第23話 二発
『ネットスキル大戦』
第3部 日本VSオーストラリア
第6話 二発
《JAPAN 3》
《AUSTRALIA 1》
残ったのは。
日本。
神崎レン。
相沢ハル。
立花アヤ。
オーストラリア。
ノア・ベネット。
四人。
風が吹く。
砂が流れる。
誰も撃たない。
田所と三枝を落とした二発。
《DOUBLE》
レンはノアを見た。
「一度に二人もいけるんだな」
ノア。
「二発だからな」
「もっと早くやればよかったのに」
「二人並んでくれなかった」
「なるほど」
アヤ。
「普通に会話してる場合?」
「考えてる」
「何を?」
レンは答えない。
ノアの銃。
一度に二発。
狙う場所を先に決められる。
一発目を避けても。
二発目が来る。
ハルの《SPEED》にも当てた。
自分の0.5秒先読みでも。
二つ同時に考えなければならない。
でも。
弱点も。
単純だった。
二発。
それだけだ。
「アヤ」
「何?」
「右から行って」
「ハルは?」
「左」
ハル。
「レンさんは?」
レン。
「正面」
アヤが笑った。
「一番危ないじゃん」
「だね」
三人。
散った。
*
ノアが見る。
右。
アヤ。
左。
ハル。
正面。
レン。
三方向。
「そう来るか」
アヤが撃つ。
ノア。
岩陰。
弾丸が岩を削る。
ハル。
《SPEED》
一瞬で距離を詰める。
ノアが銃を向ける。
ハル。
止まる。
「……」
ノア。
撃たない。
ハルも。
動かない。
レンが歩く。
少しずつ。
前へ。
ノアの視線。
レン。
ハル。
アヤ。
「誰を撃つ?」
レン。
ノアは答えない。
アヤ。
横から発砲。
ノアが身を伏せる。
《NOAH HP 51%》
「入った!」
ハル。
《SPEED》
ノアへ。
ノアが銃を上げる。
一つ。
照準。
ハル。
ハルの目が開く。
「来る!」
急停止。
ノア。
撃たない。
「え?」
ノアが笑う。
「速いだけじゃないんだろ?」
ハル。
「……」
撃つと思わせた。
ハルを止めた。
レン。
「こいつ上手いな」
アヤ。
「感心してる場合じゃない!」
また撃つ。
ノア。
岩の反対側へ。
その瞬間。
普通の一発。
アヤ。
「っ!」
《TACHIBANA HP 31%》
ノア。
もう一発。
アヤ。
岩へ。
《HP 17%》
レン。
「アヤ、下がれ!」
「まだ!」
アヤが顔を出す。
ノアも。
同時。
二人。
発砲。
《NOAH HP 38%》
《TACHIBANA HP 0%》
アヤ。
身体が光る。
「あと任せた!」
消える。
表示。
《JAPAN 2》
《AUSTRALIA 1》
レン。
ハル。
ノア。
二対一。
*
ハルが。
ノアを見る。
「行きます」
レン。
「待て」
「でも二人です」
「だから待て」
ハルが止まる。
レンはノアのHPを見る。
38%。
自分。
32%。
ハル。
51%。
数字なら。
有利。
でも。
田所と三枝も。
一瞬だった。
レン。
「ハル」
「はい」
「ノアの二発目、覚えてる?」
ハルが頷く。
「僕が避けた先に撃ったやつ」
「そう」
「次は避けます」
「違う」
ハル。
レンを見る。
「避けなくていい」
「え?」
レンはノアから目を離さない。
「お前には撃たせない」
ハル。
「じゃあ誰に?」
レン。
笑う。
「俺」
*
ノアは。
二人の会話までは聞こえない。
だが。
何かを決めた。
それだけは分かった。
レン。
正面。
歩いてくる。
ハル。
動かない。
ノアが銃を構える。
レン。
止まらない。
一歩。
また一歩。
ノア。
「何する気だ?」
レン。
「さあ」
「未来が見えるんだろ」
「0.5秒だけね」
「なら撃っても避ける」
「たぶん」
「……」
レン。
さらに一歩。
ノア。
照準。
一つ。
レン。
レンの視界。
変わる。
0.5秒後。
弾丸。
自分の右。
レン。
左へ。
まだ撃たれない。
未来。
消える。
また。
0.5秒。
今度は。
左。
レン。
右へ。
ノア。
「……先に避けてるのか」
レン。
「どうだろ」
ノアが照準を外す。
レン。
止まる。
ノアも。
撃たない。
ハルが少しずつ横へ。
ノアの視線が。
一瞬。
ハルへ。
レン。
発砲。
《NOAH HP 26%》
ノア。
「っ!」
レン。
「よそ見」
ノアがレンへ撃つ。
普通の一発。
0.5秒。
レン。
避ける。
ノア。
もう一発。
レン。
また避ける。
距離。
