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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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第18話 十二歳

『ネットスキル大戦』


第3部 日本VSオーストラリア


第1話 十二歳


「はぁ……はぁ……」


神崎レンは膝に手をついた。


呼吸が荒い。


額から汗が落ちる。


目の前。


仮想訓練場。


壁には無数の弾痕。


床には撃ち尽くされた薬莢が転がっている。


レンは顔を上げた。


「よし」


息を吐く。


「完成っと」


背後。


拍手。


ぱち。


ぱち。


ぱち。


「珍しいな」


レンが振り返る。


田所慎吾が立っていた。


「何が?」


「お前が練習なんて」


「するよ」


「嘘つけ」


「するって」


「前回の代表戦前、俺が誘った時なんて来なかっただろ」


「あれは必要なかったから」


「ムカつくな、お前」


レンは訓練場の表示を見る。


《TRAINING COMPLETE》


「次のマップ見て、必要だと思ったんだよ」


田所も表示を見る。


その横。


次戦の情報。


《INTERNATIONAL PROXY WAR》


《JAPAN VS AUSTRALIA》


そして。


《MAP:DESERT FRONT》


田所。


「砂漠だろ?」


「だからだよ」


「何作った?」


レンは歩き出した。


「新しい派生」


「それは見れば分かる」


「じゃあ聞くなよ」


「どういう能力だ?」


レンは少しだけ振り返る。


「0.5秒」


「何が?」


「先が見える」


田所が止まった。


「……未来?」


「たぶん」


「たぶん?」


「0.5秒後が見える」


田所はしばらく黙った。


「短っ」


「十分だよ」


「何に?」


レンが指を銃の形にする。


田所へ向ける。


「弾避けるなら」


「……なるほど」


レンは指を下ろした。


「遮蔽物少ないからな」


「砂漠だしな」


「撃たれてから戻すより、撃たれる前に分かった方が楽」


「前の《REWIND》は?」


「使えるよ」


「今回どっち?」


「新しい方」


田所が頷く。


一人一派生。


選べるのは一つ。


「実戦で使えるのか?」


「だから練習してたんだよ」


「成功率は?」


レン。


歩く。


「レン?」


「行こうぜ。代表発表だろ」


「成功率は?」


「遅れるぞ」


「おい」


レンは答えなかった。


*


東京。


巨大モニター。


人が集まっていた。


《NEXT INTERNATIONAL PROXY WAR》


その下。


国旗。


日本。


オーストラリア。


《JAPAN》


《VS》


《AUSTRALIA》


さらに。


今回争われる権益。


《国際砂漠太陽光発電区》


《年間電力購入優先枠》


数字が並ぶ。


街頭では。


もうオッズの予想が始まっている。


「日本また出るの?」


「前回勝ってるからな」


「相手オーストラリアだぞ」


「砂漠マップ強そうじゃね?」


「マップと国は関係ないだろ」


「イメージだよ、イメージ」


画面。


切り替わる。


《MAP:DESERT FRONT》


砂。


砂丘。


岩場。


乾いた大地。


その中央を走る。


長い塹壕。


さらに。


マップを大きく裂く巨大な峡谷。


「うわ」


「隠れる場所少なっ」


「スナイパー有利じゃね?」


「塹壕入れば?」


「入るまでに撃たれるだろ」


風。


画面の中。


砂が舞う。


一瞬。


視界が消える。


「……嫌なマップだな」


誰かが言った。


*


日本代表施設。


会議室。


レン。


田所。


橘アヤ。


三枝ユウキ。


四人。


座っている。


レンが周囲を見る。


「ナナは?」


アヤ。


「今回、六位」


「落ちたの?」


「砂漠マップの適性込みで六位」


「厳しいな」


田所。


「お前三位だぞ」


「聞いてない」


「今言った」


レンが嫌そうな顔をする。


三枝が端末を見る。


「一位は?」


誰も答えない。


「二位は?」


アヤも端末を見る。


「それが……」


扉。


開く。


全員。


そちらを見る。


職員が入ってきた。


その後ろ。


誰もいない。


レンが首を傾げる。


「一人足りなくない?」


職員。


「います」


「どこ?」


「ここです」


声。


下。


レンたちが。


視線を下げる。


少年が立っていた。


小さい。


黒い髪。


細い身体。


大きめの代表ジャケット。


袖が少し余っている。


少年は。


ぺこり。


頭を下げた。


「初めまして」


沈黙。


「相沢ハルです」


また。


ぺこり。


「よろしくお願いします」


沈黙。


レンが職員を見る。


