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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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第28話 第4部 アメリカ VS ロシア 第4話 狙う者、狙われる者

ネットスキル大戦


第4部 アメリカ VS ロシア


第4話 狙う者、狙われる者


「来なさいよ。今度は、飛んでるところを撃ってあげる」


アリーナ・モロゾワは、スコープの向こうにデイビッド・ウォーカーを捉えていた。


赤い岩壁。


深い谷。


その間を、一人の男が跳んでいる。


常識では考えられない移動方法だった。


だが、すでに一人の狙撃手が倒されている。


もう驚いている場合ではない。


「ニキータ。ウォーカーを捕捉した」


『こちらでも確認している! アリーナ、接近させるな!』


「分かってる!」


アリーナは照準を合わせた。


デイビッドが岩棚を蹴る。


跳躍。


その身体が谷の上へ飛び出した。


「そこ!」


パンッ!


《CURVE》


発射された弾丸が、空中でわずかに軌道を変えた。


デイビッドが身体をひねる。


弾丸は肩をかすめた。


《DAVID HP 39%》


「……なるほど」


デイビッドは岩壁を蹴り、下の岩棚へ着地した。


「今度はちゃんと狙ってくるか」


アリーナはすぐに次弾を装填する。


「当たり前でしょ!」


再び発砲。


パンッ!


今度はデイビッドが跳ばなかった。


岩陰へ身体を引っ込める。


弾丸が岩を砕いた。


「……あれ?」


アリーナがスコープを動かす。


姿が見えない。


「ニキータ、位置は?」


『岩棚の裏だ! まだそこにいる!』


「分かってる。出てきたら撃つ」


アリーナは照準を固定した。


デイビッドが動けば、すぐに撃てる。


問題はなかった。


少なくとも、そう思っていた。


⸻


「マーカス! 右の高台!」


エマの声が響いた。


「見えてる!」


マーカスが岩陰から銃を出す。


パンッ! パンッ!


高台の上で、アリーナが顔を引っ込めた。


「っ!?」


弾丸がすぐ横の岩を削った。


「誰よ!」


『アメリカの残り四人だ!』


ニキータが叫ぶ。


「そんなこと分かってる!」


アリーナがスコープを向け直す。


遠くの岩場。


アメリカの四人が散開していた。


その一人、マーカスが再び発砲する。


パンッ!


アリーナは伏せた。


「……邪魔!」


別の場所から銃声。


パンッ!


《ALINA HP 91%》


「痛っ!」


今度はオリヴィアだった。


「命中」


《LOCK》で照準の揺れを抑え、岩陰から一瞬だけ姿を見せたアリーナを撃ち抜いた。


「ルーク、次!」


「はいはい! こっちも仕事してますよ!」


ルークが《DASH》で岩場を移動する。


走りながら発砲。


命中はしなかった。


だが、アリーナは頭を上げられない。


「くっ……!」


アリーナが通信を開く。


「ミハイル! あの四人を撃って!」


『こちらも撃っている』


落ち着いた声が返ってきた。


『だが、動きが変わった。こちらを探しながら撃ち返してくる』


「……何よ、それ」


『囮ではない。戦闘している』


アリーナは歯を食いしばった。


そうだ。


相手はアメリカ代表。


ただ撃たれるために出てきたわけではない。


そして。


「……ウォーカー!」


慌ててスコープを戻した。


先ほどの岩棚。


誰もいなかった。


⸻


「アリーナがこっちを見た!」


エマが報告する。


「デイビッド、今よ!」


『助かる』


短い返事。


ルークが笑った。


「おいおい、俺たち囮なんだろ? 撃っていいのかよ?」


『撃てるだろ?』


「そりゃ撃てるけど!」


『だったら撃ってくれ』


「言われなくても!」


ルークが銃を構える。


パンッ! パンッ!


その直後。


遠くから別の銃声。


ダンッ!


