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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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14/29

第14話 見えない一人

『ネットスキル大戦』


第2部 スペインVSカナダ


第4話 見えない一人


静かだった。


月面基地内部。


白い通路。


規則正しく並ぶ照明。


ルシアは振り返ったまま動かない。


「……どうした?」


カルラが聞く。


「分かんない」


「何か見えた?」


「見えてない」


イネスが端末を見る。


反応なし。


《SCAN》


薄い円が広がる。


通路。


壁。


隣の区画。


さらに奥。


何もない。


「いない」


イネスが言う。


ルシアはまだ後ろを見ていた。


「じゃあ、気のせいかな」


「たぶん」


テオが不安そうに振り返る。


「やめてくださいよ。そういうの」


「何が?」


「ホラーみたいなやつ」


「ゲームだよ?」


「ゲームでも怖いものは怖いです!」


ルシアが笑った。


「大丈夫、大丈夫」


その瞬間。


銃声。


テオの身体が揺れた。


《HP 74%》


「え?」


二発目。


《HP 51%》


「テオ!」


カルラがテオを引っ張る。


三発目。


壁。


火花。


全員が散った。


「どこ!?」


ルシアが銃を構える。


誰もいない。


イネス。


「反応なし!」


「撃たれてる!」


「分かってる!」


また銃声。


今度はイネス。


《HP 82%》


「っ!」


「方向は!?」


イネスが壁の陰へ。


「後ろ!」


全員。


振り返る。


いない。


ルシアの表情から笑みが消えた。


「いるじゃん」


*


ミア・チェン。


壁際。


スペイン代表から十数メートル。


銃を構えている。


《GHOST》


残り。


《00:07》


ルシアがこちらを見る。


目が合っているように見える。


だが。


見えていない。


ミアが銃口をテオへ向ける。


HP51%。


あと数発。


引き金。


――撃たない。


《00:05》


カルラたちはもう動いている。


狙いやすい場所から離れた。


ミアが後退。


《00:03》


角。


曲がる。


《00:01》


《GHOST END》


表示。


ミアが走る。


「いた!」


ルシア。


発砲。


ミアの背後。


壁が弾ける。


「逃がさない!」


ルシアが追う。


「ルシア!」


カルラ。


「分かってる!」


「分かってない!」


「それさっきも聞いた!」


ルシアが角を曲がる。


ミア。


見える。


距離。


二十メートル。


「止まれー!」


「止まるわけないでしょ!」


ミアが振り返って撃つ。


ルシアが壁を蹴る。


身体が浮く。


天井近く。


弾丸を越える。


《ORBITAL》


軌道が曲がる。


壁。


蹴る。


さらに前。


ミアが目を見開く。


「速……!」


ルシアが追いつく。


銃口。


「捕まえた!」


発砲。


ミアが床へ滑る。


《HP 78%》


もう一発。


《HP 61%》


ミアが蹴る。


ルシアの腹。


二人。


低重力で離れる。


ミアが着地。


ルシアも壁に足をつく。


互いに。


銃口。


「ルシア・アルバレス」


「知ってるの?」


「有名だから」


「やった」


「嬉しい?」


「ちょっと」


二人。


同時に撃つ。


*


「追う!」


テオが走ろうとする。


カルラが止めた。


「ダメ」


「でもルシアが!」


「だからよ」


イネスが通路の奥を見る。


「カナダは残り三人」


テオ。


「エヴァンたち……」


「こっちに向かってるかもしれない」


カルラがルシアの消えた方向を見る。


一瞬。


迷う。


追えば。


ルシアを助けられる。


だが三人まとめて動けば。


敵にも読まれる。


「イネス」


「うん」


「ルシアを追って」


「カルラは?」


「テオと残る」


テオが自分を指す。


「俺?」


「HP五十一」


「まだ半分あります!」


「だから残すの」


イネスが頷く。


「ルシア連れて戻る」


「お願い」


走り出す。


カルラとテオ。


二人。


残る。


テオが銃を握り直した。


「……来ますかね」


「来るでしょうね」


「三人?」


「たぶん」


「こっち二人ですよ」


「そうね」


「……逃げません?」


カルラが笑った。


「それもあり」


「え?」


「戦争で逃げるのは恥じゃない」


テオは少し驚いた。


カルラが続ける。


「勝てばいいの」


その言葉。


テオは。


少しだけ笑った。


「じゃあ逃げましょう」


「ええ」


二人が走り出した。


直後。


前方。


銃声。