少年を見る。


また職員を見る。


「……誰の子?」


「代表です」


「何の?」


「日本代表です」


レン。


少年。


「……何歳?」


少年が答える。


「十二歳です」


田所。


「小学生?」


「六年生です」


アヤ。


「本当に?」


「はい」


三枝は。


端末を見ている。


顔を上げた。


「代表選考……」


数字。


確認。


もう一度見る。


「一位」


レン。


「え?」


ハルがレンを見る。


「神崎さんですよね?」


「そうだけど」


「三位の」


「三位いらないだろ」


「すみません」


全然悪そうではない。


レンが職員を見る。


「いやいや」


「正式な選考結果です」


「十二歳だぞ?」


「はい」


「国の権益かかってるんだけど」


ハル。


「知ってます」


レンが見る。


「怖くないの?」


「怖いです」


即答。


「じゃあなんで出たの?」


「勝てると思ったから」


レン。


黙る。


田所が笑った。


「いいじゃん」


「お前は簡単に言うなよ」


「選考一位だぞ」


「十二歳だぞ」


ハル。


「六年生です」


「そこはどうでもいい」


職員が端末を操作する。


壁。


五人の名前。


《JAPAN REPRESENTATIVES》


神崎レン。


田所慎吾。


橘アヤ。


三枝ユウキ。


相沢ハル。


その横。


基本データ。


そして。


ハルのスキル。


《SPEED》


レンが見る。


「スピード?」


「はい」


「どんなの?」


「速くなります」


「……それだけ?」


「それだけです」


田所。


「どれくらい?」


ハルは少し考える。


「見ます?」


*


仮想訓練場。


五人。


レンは壁にもたれている。


田所。


アヤ。


三枝。


少し離れて。


ハル。


百メートル先。


目標。


田所が言う。


「百メートル走?」


「はい」


「代表選考一位が?」


「はい」


レン。


「普通だな」


ハル。


「じゃあ行きます」


構える。


表示。


《SPEED》


レンが瞬きする。


ハルが。


消えた。


「……え?」


音。


遅れて。


砂埃。


いや。


訓練場だから砂はない。


ただ。


空気だけが揺れる。


百メートル先。


ハル。


立っている。


田所。


口を開けたまま。


アヤ。


「……今の何?」


三枝。


端末を見る。


「速すぎて計測補正入ってる」


レンだけ。


黙っている。


ハルが戻ってくる。


普通に。


歩いて。


「こんな感じです」


レン。


「銃撃は?」


「できます」


「その速度で?」


「はい」


「曲がれる?」


「曲がれます」


「止まれる?」


「止まれます」


「酔わない?」


「酔わないです」


レン。


少し。


嫌な顔。


「何?」


ハルが聞く。


「いや」


「はい」


「十二歳に負けた理由が分かってきた」


田所が笑った。


「三位」


「うるさい」


ハル。


「あ」


レンを見る。


「神崎さん」


「何?」


「新しい派生作ったんですよね?」


レンの顔が止まる。


「なんで知ってる?」


「選考のデータにありました」


「何秒先まで見えるんですか?」


「……0.5秒」


ハル。


「短いですね」


田所が。


吹き出した。


レン。


「お前ら同じこと言うな!」


*


同じ頃。


オーストラリア。


代表施設。


巨大画面。


日本代表の映像。


ハル。


《SPEED》


訓練映像。


一瞬で。


百メートル。


エミリー・カーターが口笛を吹く。


「十二歳?」


リアム・クーパー。


「速っ」


ジャック・モリスは黙っている。


クロエ・ウィルソン。


「これ追える?」


誰も答えない。


最後。


ノア・ベネット。


椅子に座ったまま。


ハルの映像を見る。


何度も。


再生。


一時停止。


再生。


「追う必要ないだろ」


エミリーが見る。


「どういう意味?」


ノアは。


自分の銃を持つ。


照準。


一つ。


その横。


もう一つ。


《DOUBLE》


二つのポイント。


設定。


一つ。


現在位置。


もう一つ。


百メートル先。


「速くても」


ノアが言う。


「行く場所が分かればいい」


ジャックが。


初めて笑った。


画面。


日本代表。


神崎レン。


相沢ハル。


その二人が。


並んで映っている。


《JAPAN VS AUSTRALIA》


《MAP:DESERT FRONT》


開戦まで。


あと三日。


砂漠で。


二つの国が。


戦う。


まだ。


誰も撃っていない。


だが。


もう。


互いを倒す方法だけは。


考え始めていた。


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