第25話 第4部 アメリカVSロシア 第1話 三人の狙撃手
『ネットスキル大戦』
第4部 アメリカVSロシア
第1話 三人の狙撃手
《INTERNATIONAL PROXY WAR》
《UNITED STATES OF AMERICA》
《VS》
《RUSSIA》
世界中の端末に。
新しい代理戦争が告知された。
今回。
二国が争う権益。
《北極海国際航路》
《国際貨物・優先輸送枠》
期間。
十年間。
北極海を通る国際貨物船。
その一部に与えられる。
優先航行。
優先入港。
優先荷役。
物流量にすれば。
莫大。
その権益を。
アメリカとロシアは。
戦争ではなく。
五人対五人のゲームで決める。
そして。
選ばれたマップ。
《MAP》
《GRAND VALLEY》
北極海とは。
まったく関係なかった。
*
巨大な峡谷。
赤茶色の岩。
何層にも重なる断崖。
谷底。
中腹の岩棚。
細い登山道。
天然の岩橋。
そして。
遥か彼方まで見渡せる。
高台。
グランドキャニオンをモデルに作られた。
巨大マップ。
遮蔽物はある。
だが。
森林のように。
視界を完全には隠してくれない。
高い場所へ行けば。
遠くまで見える。
逆に。
遠くからも見られる。
公開されたマップを見て。
世界中のプレイヤーが。
同じことを考えた。
――狙撃。
そして。
ロシア代表が発表された。
*
《RUSSIA NATIONAL TEAM》
《ILYA VOLKOV》
《SKILL:SILENT》
《ALINA MOROZOVA》
《SKILL:CURVE》
《MIKHAIL SOKOLOV》
《SKILL:ZOOM》
《NIKITA ORLOV》
《SKILL:PING》
《EKATERINA BELOVA》
《SKILL:TRACE》
五人。
そのうち。
三人。
使用武器。
長距離狙撃銃。
*
スポーツ番組。
大型モニター。
司会者が。
代表一覧を見る。
「三人?」
解説者。
「三人ですね」
「間違いではなく?」
「公式発表です」
画面。
イリヤ。
アリーナ。
ミハイル。
三人の顔写真。
「ロシアは代表五人のうち、三人を狙撃手で固めました」
「かなり偏った編成では?」
「偏っています」
即答。
「ただし」
画面。
残る二人。
ニキータ。
エカテリーナ。
「この二人がいます」
《PING》
《TRACE》
「索敵系?」
「はい」
解説者が。
ニキータを指す。
「《PING》は発動した瞬間、一定範囲内にいる敵の位置を短時間表示する」
次。
エカテリーナ。
「《TRACE》は敵が移動した痕跡を一定時間視認できる」
司会者。
「つまり」
少し考える。
「二人が探して」
「三人が撃つ」
解説者。
「非常に分かりやすい編成です」
司会者。
「嫌ですね」
「非常に」
*
アメリカ代表施設。
壁面モニター。
ロシア代表。
五人。
デイビッド・ウォーカーは。
黙って見ていた。
隣。
ルーク・ハリス。
「スナイパー三人って」
椅子にもたれる。
「やりすぎだろ」
マーカス・リード。
「マップ見て決めたんだろ」
「分かってるよ」
ルーク。
画面を見る。
「だから嫌なんだよ」
エマ・カーター。
「問題は三人じゃない」
ルーク。
「じゃあ?」
エマが。
ニキータとエカテリーナを指す。
「こっち」
オリヴィア・ブルックス。
「同感」
デイビッド。
まだ黙っている。
マーカス。
「どう見る?」
デイビッド。
「普通」
四人。
見る。
ルーク。
「どこが?」
「二人で探して三人で撃つ」
「それが嫌なんだって」
「だったら」
デイビッドが立つ。
「探される前に見つければいい」
ルーク。
「簡単に言うなあ」
デイビッド。
「簡単だろ」
「スナイパー三人だぞ?」
「三人しかいない」
ルーク。
黙る。
オリヴィア。
「その考え方、相変わらずね」
*
画面。
今度は。
アメリカ代表。
《USA NATIONAL TEAM》
《DAVID WALKER》
《SKILL:ZERO》
《MARCUS REED》
《SKILL:GUARD》
《EMMA CARTER》
《SKILL:SCAN》
《LUKE HARRIS》
《SKILL:DASH》
《OLIVIA BROOKS》
《SKILL:LOCK》
デイビッド。
《ZERO》
かつて。
一定範囲内のスキルを。
敵味方関係なく無効化した。
強力。
その代わり。
味方まで巻き込む。
使う場所を選ぶスキルだった。
だが。
現在。
表示。
《ZERO》
それだけ。
詳細。
非公開。
ルークが見る。
「まだ公開しないの?」
デイビッド。
「する理由ある?」
「賭けてる連中が困る」
「知らない」
マーカス。
「オッズ動くぞ」
「もっと知らない」
エマ。
「ロシアは当然、旧ZEROを前提に対策してる」
「だろうな」
「なら?」
デイビッド。
少しだけ笑った。
「その方がいい」
*
ロシア代表施設。
アリーナ・モロゾワ。
画面のデイビッドを見る。
「ZERO」
ミハイル。
「旧仕様なら、近づかれなければ問題ない」
ニキータ。
「新仕様だったら?」
「撃てばいい」
アリーナが笑う。
「それ好き」
