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クトゥルフ短編集  作者: 異次元からの猫
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視魂

神社の御神体って何が入ってるんでしょうかね。

 視魂様。私達の村にある神社の神様の名前だ。村のみんなはどんなものを祭っているか、何に対して祈っているかは知らないが、今年から神主を受け継いだ私は知っている。祭られているものは一冊の本だ。

「根黒野視魂」と言う本だ。

 前の神主からは、視魂様は決して開いては行けないと言っていた。開いたら視魂様が閉じ込めているものを放つことになると。

 この神社を継いで数年。前の神主は既に死に、視魂様が何であるか知っているのは私一人だ。ただそれだけなら前の神主と同様に、次の神主に必要なことだけ伝えて死ぬつもりだった。

 浄化の業を行っている時、風もないのに視魂様がパタパタと開いたのだ。まずい、封じられたものが出てしまう。そう思ったが何も起きなかった。疑問に思ったが、なんにせよ何も起きないのなら良いとホッとしつつ視魂様を閉じる。

 一瞬見えた中に書いてあったものは、草書体のように見えた。ただ、その字は蠢いているように見えたのだ。


 その日から、文字は沈黙を止め、暗闇には瞳が光り、水は生気を求め人を引き込み始めた。そう、視魂様に封じられていたものが出てきてしまったのだ。これを沈めるには、生贄をささげるしかない。だから私は視魂様に書かれた通りに生贄をささげる。一字一句逃さないように読み、視魂様が指定する通りに生贄をささげる。こうしなければならないのだと自分に言い聞かせて。


 今日も生贄を捕まえて来た。

 その生贄は珍しく、体毛が殆ど生えていない動物だ。唯一頭から生える体毛は腰のあたりまであり、色は艶やかな黒だ。大きさは大体私と同じか、少し小さいぐらい。肉食なのだろう。歯が生えていて、目が正面を向いている。


 そして、不思議なことに言葉を喋るのだ。

 だが、言葉は理解できない。当たり前だ。生贄に人はいないのだから。

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