《LUKE HP 19%》


「うわっ!」


ルークが岩陰へ転がり込んだ。


「いってぇ! ……いや、痛くはないけど!」


『ルーク、動くな!』


エマが叫ぶ。


『ミハイルに見られてる!』


「分かってる!」


マーカスが前へ出る。


《GUARD》


身体の前に防御効果が展開された。


「こっちだ、ロシア!」


パンッ! パンッ!


撃ち返す。


だが、すぐに弾丸が飛んできた。


《MARCUS HP 17%》


「……さすがに厳しくなってきたな」


マーカスは笑った。


しかし、その声には余裕がなかった。


エマが周囲を確認する。


《EMMA HP 39%》


《OLIVIA HP 27%》


《LUKE HP 19%》


《MARCUS HP 17%》


四人とも危険な状態だった。


「デイビッド」


オリヴィアが通信を開く。


「時間がないわ」


『分かってる』


「本当に?」


『ああ』


少し間があった。


『だから、急ぐ』


⸻


アリーナは銃を構え直した。


「ニキータ! ウォーカーは!?」


『移動している!』


「どこへ!?」


『お前の右だ! いや、違う……上だ!』


「上!?」


アリーナが顔を上げた。


赤い岩壁。


その上。


デイビッドが走っていた。


「いつの間に!」


アリーナが発砲する。


パンッ!


《CURVE》


弾丸が曲がる。


だが、デイビッドはすでに跳んでいた。


岩棚から岩棚へ。


アリーナは銃口を追わせる。


「同じことを何度も!」


次の岩棚に着地する場所を予測する。


そこへ照準を合わせた。


パンッ!


デイビッドが着地する。


弾丸が飛ぶ。


しかし。


デイビッドは着地と同時に、横へ走った。


弾丸は背後の岩に命中した。


「……っ!」


アリーナが再び照準を動かす。


デイビッドはもう跳んでいなかった。


岩壁に沿った細い足場を走っている。


「飛ぶだけじゃないの!?」


デイビッドは通信を開いた。


「エマ、アリーナの位置は?」


『見えてる。中段の岩棚。そこから左へ逃げられる』


「了解」


『でも、デイビッド。真正面から行ったら撃たれるわよ』


「そうだな」


デイビッドは走りながら答えた。


「だから、真正面からは行かない」


⸻


アリーナは焦っていた。


相手が跳んでいる間なら、着地点を狙える。


だが、岩壁を走り、突然跳び、また走る。


移動の仕方が一定ではない。


それでも。


「……見えた!」


デイビッドが岩棚の端に出た。


アリーナは照準を合わせる。


今度こそ逃がさない。


その瞬間。


パンッ!


《ALINA HP 83%》


「また!?」


オリヴィアの射撃だった。


アリーナが反射的に身を伏せる。


そして気づいた。


自分は今、デイビッドから目を離した。


「……しまった!」


顔を上げる。


目の前の岩棚。


デイビッドがいた。


距離はわずか十数メートル。


「こんにちは」


「……っ!」


アリーナが銃を向ける。


デイビッドも銃を構えた。


パンッ!


パンッ!


ほぼ同時の発砲。


《DAVID HP 27%》


《ALINA HP 61%》


「まだよ!」


アリーナは後ろへ跳び、次弾を装填する。


デイビッドが岩陰へ入った。


アリーナは笑った。


「隠れても無駄!」


《CURVE》


岩の端を回り込むように、弾丸の軌道を曲げる。


パンッ!


弾丸が岩陰へ飛び込んだ。


《DAVID HP 18%》


「……っ」


デイビッドのHPが減る。


アリーナはすぐに銃を構え直した。


「どう!? これが私のスキル!」


デイビッドは岩陰から動かなかった。


「厄介だな」


「でしょ!」


「でも」


デイビッドが顔を出した。


その視線が、アリーナを捉える。


「見えた」


《ZERO:TARGET》


アリーナの視界に警告が表示された。


《SKILL DISABLED》


「……え?」


アリーナが目を見開く。


「何、それ……!」


「新しいZEROだ」


デイビッドが岩陰から出る。


アリーナは銃を構えた。


「スキルがなくても!」


パンッ!


