お約束
お約束の展開って、またか!って感じもしますけど、鉄板ネタは面白いですよね。
私の乗った大洗発苫小牧行のフェリーは、突然の嵐で目的地にたどり着くことはなかった。
沖合いで何かにぶつかり沈み行く船からゴムボートで逃げ出した。しかし、海流に乗ったのか、すごい早さで外洋に流されてしまった。
流されているとき、ドンッドンッとボートの下に何かが当たる音がずっと続いていた。こう言ったとき一クトゥルフファンとしては、あの忌まわしき魚たちが船の下にいるかと夢想してしまうが、現実には有り得ないことだろう。
そのままあてもなく外洋を進んでいたように思う。途中であまりの暑さに意識が朦朧としてしまったので、はっきりとは言えないのだが。ただ、船底を叩く、ドンッドンッという音だけはやけに鮮明に覚えている。
ふと目を醒ますとボートが停まっていることに気付いた。陸だ。そう考えてボートを降りると、そこには海底が浮上したかのような黒い泥の大地が広がっていた。自分のクトゥルフ脳が、これはヤバい。と反応しているが、現実には有り得ないと言う思いと、違うことを証明したい気持ちでボートを離れた。
次第に乾いてくる泥の大地。遠い様にも近い様にも見える泥の丘。その先にある地の底まで続きそうな亀裂。…小説にある通りだ。
そこまで来る頃には現実感を失い、誘われるように裂けをお降りていってしまう。
そこには、勿論あの忌まわしき石板があり、それを見たショックで我を取り戻した。そして、正気と狂気の狭間でボートまで逃げ帰った。
目を醒ますと病院のベッドの上だった。
それから私は窓を見れない。窓にはカーテンをかけたままにしている。
きっと窓の外には、私を迎えに来た奴等が居るのだ。一人になると窓を叩く音が聞こえるのだ。
あの水掻きを持つシルエットがカーテン越しに映る…。
…あぁ、窓に…窓に…。