エカテリーナ。
「ウォーカーは近距離も強い」
アリーナ。
「知ってる」
「高所からの移動も多い」
「知ってる」
「過去試合、全部見た?」
「三回」
ニキータ。
「好きなの?」
アリーナが。
睨む。
「倒したいだけ」
イリヤ。
それまで。
一言も喋っていなかった。
「来る」
四人。
見る。
イリヤ。
「ウォーカーは待たない」
ミハイル。
頷く。
「だろうな」
ニキータ。
「なら探す」
エカテリーナ。
「追う」
三人の狙撃手。
銃を見る。
イリヤ。
「撃つ」
*
試合当日。
巨大モニター。
《USA VS RUSSIA》
《STAKE》
《ARCTIC INTERNATIONAL SHIPPING ROUTE》
《PRIORITY CARGO ACCESS》
《10 YEARS》
数字。
オッズ。
アメリカ。
わずかに優勢。
だが。
差は小さい。
画面の前。
男が端末を操作する。
「アメリカ」
隣。
「デイビッド?」
「ZERO変わったらしいぞ」
「詳細出てないだろ」
「だから賭ける」
別の男。
「俺ロシア」
「なんで?」
「スナイパー三人」
「それだけ?」
「ゲームで高いところにスナイパー三人いたら嫌だろ」
「……嫌だな」
「だろ?」
確定。
賭け金。
数字が動く。
*
ダイブ。
暗転。
そして。
デイビッドが。
目を開けた。
風。
乾いた大地。
巨大な峡谷。
空。
広い。
目の前。
崖。
遥か下。
谷底。
対岸。
岩壁。
上。
さらに高い岩山。
デイビッドは。
最初に。
上を見た。
ルーク。
「何?」
「高い場所」
「開始前から?」
「三人いるんだろ」
デイビッドが。
スコープを確認する。
「なら探す」
マーカス。
「まず合流しないか?」
「する」
オリヴィア。
「珍しくまとも」
「そのあと登る」
「やっぱり」
エマ。
《SCAN》
まだ使わない。
五人。
装備確認。
表示。
《USA》
《5 PLAYERS》
《RUSSIA》
《5 PLAYERS》
カウント。
《3》
《2》
《1》
《START》
*
ロシア。
開始と同時。
散った。
イリヤ。
高所。
アリーナ。
中腹。
ミハイル。
さらに遠く。
別の岩山。
三方向。
ニキータ。
岩陰。
《PING》
一瞬。
マップ上。
点。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
「見つけた」
エカテリーナ。
地面。
《TRACE》
まだ。
痕跡はない。
「動けば追う」
ニキータ。
通信。
「西側。五人まとまってる」
イリヤ。
『了解』
アリーナ。
『見えない』
ミハイル。
『待て』
数秒。
ミハイル。
《ZOOM》
遥か遠く。
岩。
砂。
人影。
五人。
「見えた」
ニキータ。
「距離?」
ミハイル。
答える。
アリーナ。
位置を変える。
イリヤ。
伏せる。
三本の銃口が。
別々の場所から。
同じ方向を向いた。
*
アメリカ。
デイビッド。
先頭。
エマ。
「止まって」
全員。
止まる。
《SCAN》
スコープ。
右。
岩棚。
何もない。
左。
高台。
何もない。
対岸。
何も。
「見つからない」
ルーク。
「三人とも?」
「一人も」
マーカス。
「向こうも探してるんじゃないか?」
デイビッド。
「いや」
歩き出す。
「もう見つかってるかもな」
その瞬間。
マーカス。
《HP 81%》
「っ!?」
全員。
伏せる。
ルーク。
「どこ!?」
銃声は。
聞こえなかった。
静か。
風だけ。
マーカス。
自分のHPを見る。
「撃たれた」
オリヴィア。
「それは分かる!」
エマ。
スコープ。
探す。
「方向は!?」
マーカス。
「分からない!」
デイビッド。
岩陰。
目だけ。
動く。
無音。
《SILENT》
「イリヤだ」
ルーク。
「どこ!?」
「知らない」
次。
銃声。
今度は。
聞こえた。
乾いた音。
エマ。
《HP 76%》
「っ!」
反対側。
岩陰へ。
オリヴィア。
「別方向!」
デイビッド。
「二人」
そして。
三発目。
遠い。
大きな銃声。
ルーク。
《HP 84%》
「三人目!」
三方向。
全員。
違う場所。
アメリカ。
岩陰。
動けない。
デイビッドは。
ゆっくり。
スコープを上げた。
高台。
岩棚。
対岸。
探す。
何も。
見つからない。
その間にも。
ニキータ。
《PING》
「まだ同じ場所」
エカテリーナ。
《TRACE》
「一人、右へ動く」
アリーナ。
『見えた』
発砲。
弾丸。
岩。
その横へ。
わずかに。
曲がる。
オリヴィア。
《HP 79%》
「……曲がった」
デイビッド。
スコープを下ろす。
開始。
わずか。
数十秒。
アメリカ。
五人全員。
岩陰。
ロシア。
五人。
誰も。
ダメージを受けていない。
ルーク。
「デイビッド」
「何?」
「簡単なんだろ?」
デイビッドは。
もう一度。
高い場所を見た。
「訂正する」
「何を?」
「ちょっと面倒だ」
その遥か上。
スコープ越し。
ミハイルが。
デイビッドを捉えていた。
「ウォーカー」
照準。
胸。
指。
引き金へ。
デイビッドは。
まだ。
気づいていなかった。




