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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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第27話 第4部 アメリカVSロシア 第3話 崖を渡る男

『ネットスキル大戦』


第4部 アメリカVSロシア


第3話 崖を渡る男


「全員、準備は?」


デイビッドが尋ねた。


マーカスが銃を持ち直す。


「いつでも」


エマはスコープを確認した。


「私たちが注意を引いている間に、あなたが狙撃手を探す。そうね?」


「ああ」


オリヴィアが腕を組む。


「もう一度確認するけど、私たち四人が撃たれるのよね?」


「できれば避けろ」


「できれば?」


「死ななきゃいい」


ルークが笑った。


「こいつ、仲間の扱いが雑すぎるだろ」


デイビッドは高台を見上げた。


「三人倒したら戻る」


「失敗したら?」


「戻らない」


「もっと最悪だった!」


マーカスが笑う。


「よし、行くぞ!」


五人が動き出した。


ただし。


向かう方向は違った。


四人は開けた岩場へ。


デイビッドだけが、岩壁の裏側へ回った。


*


ロシア側。


ニキータが《PING》を発動する。


五つの点。


そのうち四つが、まとまって移動していた。


「アメリカ、動いた!」


エカテリーナが《TRACE》を確認する。


「四人が東へ。一人は別方向」


「ウォーカーか?」


「おそらく」


イリヤが答えた。


『四人を撃つ』


アリーナ。


『了解』


ミハイル。


『一人が気になる』


ニキータは笑った。


「たった一人だろ?」


ミハイル。


『その一人がウォーカーだ』


*


「行くぞ!」


マーカスが岩陰から飛び出した。


《GUARD》


その後ろをルークが走る。


《DASH》


一気に別の岩へ。


エマとオリヴィアも左右に分かれた。


銃声。


《MARCUS HP 43%》


「来た!」


マーカスが岩陰へ飛び込む。


ルーク。


「右から!」


エマ。


「違う! 今のは対岸!」


オリヴィアが撃ち返す。


だが、狙撃手の姿は見えない。


「撃つ場所くらい教えてほしいわね!」


「適当に撃っとけ!」


「適当で当たるなら苦労しない!」


四人は移動を繰り返した。


岩から岩へ。


走る。


撃つ。


隠れる。


また走る。


ロシアの三人は、その四人を狙い続けた。


*


その頃。


デイビッドは岩山を登っていた。


手をかける。


足を置く。


身体を引き上げる。


さらに上へ。


やがて、峡谷を広く見渡せる岩棚に出た。


「さて」


伏せる。


スコープを構えた。


対岸。


高台。


中腹。


岩の陰。


ゆっくり探す。


遠くで銃声が響いた。


通信。


『デイビッド! こっち結構きついぞ!』


ルークだ。


「知ってる」


『早くしてくれ!』


「探してる」


スコープを右へ。


岩棚。


何かが動いた。


「……いた」


銃身。


わずかに見えた人影。


イリヤ・ヴォルコフ。


《SILENT》


デイビッドは距離を確認した。


かなり遠い。


しかも間には巨大な峡谷。


普通なら、一度下へ降りて対岸を登らなければならない。


デイビッドは立ち上がった。


「行くか」


通信。


エマ。


『見つけたの?』


「ああ」


『どこ?』


「対岸」


『どうやって行くつもり?』


デイビッドは崖の縁へ歩いた。


「跳ぶ」


『……何?』


通信を切った。


*


世界中継。


画面が切り替わる。


《DAVID WALKER》


実況者。


「ウォーカー選手が高所に出ました!」


解説者。


「狙撃手を探していたようですね」


「スコープを下ろしました。移動するのでしょうか?」


デイビッドが走り出す。


崖へ。


「……え?」


実況者が画面を見る。


「そちらに道はありませんが?」


デイビッド。


加速。


崖の縁。


そして。


跳んだ。


「ええええっ!?」


観客席から悲鳴が上がる。


巨大な峡谷。


谷底は遥か下。


デイビッドの身体が宙へ飛び出した。


対岸までは届かない。


当然だ。


だが。


デイビッドは空中で身体をひねった。


進行方向とは反対へ銃口を向ける。


ダダダダダダダッ!!