カルラが止まる。


「……遅かった」


通路の向こう。


エヴァン。


ノア。


ソフィー。


三人。


ノアが手を上げる。


「こんにちは」


テオ。


「最悪だ……」


*


世界中。


画面が切り替わる。


片方。


ルシアVSミア。


もう片方。


カルラ、テオVSカナダ三人。


マドリード。


バー。


さっきまで騒いでいた男たちが静かになる。


「まずくない?」


「まずい」


「スペインに入れたんだろ?」


「お前も入れただろ」


「いくら?」


「聞くな」


画面。


オッズ。


《SPAIN 3.42》


《CANADA 1.53》


数字が。


また動き始める。


*


ルシア。


発砲。


ミアが避ける。


狭い通路。


月面外部ほど自由に飛べない。


天井。


壁。


配管。


障害物。


ルシアが跳ぶ。


「それ!」


ミアが見る。


ルシアの動き。


一回。


壁。


二回。


天井。


三回。


方向転換。


「……三回」


ルシアの眉が動く。


「何が?」


「新しい派生」


ミアが撃つ。


ルシアが床へ。


回避。


「三回まで?」


「教えない」


「じゃあ試す」


ミアが連射。


ルシア。


一回。


軌道変更。


二回。


三回。


ミアが撃つのをやめた。


ルシアが着地する。


「……?」


ミア。


笑う。


「やっぱり」


「何?」


「四回目を使わない」


ルシアは答えない。


ミアが通信を開く。


「エヴァン」


*


エヴァン。


カルラたちへ銃を向けたまま答える。


「聞いてる」


『ルシアの新派生。たぶん三回』


「確定?」


『まだ』


「なら確定させて」


『了解』


カルラは。


その会話を聞いている。


内容までは分からない。


だが。


エヴァンの意識が一瞬こちらから外れた。


カルラ。


「テオ」


小声。


「はい」


「私が撃つ」


「はい」


「あなたは走って」


「どこへ?」


カルラ。


右側。


狭い整備通路。


「あそこ」


テオが見る。


「でも――」


「三」


「ちょっ」


「二」


ノアが気づく。


「何かするぞ!」


「一!」


カルラ。


発砲。


エヴァン。


ノア。


ソフィー。


三人が散る。


「走って!」


テオ。


走る。


ソフィーが狙う。


カルラが撃つ。


ソフィー。


遮蔽物へ。


テオが整備通路へ飛び込む。


ノア。


「追う!」


《BOOST》


加速。


テオを追う。


カルラが叫ぶ。


「テオ! 後ろ!」


テオが振り返る。


ノア。


速い。


「またあんた!?」


「縁があるな!」


「いらない!」


テオが撃つ。


ノア。


HP31%。


一発でも。


危ない。


だから。


避ける。


右。


左。


身体強化。


距離が縮まる。


テオが走る。


「速すぎる!」


「待て!」


「待つわけないだろ!」


角。


テオが曲がる。


ノアも。


その瞬間。


テオ。


止まった。


「……?」


ノアの目の前。


テオがこちらを向いている。


「なんだ?」


「マテオさんに」


テオが拳を握る。


「一発もらってるんですよね?」


ノアの表情が変わる。


「だから?」


「だったら」


テオ。


踏み込む。


「逃げなくても勝てるかもしれない!」


ノアが笑った。


「やってみろ!」


二人。


正面からぶつかる。


*


カルラ。


エヴァン。


ソフィー。


二対一。


いや。


一対二。


カルラは遮蔽物へ。


弾丸。


左右から。


《HP 86%》


「っ……!」


ソフィー。


狙撃銃ではない。


基地内部用のサブウェポン。


短い銃。


エヴァン。


反対側。


カルラを逃がさない。


「さっきの仕返し?」


カルラが聞く。


エヴァン。


「何の?」


「一人を四人で倒した」


「気にしてない」


「じゃあ二人がかりは?」


「勝つため」


カルラが笑う。


「同感」


発砲。


エヴァンが避ける。


ソフィー。


撃つ。


カルラ。


壁。


《HP 71%》


逃げる。


エヴァンが追う。


その瞬間。


カルラ。


振り返る。


《LINK》


エヴァンの目が僅かに動く。


「……?」


何も起こらない。


少なくとも。


エヴァンには。


*


離れた通路。


イネス。


突然。


視界の隅に別の映像。


カルラが見ているもの。


エヴァン。


ソフィー。


二人の位置。


イネスが理解する。


「カルラ……!」


《LINK》


数秒だけ。


カルラの視界が味方へ共有される。


イネスが立ち止まる。


ルシアを助けに行くか。


カルラへ戻るか。


一瞬。


迷う。


そして。


走った。


ルシアとは。


反対方向へ。


*


ルシア。


ミア。


