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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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15/28

第15話 あと一発

『ネットスキル大戦』


第2部 スペインVSカナダ


第5話 あと一発


《SPAIN 3》


《CANADA 2》


数字だけなら。


スペイン有利。


イネスは銃を構えた。


正面。


エヴァン。


少し後ろ。


ソフィー。


二対一。


「続けようか」


エヴァンが言った。


「もちろん」


イネスは撃った。


同時。


横へ走る。


エヴァンが避ける。


ソフィーが撃つ。


壁。


イネスは角へ飛び込んだ。


「追う?」


ソフィー。


「いや」


エヴァンが答える。


「待つ」


「珍しい」


「スペインは三人」


エヴァンが通路を見る。


「向こうから集まる」


*


テオは動けなかった。


《HP 2%》


二。


表示を何度見ても。


二。


「……これ」


銃を確認する。


残弾。


ある。


身体も動く。


走れる。


撃てる。


だが。


「何食らっても終わりじゃん……」


通信。


『テオ!』


ルシア。


「生きてます!」


『HPは!?』


「聞かない方がいいです!」


『いくつ!?』


「二!」


沈黙。


『……二?』


「だから聞かない方がいいって言ったのに!」


『動かないで!』


「え?」


『今そっち行く!』


「いや、でも――」


『動かない!』


通信が切れた。


テオは一人。


白い整備通路。


座る。


「……動かないって」


少し先。


角。


その向こうに何がいるか分からない。


「それが一番怖いんですけど」


*


イネスが走る。


カルラが消えた場所から離れる。


追ってこない。


おかしい。


エヴァンなら。


追ってくると思った。


いや。


違う。


「待ってる……?」


通信。


「ルシア」


『何?』


「今どこ?」


『テオのところ向かってる』


「そのまま行って」


『イネスは?』


「少し遠い」


『合流しよう』


「うん」


イネスは答えた。


だが。


足を止めた。


正面。


基地内部の案内表示。


左。


居住区画。


右。


外部連絡通路。


その先。


月面。


イネスは考える。


エヴァンとソフィー。


追ってこなかった。


二人で固まっている。


こちらは三人。


普通に集まって。


三対二。


それでいい。


本当に?