連射。


銃の反動。


身体の軌道がわずかに変わる。


そのわずかな差で。


対岸の岩壁へ。


足が届いた。


ガッ!


岩壁を蹴る。


次の岩棚へ。


着地。


二歩。


そして。


また跳んだ。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


実況者が叫ぶ。


「今、何をしたんですか!?」


解説者。


「銃の反動を利用しましたね」


「そんなことできるんですか!?」


「このゲームの物理演算上は可能です」


「では普通の選手でも?」


「理論上は」


解説者が続ける。


「ただし、失敗すれば谷底へ落下します」


画面。


デイビッド。


また崖を蹴る。


銃を連射。


別の岩棚へ。


「普通は恐怖で身体が動きません」


「ウォーカー選手は!?」


「動いていますね」


「それは見れば分かります!」


観客席から笑いが起こった。


だが。


解説者は真剣だった。


「以前の日本戦でも、神崎レン選手とウォーカー選手のダイブ適性は話題になりました」


「はい」


「彼らは、私たちが崖だと思う場所を――」


画面。


デイビッドが次の岩棚へ着地する。


「移動経路として使えるんです」


*


ロシア側。


ニキータ。


《PING》


「……ん?」


表示を見直す。


五つの点。


四つは東側。


残る一つ。


「ウォーカーが移動してる」


エカテリーナ。


《TRACE》


「西側の高所にいたはず」


「そうなんだけど」


ニキータが表示を拡大する。


「今、対岸にいる」


エカテリーナ。


「……どうやって?」


「分からない」


通信。


『イリヤ、注意しろ』


イリヤ。


『何だ』


「ウォーカーがそっちへ向かってる」


『距離は?』


ニキータが答える。


イリヤはスコープを動かした。


西側高所。


いない。


谷底。


いない。


対岸。


岩棚。


一瞬。


人影。


「……見つけた」


デイビッド。


また跳んだ。


イリヤ。


「何だ、あれは」


照準を合わせる。


だが、デイビッドは岩棚へ着地すると、すぐに姿を消した。


次の瞬間。


さらに近い場所に現れる。


イリヤ。


「速い」


ニキータ。


『スキルか?』


「違う」


『じゃあ何だ?』


イリヤは答えなかった。


スコープの中。


デイビッドが崖から跳ぶ。


銃を反対方向へ連射。


岩壁を蹴る。


「……移動している」


『どこを?』


「崖を」


*


デイビッド。


岩棚。


着地。


残弾確認。


「結構使うな」


弾倉を交換する。


通信。


ルーク。


『デイビッド!』


「何?」


『こっちもう限界近いぞ!』


「あと少し」


『何してるんだよ!』


デイビッドは上を見た。


イリヤのいる高台。


もう近い。


「一人目」


銃を構える。


走る。


最後の岩壁。


跳ぶ。


身体をひねる。


ダダダダッ!


反動。


岩棚。


着地。


そして。


そこからさらに高い岩へ登った。


*


イリヤ。


スコープ。


デイビッドを見失った。


「消えた」


ニキータ。


『位置は近い!』


「分かっている」


イリヤは銃を持ち直した。


近距離戦用の武器へ切り替える。


背後。


岩壁。


正面。


細い道。


右。


崖。


左。


岩。


来るなら正面。


そう判断した。


だが。


頭上。


小石が落ちた。


カラッ。


イリヤ。


「――!」


見上げる。


影。


デイビッドが。


真上から。


落ちてきた。


ドンッ!!


