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37 弟妹 (リオル視点)

 シオンは可愛い妹だ。溺愛しているといっても過言ではないと自負している。


 俺が守らなければならない存在、それがシオン。

 だって俺はシオンのお兄ちゃんだからね。

 兄が可愛い妹を守るのは当然のことなんだから。



 今でも鮮明に思い出される出来事。


 幼いシオンが離れにあった小さな塔から落下するのを目の当たりにした俺は思わず走り出していた。一瞬恐ろしい想像が頭を過ぎり、息が詰まる。

 それでも必死に落下するシオンの元へと駆け寄った。


 真下には池がありシオンは水柱を立て池へと落下し、そのまま沈んでいく。

 俺は躊躇うことなく池へと飛び込んだ。

 俺の手がシオンへと届いた瞬間に父の魔法で助け出されたのだが、その手にシオンを抱くまで生きた心地がしなかった。


 恐らく俺のシオンに対する溺愛はそこから始まっている。



 ある日、シオンは妹ではなく弟になった。しかも戸籍までもが完璧な弟に。

 代わりに妹はイェシオンという名となり、シオンとは双子なのだが病弱で遠縁の家に療養の為に預けられていることになっていた。


 父は娘であることを望んでいたけれど俺は実際どちらでもいいと思った。シオンがシオンであることにかわりはないのだし、それを望んだのはシオンだったのだから。


 俺は社交の場に出ることもそれなりにあり、その噂を耳にした。


 ファシール家の優れた兄に出来損ないの弟。その外見からかシオンは実はファシール家の子供ではないという心無い噂まであった。

 確かに黒の髪と瞳は珍しいが存在しないわけではないのだし、遠い祖先にはいたという記録だってある。それに知られてはいないが属性の闇とも合っていて、俺はとても素敵な色だと思う。

 イェシオンは人前に出ることはなかったのでその外見は知られていなかったが、シオンと双子ということでやはり同様の噂が流れていた。

 悪意のある者が流した噂に過ぎないのだが、それでもシオンが知れば傷つかない訳がない。


 俺はそんなシオンがずっと心配だった。

 シオンがその内側に押さえ込んでいる魔力は兄である自分を凌駕しているというのにその力を恐れているかのようなシオン。

 自分の魔力を押さえ込んでいるその原因は、魔力の属性を調べようと水晶に魔力を込めた、あの時の出来事だろう。

 あれはシオンが悪いわけではないのにシオンは酷くショックを受けたようだった。そして俺の属性が光でも闇でもないことが悔しくて仕方が無かった。


 シオンは成長するにつれ日々を屋敷の敷地内で過ごすことが多くなり、魔法の練習も頑なに拒んでいた。

 そしていつしか体を鍛えるようになり、騎士になることを夢見るようになっていたらしい。


 そんなシオンが魔術学園に入学することになった。理由はどうであれ、魔法にかかわること全てを拒否していたシオンが。

 噂には聞いていた光属性の王子の協力で魔力の制御の訓練に励んでいるという。

 友人にも恵まれたようで今のところ問題なく学園生活を送っているようだった。


 夏になり、イェシオンが恩人だとかいう理由で王子が妹に会いたがっているという話を聞いた。

 仕方ないのでシオンがイェシオンとして会うことになったのだが、面倒なことでもあったがシオンの女の子らしい姿を見られたのでよしとしよう。

 つい小躍りしながらティカとイェシオンの服を大量購入してしまったのは仕方がないことだろう?


 そして王子よりあのユージンというフィッツジェラルド家の長男の方が油断がならない相手だということもわかった。

 彼がシオンに向ける視線は友人でも、王子の様に傾倒しているものでもない。ただ何かしらの執着は感じたのだ。それを表に出すことは無く表情からもそれは窺い知れない。

 少々話をしてみたのだが、やはりそれが何であるのかはわからなかった。



 シオンなりにがんばってなんとか王子たちの訪問期間を乗り切り、妹は再び弟へと戻る。

 名残惜しくてつい大量に用意しすぎた服をカバンに詰め込み持ち帰った。ちゃんと泣き落として着てくれるように約束も取り付けて。


 シオンには悪いけれど、イェシオン姿がとっても可愛かったからどうしてもまたその姿を見たかったんだ。



 帰宅してから疲れたからと先に自室に戻った俺は、友人からの手紙を眺める。

 差出人はディアン=フィリオム。社交の場で知り合い意気投合した友人だ。

 ディアンには学園でのシオンの様子をこうして手紙で伝えてもらっている。心配は要らないと綴られている手紙から視線を上げ息をつく。


 心配ないと言われても心配な兄心。

 特殊な属性を持つことだけでなく、何よりシオンは女の子なのだから。あんな男だらけの中で女の子が一人だけだなんて危険すぎる。


 俺は机の上に置かれているもう一通の厚みのある封書を手にする。

 その差出人を確認すれば、知らずと口角が持ち上がり笑みの形を作っていた。



 いつかシオンの守る人間が隣に立つ時がくるまでは、その場所にいるのは俺でありたい。

もちろんまだその場所を譲るつもりなんてない。

 邪魔な王子やユージンを駆除しておきたいところだけれど、さすがにそれはシオンが悲しむだろうからやめておこう。


 彼らにも多少障害があったほうが楽しいと思うんだ。

 もちろん楽しいのは俺だけど。



 一番に願うのはシオンの幸せ。

 その時が来るまでは陰日向から、たまには手をだしつつ見守っているからね。

微妙に黒いお兄ちゃん。


クリスとユージンの邪魔する気満々です。

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