テオはHP2%。


実質。


一発。


「……」


イネスが振り返った。


「ルシア」


『なに?』


「テオを連れて外に出て」


『外?』


「月面」


少し間。


『なんで?』


「ここで戦わない」


*


エヴァンが動いた。


「行くぞ」


ソフィーが聞く。


「待つんじゃなかった?」


「時間切れ」


「何の?」


「向こうが気づく時間」


ソフィーは少し笑った。


「嫌な性格」


「よく言われる」


二人。


走る。


スペイン代表の合流地点。


予測はできる。


HPの低いテオ。


そこへルシアが向かう。


イネスも戻る。


なら。


狙うのは。


「テオ?」


「違う」


エヴァン。


「イネス」


「どうして?」


「テオは勝手に死ぬ」


*


月面。


テオが基地から出る。


黒い空。


地球。


灰色の大地。


久しぶりに見る。


そんな気がした。


「外に出ました!」


『見えてる!』


「どこですか?」


『上!』


「上?」


テオが見上げる。


ルシアが。


基地外壁から飛んできた。


「うわっ!」


着地。


砂が舞う。


「いた!」


「普通に来てくださいよ!」


「こっちの方が早い」


ルシアがテオを見る。


《HP 2%》


「……本当に二だ」


「だから言ったでしょ」


「風吹いても死にそう」


「月に風ないですよ!」


「あ、そっか」


「今それやります!?」


ルシアが笑う。


テオも。


少しだけ笑った。


通信。


『二人とも』


イネス。


『聞いて』


ルシアの表情が変わる。


「聞いてる」


『カナダはたぶん私を狙う』


テオ。


「なんで?」


『あなたはHP2%。放っておいても一発で落とせる』


「ひどい」


『事実』


「もっとひどい」


『だから利用する』


テオが黙った。


ルシア。


「どうする?」


『二人は月面を東へ』


「イネスは?」


『あとから行く』


「それ危なくない?」


返事。


少し遅れた。


『危ないよ』


ルシアは笑わなかった。


「それ、カルラなら怒るよ」


『カルラならやる』


「……やるね」


『でしょ?』


通信が切れる。


ルシアが銃を確認した。


テオ。


「俺たちは?」


「言われた通り」


「逃げる?」


「違う」


ルシアが月面の先を見る。


巨大なクレーター。


第2話で。


新派生を初めて見せた場所。


「あそこで待つ」


*


イネス。


一人。


基地内部。


《SCAN》


反応。


二つ。


来る。


「やっぱり」


近い。


イネスは走った。


出口へ。


背後。


銃声。


壁が弾ける。


エヴァン。


「見つけた」


イネスは振り返らない。


ソフィー。


構える。


「撃つ」


発砲。


イネスの脚。


《HP 67%》


「っ!」


転ぶ。


だが。


低重力。


身体を捻る。


壁を蹴る。


前へ。


エヴァンが追う。


「ルシアたちは?」


イネスは答えない。


「もう外か」


「……」


「当たり」


イネスが振り返る。


撃つ。


エヴァンが壁へ。


その隙に。


出口。


飛び出す。


月面。


明るい。


遮蔽物が減る。


イネスは走る。


エヴァンも外へ。


ソフィーは。


出口で止まった。


狙撃銃へ持ち替える。


伏せる。


照準。


「見える」


遠く。


イネス。


その先。


クレーター。


そして。


「ルシアも」


*


ルシアはクレーターの縁に伏せていた。


テオ。


少し離れた場所。


「来た」


ルシアが言う。


小さな人影。


イネス。


走っている。


その後ろ。


エヴァン。


さらに遠く。


基地出口。


ソフィー。


「狙撃手もいる」


テオが伏せる。


「俺、頭出したら死にますよね?」


「死ぬね」


「さらっと言わないで!」


「じゃあ出さないで」


ルシアがイネスを見る。


距離。


まだある。


銃声。


イネスの横。


砂が跳ねる。


二発目。


《INES HP 49%》


「イネス!」


テオが立とうとする。


ルシアが押さえる。


「まだ!」


「でも!」


「まだ!」


イネス。


走る。


ソフィー。


狙う。


エヴァン。


追う。


スペイン側の狙い。


分かっている。


合流。


三対二。


だから。


合流前に落とす。


ソフィー。


引き金。


イネス。


転ぶ。


弾丸。


頭上。


外れた。


「ちっ」


ソフィーが次弾。


その瞬間。


照準の中。


何かが立った。


テオ。


「……何?」


クレーターの縁。


丸見え。


HP2%。


ソフィーの照準が。


動く。


テオへ。


一発。


当てれば終わる。


だが。


「ソフィー」


エヴァン。


『撃つな』


指が止まる。


「どうして?」


『罠だ』


テオは立っている。


銃を構えている。


遠すぎる。


当たる距離ではない。


ソフィーが理解する。


「私を見てる」


『ああ』


テオは。


狙撃手を見ていた。


自分が狙われることも。


分かっている。


「撃てるよ」


『だから撃つな』


「一人落とせる」


『その一発で位置とタイミングを渡す』


ソフィー。


少し黙る。


そして。


照準をイネスへ戻した。


「了解」


テオ。


「……撃ってこない」


ルシア。


「バレたね」


「俺、結構勇気出したんですけど!」


「えらいえらい」


「軽い!」


銃声。


イネス。


《HP 31%》


「まずい」


ルシアが立つ。


「今度は私」


「何するんですか?」


「迎えに行く」


「え?」


ルシアが。


クレーターへ飛んだ。


*


エヴァン。


イネスまで。


あと少し。


イネスが振り返る。


撃つ。


エヴァン。


避ける。


イネス。


弾切れ。


「……最悪」


リロード。


エヴァンが銃を向ける。


「終わりだ」


その瞬間。


横。


何かが飛んでくる。


速い。


ルシア。


「またか!」


エヴァンが撃つ。


ルシア。


一回。


軌道変更。


弾丸回避。


二回。


エヴァンの横へ。


三回目。


使わない。


エヴァンが見る。


「三回目は?」


「使わないよ!」


ルシア。


イネスの腕を掴んだ。


「え?」


「飛ぶよ!」


「待っ――」


三回目。


軌道変更。


二人まとめて。


クレーター方向へ。


「重っ!」


「失礼!」


エヴァンが追う。


だが。


届かない。


ソフィー。


照準。


二人。


重なって飛んでいる。


「撃てる」


エヴァン。


「ルシアじゃない」


「分かってる」


照準。


イネス。


発砲。


弾丸。


月面を走る。


ルシア。


気づかない。


イネスが。


気づいた。


「ルシア!」


身体を動かす。


「何!?」


イネスが。


ルシアを押した。


弾丸。


命中。


《INES HP 0%》


ルシアの手から。


イネスの腕が。


消えていく。


「……え?」


二人の軌道が崩れる。


ルシア。


月面へ。


転がる。


イネスは。


光になりながら落ちる。


「イネス!」


「大丈夫」


「大丈夫じゃ――」


「ゲームだから」


イネスが笑った。


「先に戻ってる」


「……」


「勝ってきて」


消失。


表示。


《SPAIN》


《2 PLAYERS REMAINING》


《CANADA》


《2 PLAYERS REMAINING》


二対二。


ルシア。


HP41%。


テオ。


HP2%。


エヴァン。


そして。


ソフィー。


世界中のオッズが。


一斉に動いた。


*


マドリード。


誰も喋らない。


大型画面。


《SPAIN 2.87》


《CANADA 1.78》


男がグラスを握っている。


「二対二……」


隣。


「実質二対一じゃない?」


「テオがいる」


「HP二だぞ」


「いるだろ」


「一発だぞ」


「それでも」


男は画面を見る。


クレーターの縁。


小さく映る。


十九歳。


スペイン代表。


「まだいる」


*


テオは。


表示を見ていた。


《HP 2%》


ルシアが戻ってくる。


一人。


テオは何も聞かなかった。


ルシアも。


何も言わなかった。


二人。


並ぶ。


遠く。


エヴァン。


さらに奥。


ソフィー。


ルシアが銃を確認する。


「テオ」


「はい」


「怖い?」


「めちゃくちゃ」


「私も」


テオが横を見る。


「嘘でしょ」


「ちょっとは怖いよ」


「ちょっとじゃないですか」


「まあね」


テオが笑う。


ルシアも笑った。


遠く。


エヴァンが止まる。


ソフィー。


照準。


四人。


互いの位置を。


ほぼ把握している。


隠れる場所は少ない。


逃げても。


終わらない。


ルシアが立ち上がった。


テオも。


続く。


「行くよ」


「はい」


「あと一発、絶対もらわないでね」


テオが自分のHPを見る。


二。


「無茶言うなあ……」


二人。


月面を蹴った。


エヴァンが銃を上げる。


「来るぞ」


ソフィー。


照準を合わせる。


「どっちから?」


エヴァンは。


先頭を走るルシアを見る。


その少し後ろ。


HP2%。


テオ。


「――二人ともだ」


月面戦。


残り四人。


次の一発が。


誰かを消す。

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