まれた身じゃから今頃この国の王を務めてる予定じゃった。まぁ、ゲオルは王を務める柄ではないと言って戦に身を投じ、そして多くの戦で勝利を挙げてきた英雄の血を持って生まれてきた子じゃった。もう二十年前じゃったか、その戦争でゲオルが戦死したと聞いておったのでお主の事を聞いていても立ってもおれなかったのじゃ」


「そう――……ですか」


 家系に驚いたグレイスは語彙力を失ったかのように淡白に返事を返すしかなかった。それにグレイスによって父親に英雄の血があったのもまた驚きだった。

 英雄の血は持っている人へ様々な恩恵を与え、子孫が完全に絶えるまで親から子へ子から孫へと必ず受け継がれていくものでもある。

 そう、グレイスもまた英雄の血が流れた存在だったのだ。


「わしの用件はそれだけじゃ。先に退室するとするかのぉ」


 そういうとヴァルフリートは転移魔法でこの場から姿を消した。


「マージェス国王はどういった用件で?」


「その……だな、さっきの会議であなたの国民に酷い言い草をしてしまった事を謝りたくてだな。いや、私が男嫌いだとかではないんだ、本当だ!ただその……夢魔族の被害が酷くて十三の男より上が被害にあっているのだ。だからその、済まなかった!!」


「あ、いえ……俺もそこまで気にしていませんでしたし――」


 突然の謝罪にグレイスは焦り、顏を挙げるように促す。


(――夢魔で被害が出せるほどというと黄の魔王のところだな。そういった事は聞いていなかったがこれは問う必要があるか?)


「それとその――」


(まだあったか)


「私と婚約前提にお付き合いしてくれないだろうか!」


 グレイスは突拍子もなく来たその言葉に飲んでいた水で噎せた。マージェス国王、フランツェル・ヴァーゼリアは至って真剣だった。フランツェルは自分自身で思うのも何だとは思ってはいるものの容姿には自信があった。風が吹けばしなやかに揺れ動き、日に当たれば輝く整われた金色の髪に女性の目にしては鋭くも淡い赤の瞳がキツいイメージを和らげていおり、スタイルにも自信はあった。

 彼女自身、歳もグレイスと大差変わらず、麗人と呼ぶに相応しいものでまずこの告白を振る男はいないだろう。そう、未婚者であれば……。


「気持ちはありがたいけど、俺にはもう妻が――」


『あら、いいじゃない。私は構わないわよ?本来は人間同士が結ばれるのが正しいのだもの』


「なっ、アル――いつの間に!!」


『会議の時からずーーっとよ、フランツェルと言ったかしら?――にしても少し長いわね、フランって呼んでもいいかしら……そうね、私はグレイスの妻のアルシア・ベル=ディザレス。気軽にアルと呼んでくれていいわ、堅苦しいのは好きじゃないから畏まらなくていいわよ』


「そうか、ではお言葉に甘えて――もう私の名前を知ってはいるとは思うけど、フランツェル・ヴァーゼリアよ」


 お互いに自己紹介が済んだところでアルシアは本題に話を戻す。


『それでだけど、さっきも言ったけど私は構わないわよ。もちろん、私とてグレイスと別れる気はないわ、だから……そうね、妾でも不服ではないというのならって条件付きぐらいかしら』


「私にとって彼が正夫になわけだから、不服はないよ」


 グレイスの重婚問題は正妻と妾希望の話し合いで瞬く間に解決していく。そこにグレイスは自分の意思はどこにあるのだろうか、と問いかけた。


『ないわ』


「そんな」


 あまりにも理不尽に決まったこの重婚に最終的に心を折られ、承諾するグレイスだった。

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