縮まる。
ノアの顔から。
笑みが消える。
「面倒だな、そのスキル」
レン。
「俺もそう思う」
「なら」
ノアの表示。
変わる。
《DOUBLE》
レンの表情も。
変わった。
「来た」
*
一つ目。
照準。
レン。
二つ目。
ノアは。
まだ決めない。
レンには。
0.5秒後が見える。
一発目。
自分。
避ける。
その先。
まだ。
二発目がない。
「……」
ノアも分かっている。
レンが未来を見る。
なら。
避けた先へ。
二発目を置けばいい。
レンが右へ行くなら。
右。
左なら。
左。
ノア。
「避けてみろ」
レン。
「嫌な撃ち方するな」
一発目。
設定。
レン。
0.5秒。
見る。
弾丸。
胸。
右へ。
その未来が見えた瞬間。
レンは。
左へ踏み出した。
ノア。
見る。
左。
二発目。
設定。
《DOUBLE》
レン。
「そこか」
銃声。
一発目。
レンは左へ。
避ける。
そして。
二発目。
左。
レンには。
見えていた。
0.5秒前から。
胸。
ど真ん中。
避ければ。
間に合うかもしれない。
レンは。
避けなかった。
ハル。
「レンさん!」
着弾。
《KANZAKI REN》
《HP 0%》
レンの身体が。
後ろへ。
倒れる。
ノア。
「……?」
違和感。
避けなかった。
なぜ。
レン。
身体が光り始める。
その顔は。
笑っていた。
「二発」
ノアの目が開く。
レン。
「使ったな」
消える。
*
ノアが。
振り向く。
遅い。
《SPEED》
砂。
爆発。
ハル。
消える。
ノア。
銃を向ける。
《DOUBLE》
使った直後。
まだ。
使えない。
普通に撃つ。
一発。
ハル。
横。
外れる。
もう一発。
ハル。
さらに横。
距離。
一気に。
ゼロへ。
ノア。
「速――」
ハル。
目の前。
銃口。
ノアの胸。
発砲。
《NOAH HP 14%》
ノアが撃ち返す。
ハル。
身体をずらす。
《HARU HP 39%》
ハル。
もう一発。
ノア。
横へ。
砂。
ノアが転がる。
ハル。
追う。
《SPEED》
ノア。
「またか!」
立つ。
銃口。
ハル。
右。
ノアも右。
ハル。
左。
ノア。
追う。
速い。
それでも。
ノアは。
ハルが向かう場所を読む。
銃口。
先。
ハルが来る。
「捕まえた!」
発砲。
だが。
ハルは。
来なかった。
ノア。
「?」
途中で。
止まっている。
ハル。
息を吐く。
「速いだけじゃ」
ノアの顔が変わる。
ハル。
「ダメなんですよね」
方向。
変える。
普通に。
走る。
ノアが銃を向け直す。
一瞬。
遅れた。
ハル。
発砲。
《NOAH BENNETT》
《HP 0%》
ノア。
止まる。
表示を見る。
0%。
ハルを見る。
「……学習したな」
ハル。
「一回やられたので」
ノア。
小さく笑う。
光。
消える。
静寂。
砂。
風。
そして。
空中に。
巨大な表示。
《AUSTRALIA》
《ALL PLAYERS DOWN》
数秒。
ハルは。
それを見上げていた。
表示。
切り替わる。
《WINNER》
《JAPAN》
「……」
ハル。
一人。
砂漠に立つ。
《AIZAWA HARU》
《HP 39%》
通信は。
もう誰もいない。
それでも。
ハルは小さく言った。
「勝ちましたよ」
*
現実。
ダイブ装置。
レンが。
目を開けた。
身体を起こす。
隣。
田所。
「お前さ」
「何?」
「自分から食らっただろ」
レン。
「うん」
アヤ。
「見えてたのに?」
「見えてた」
三枝。
「避けられた?」
レンは少し考える。
「たぶん」
田所。
「じゃあ避けろよ!」
レン。
「でも避けたら、ノアに《DOUBLE》残るじゃん」
三人。
黙る。
レンは。
隣の装置を見る。
まだ。
ハルは戻っていない。
「二発しかないなら」
レン。
笑う。
「二発とも俺に撃たせればいい」
装置。
開く。
ハルが。
身体を起こした。
全員が見る。
ハル。
「……宿題やらなくていいですか?」
レン。
「やれ」
「勝ったのに?」
「関係ないだろ」
田所が笑う。
アヤも。
三枝も。
そして。
ハルも笑った。
壁面モニター。
《RESULT》
《JAPAN WIN》
その下。
《FINAL SURVIVOR》
《AIZAWA HARU / AGE 12》
国家代理戦争。
日本。
二勝目。
十二歳の初陣は。
勝利で終わった。