目の前。


着地。


イリヤは銃を向ける。


デイビッド。


「よう」


発砲。


イリヤも撃つ。


二人。


至近距離。


岩棚の上で撃ち合う。


《DAVID HP 49%》


《ILYA HP 64%》


イリヤが後ろへ跳ぶ。


「ウォーカー!」


デイビッド。


「当たり」


イリヤ。


《SILENT》


無音の発砲。


デイビッドが横へ。


弾丸。


岩へ。


デイビッドも撃つ。


《ILYA HP 37%》


イリヤが岩陰へ飛び込む。


「近づけば勝てると思ったか!」


デイビッド。


「いや」


岩を回る。


「見つければ勝てると思った」


イリヤが飛び出す。


銃口。


デイビッドへ。


その瞬間。


《ZERO:TARGET》


《ILYA VOLKOV》


《SILENT DISABLED》


イリヤの表示が変わる。


「……!」


デイビッド。


「今度は音がするぞ」


イリヤ。


発砲。


パンッ!


デイビッドが身体をひねる。


弾丸。


肩をかすめる。


《DAVID HP 43%》


デイビッドも撃つ。


《ILYA HP 18%》


イリヤ。


後退。


足元。


崖の縁。


それでも銃を構える。


「まだ――!」


デイビッドが踏み込んだ。


二発。


パンッ! パンッ!


《ILYA HP 0%》


イリヤの身体が光になる。


《RUSSIA》


《4 PLAYERS》


デイビッド。


銃を下ろす。


「一人目」


*


ロシア側。


ニキータ。


「イリヤが落ちた!」


アリーナ。


『嘘でしょ!?』


ミハイル。


『ウォーカーか』


「そうだ!」


エカテリーナ。


《TRACE》


デイビッドの移動痕跡を確認する。


高所。


岩棚。


岩壁。


何度も途切れている。


「……これ」


ニキータ。


「何?」


「普通の移動じゃない」


アリーナ。


『見れば分かる!』


エカテリーナ。


「地面を通ってない」


沈黙。


ミハイルがスコープを動かす。


遠く。


イリヤのいた高台。


デイビッドが立っていた。


ミハイル。


「見つけた」


照準。


デイビッド。


だが。


デイビッドはもう走り出していた。


崖へ。


ミハイル。


「……またか」


デイビッド。


跳ぶ。


銃声。


連射。


反動。


岩壁。


蹴る。


次の崖へ。


ミハイルはスコープを追わせる。


「なるほど」


通信。


ニキータ。


『撃てるか!?』


ミハイル。


「まだ」


『なぜ!?』


「動きが読めない」


アリーナ。


『だったら私が撃つ!』


ミハイル。


「待て」


『何よ!』


「次は同じようには来ない」


スコープ。


デイビッドが岩棚に消える。


ミハイル。


「一人目は奇襲だった」


ニキータ。


『なら二人目は?』


ミハイル。


銃を構え直す。


「狩りに来る」


*


アメリカ側。


マーカス。


《HP 24%》


ルーク。


《HP 31%》


エマ。


《HP 39%》


オリヴィア。


《HP 27%》


四人。


岩陰。


息を整える。


ルーク。


「……一人倒したって?」


エマ。


「イリヤ・ヴォルコフ。脱落確認」


マーカス。


「やるじゃねえか」


オリヴィア。


「あと二人」


ルーク。


「二人もいるのかよ……」


通信。


デイビッド。


『聞こえるか?』


マーカス。


「聞こえる」


『一人目、終わった』


ルーク。


「見てたよ!」


『じゃあ次』


オリヴィア。


「待って」


『何?』


「私たちのHP、見てる?」


デイビッド。


少し黙る。


『見てる』


「なら急いで」


『ああ』


通信。


切れる。


四人。


顔を見合わせる。


ルーク。


「……本当に三人全部やるつもりだな」


マーカス。


「最初からそう言ってただろ」


ルーク。


「普通は冗談だと思うだろ!」


遠く。


銃声。


四人が岩陰へ伏せる。


まだ。


二人。


狙撃手が残っている。


*


デイビッド。


別の高台。


スコープ。


探す。


遠く。


中腹の岩棚。


人影。


アリーナ。


《CURVE》


デイビッドは笑った。


「二人目」


スコープを下ろす。


崖の縁へ。


だが。


そのとき。


アリーナも。


デイビッドを見ていた。


「来なさいよ」


銃を構える。


「今度は、飛んでるところを撃ってあげる」


デイビッド。


助走。


そして。


再び。


峡谷へ飛び出した。


――第3話 終

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