銃撃。


《LUCIA HP 74%》


《MIA HP 46%》


ミアが壁へ隠れる。


ルシア。


追う。


「そろそろ終わり!」


「そうね」


ミアが顔を出す。


撃つ。


ルシア。


一回。


方向転換。


弾丸回避。


二回。


壁を蹴る。


ミアが撃つ。


三回。


天井から。


一気にミアへ。


ミア。


待っていた。


「四回目」


ルシア。


目の前。


ミアが銃を向ける。


「使ってみて」


発砲。


ルシアは。


笑った。


「やだ」


「――!」


軌道変更しない。


そのまま。


身体を捻る。


弾丸。


肩。


《HP 58%》


被弾。


それでも。


進む。


ミアの顔が近づく。


「なっ――」


ルシア。


銃ではなく。


足。


飛び蹴り。


ミアの胸。


《HP 31%》


二人。


吹き飛ぶ。


ルシアは壁へ。


ミアは床へ。


ルシアが銃を向ける。


「スキル使わなきゃ避けられないって」


息を整える。


「誰が決めたの?」


ミアも銃を向ける。


「……なるほど」


同時。


発砲。


一発。


二発。


《LUCIA HP 41%》


《MIA HP 12%》


三発目。


ミアの弾丸。


ルシア。


首を傾ける。


掠める。


そして。


ルシアの弾丸。


命中。


《CANADA / MIA CHEN》


《HP 0%》


ミアの身体が光る。


消える直前。


笑った。


「三回なのは合ってる?」


ルシア。


少し黙る。


「内緒」


「ケチ」


ミア。


消失。


表示。


《CANADA》


《3 PLAYERS REMAINING》


ルシアが息を吐く。


「……勝った」


通信を開く。


「カルラ! ミア倒した!」


返事。


ない。


「カルラ?」


銃声。


遠く。


ルシアの顔が変わる。


走り出す。


*


整備通路。


テオ。


HP。


《23%》


ノア。


《18%》


二人。


もう銃をほとんど撃っていない。


近い。


殴る。


蹴る。


壁。


低重力。


ノアの拳。


テオ。


避ける。


腹へ。


一発。


《NOAH HP 11%》


「っ!」


ノアがテオを掴む。


壁へ投げる。


《TEO HP 9%》


「ぐっ……!」


両者。


一桁が見える。


ノアが笑う。


「初参戦だっけ?」


テオ。


「そう……ですけど」


「強いじゃん」


「どうも……」


「でも」


ノア。


《BOOST》


「終わりだ」


踏み込む。


テオの目。


ノア。


速い。


避けられない。


だったら。


テオは前へ出た。


「何!?」


ノアの拳。


テオの肩。


《TEO HP 2%》


残る。


二。


テオの銃口。


ノアの胸。


「マテオさんの――」


発砲。


「残りです!」


《CANADA / NOAH KING》


《HP 0%》


ノア。


光になる。


「……マジか」


最後に笑う。


「やるな、新人」


消失。


テオ。


その場に座り込む。


《HP 2%》


「……勝った」


声が震える。


「勝った……!」


表示。


《CANADA》


《2 PLAYERS REMAINING》


だが。


スペイン側。


《4 PLAYERS REMAINING》


ルシア。


カルラ。


イネス。


テオ。


数字だけなら。


圧倒的優勢。


その瞬間。


銃声。


表示が変わった。


《SPAIN》


《3 PLAYERS REMAINING》


テオの笑顔が消える。


「……え?」


*


白い通路。


カルラ。


壁にもたれていた。


《HP 0%》


目の前。


エヴァン。


そして。


ソフィー。


その後ろ。


遅れて到着したイネス。


「カルラ!」


カルラが振り返る。


身体が。


光になり始める。


イネスを見る。


「遅い」


「ごめん!」


カルラが笑う。


「冗談」


「カルラ……」


「ルシアとテオをお願い」


イネスが銃を握る。


「分かった」


カルラ。


最後に。


エヴァンを見る。


「次は、あなたよ」


エヴァン。


「待ってる」


カルラが消えた。


残ったのは。


イネス。


エヴァン。


ソフィー。


三人。


互いに。


銃を構える。


表示。


《SPAIN 3》


《CANADA 2》


人数では。


スペイン有利。


だが。


スペインの隊長は消えた。


カナダの隊長は。


まだいる。


イネスが小さく息を吐く。


エヴァンが言った。


「続けようか」


イネス。


照準を合わせる。


「もちろん」


月面戦。


残り五人。


ここから先は。


一人落ちるたびに――


勝敗が動く。

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