蜘蛛
家蜘蛛はダニを食べてくれるらしいです。
ぴょん
「あ、蜘蛛だ。」
「お、その蜘蛛はダニを食べてくれるらしいぞ。」
「へぇー。そうなんだ。じゃ、そのままにして上げた方が良いのね。」
「そうそう。」
ぴょん
その夜、私の夢の中にその蜘蛛が出てくる。一匹や二匹ではない、数え切れないぐらいの蜘蛛達が、同じ方向に進んでいる。そう言う夢だ。
ざわ。
私も不思議には思いつつも、蜘蛛達と同じ方向に進んでいく。そこに私の意思はなく、疑問も待たずにただひたすら。
ざわざわ。
そうして蜘蛛達と進んでいると、自分の形がぼやけてくる。私は本当に人だったのか、本当は周りのみんなと同じ形をしているんじゃないか。
頭の中がその考えに支配される頃には、視界が彼らと同じところまで下がり、八本の足で跳ねるように進んでいることを自覚する。
ざわざわ。ざわざわ。
なんだ。やっぱり、みんなと同じ形なんだ。そう確信を持つと、今度はどこに向かっているかが気になってくる。
一面、黒い私達で覆われている。所々、重なってしまっているやつらもいる。
ざわざわ。ざわざわ。ざわざわ。
さらに進むと、大きな裂け目が見えてくる。
それが見えた瞬間、確信した。あぁ。私達はここに向かっていたんだ。まさに今、目的地についたのだ。
そこには、対岸が見えないほどの果てしない裂け目に、巣を作る巨大な蜘蛛。そして、その巣を渡り、対岸へと向かう仲間達。
ああ。と、自分の中の何かが声をかける。あの先に行っては駄目だ。戻れなくなる。
「はっ!」
「どうしたんだい?凄くうなされていたけど。」
「あぁ。あなた。凄く怖い夢を見たの。」
「どんな夢だい?」
「自分が蜘蛛になって、どこか解らないところへ行って、崖を渡ろうとするの。でも、その先に行ったら何か恐ろしいモノがいて、戻って来れなくなるような気がして…。」
「渡っちゃったのかい?」
「いえ、そこで目が覚めたわ。」
「そうか…。渡ってしまえば、怖くなくなるのに…。」
そう言いながら、こちらを見詰めてくる。
…寝惚けているのだろうか、目が8つある。