弾丸はまっすぐ飛んだ。


デイビッドが身体を横へずらす。


肩をかすめる。


《DAVID HP 15%》


デイビッドも発砲した。


パンッ!


《ALINA HP 38%》


「くっ!」


アリーナは後退する。


岩棚の端が近づく。


もう逃げ場は少ない。


それでも銃を下ろさなかった。


「私は狙撃手よ!」


アリーナが照準を合わせる。


「スキルがなくたって、当てられる!」


パンッ!


デイビッドが身を伏せる。


弾丸が頭上を通過した。


そして。


デイビッドはそのまま前へ滑り込んだ。


アリーナの足元。


「なっ!?」


銃口を下げるより早く。


デイビッドが撃った。


パンッ!


《ALINA HP 12%》


アリーナはよろめく。


それでも引き金を引こうとした。


だが。


デイビッドの銃口が、すでに向けられていた。


「……やるじゃない」


アリーナが笑った。


「あなた、本当に変な戦い方するわね」


「よく言われる」


パンッ!


《ALINA HP 0%》


《ALINA MOROZOVA ELIMINATED》


アリーナの身体が光になって消えた。


デイビッドは銃を下ろした。


《DAVID HP 15%》


「……二人目」


⸻


ロシア側。


「アリーナがやられた!?」


ニキータが叫んだ。


エカテリーナは画面を確認する。


「残る狙撃手はミハイルだけ」


『聞こえている』


ミハイルの声は落ち着いていた。


『ウォーカーのHPは?』


「15%!」


『そうか』


ミハイルはスコープを覗いた。


遠くの岩棚。


デイビッドが見える。


「……よく二人も倒したな」


ミハイルは静かに言った。


「だが、三人目はそう簡単にはいかない」


《ZOOM》


視界が鮮明になる。


デイビッドの動き。


足の運び。


銃を持つ手。


すべてが見えた。


ミハイルは引き金に指をかける。


「次は私の番だ」


⸻


一方、アメリカ側。


「二人目を倒したって!?」


ルークが叫んだ。


「やったじゃん!」


「喜ぶのはまだ早い!」


オリヴィアが銃を構える。


パンッ!


ロシア側の岩陰へ発砲。


「まだ三人いる!」


エマが報告する。


「狙撃手が一人、索敵役が二人!」


マーカスは岩に背中を預けた。


《MARCUS HP 17%》


「……あと少しか」


そのとき。


エマの《SCAN》が、遠くの岩場に動きを捉えた。


「……いた!」


「誰だ!?」


「索敵役!」


エマが銃を向ける。


パンッ!


《NIKITA HP 82%》


「うわっ!?」


ニキータが岩陰へ転がり込んだ。


『敵の位置、割れてるぞ!』


エカテリーナが叫ぶ。


『下がって!』


だが、アメリカ側も無傷ではなかった。


ダンッ!


《EMMA HP 26%》


「っ!」


ミハイルの狙撃。


エマが岩陰へ倒れ込む。


ルークが叫ぶ。


「エマ!」


「大丈夫! まだ生きてる!」


オリヴィアが通信を開いた。


「デイビッド!」


『聞こえてる』


「こっちも限界よ!」


『……ああ』


デイビッドは岩棚の上から、遠くの高台を見た。


そこに最後の狙撃手がいる。


ミハイル・ソコロフ。


ロシア代表、最年長の狙撃手。


デイビッドは息を吐いた。


「三人目」


銃を構え直す。


そして、崖の端へ歩き出した。


その姿を、ミハイルはスコープ越しに見ていた。


「また跳ぶつもりか」


ミハイルは照準を合わせる。


「なら、跳ぶ前に撃つ」


デイビッドが走り出した。


ミハイルの指が動く。


ダンッ!!


銃声が峡谷に響いた。


――第4話 終

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