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『ネットスキル大戦』  作者: ネコロビン


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13/29

第13話 三対一

『ネットスキル大戦』


第2部 スペインVSカナダ


第3話 三対一


銃声。


一発。


マテオは動かなかった。


弾丸が頬を掠める。


《HP 91%》


背後。


エヴァン。


前方。


基地上部にはソフィー。


そして右。


採掘機の陰からノアが出てくる。


三人。


「三対一か」


マテオはライフルを構えたまま呟いた。


エヴァンが答える。


「悪いな」


「戦争だからな」


「理解が早くて助かる」


マテオは笑った。


「年を取るとな」


視線はソフィーから外さない。


「若い奴みたいに、卑怯だなんだと言わなくなる」


ソフィーの銃口が僅かに動いた。


マテオも動かす。


「それに――」


発砲。


同時。


ソフィーも撃つ。


マテオの弾丸が基地上部へ。


ソフィーが身体を伏せる。


ソフィーの弾丸は。


マテオの胸。


《HP 68%》


「っ……!」


それでも。


マテオは倒れない。


「一人に三人使ってくれるなら」


ライフルを捨てた。


腰の銃を抜く。


エヴァンへ向ける。


「悪くない」


発砲。


エヴァンが横へ。


「ノア!」


「了解!」


ノアが飛び出した。


月面を蹴る。


速い。


だが、高くは跳ばない。


マテオが撃つ。


一発。


二発。


ノアは止まらない。


《BOOST》


表示。


ノアの速度が一気に上がった。


「なるほど」


マテオが呟く。


単純な身体強化。


だからこそ。


速い。


マテオが三発目を撃つ。


ノアが身体を沈めた。


弾丸が頭上を抜ける。


距離。


十メートル。


八。


六。


「捕まえた!」


ノアが踏み込む。


マテオ。


避けない。


「――そうだな」


ノアの拳。


マテオの腹部。


《HP 41%》


身体が浮く。


低重力。


吹き飛ぶ。


ノアが追う。


だが。


「ノア」


エヴァンの声。


「何?」


「離れろ」


「え?」


マテオの手。


ノアの腕を掴んでいた。


「捕まえたのは」


マテオが笑う。


「俺だ」


《ANCHOR》


瞬間。


マテオの身体が。


止まった。


空中で。


完全に。


ノアの身体まで引かれる。


「なっ――」


マテオが銃口をノアの腹へ押しつけた。


発砲。


《CANADA / NOAH》


《HP 63%》


もう一発。


《HP 31%》


「くっ!」


ノアが腕を振りほどく。


三発目。


その前に。


エヴァン。


発砲。


マテオの肩。


《HP 19%》


ノアが離れる。


マテオの《ANCHOR》が解除。


身体がゆっくり月面へ落ちる。


エヴァンが言った。


「自分の位置固定か」


マテオが着地する。


「見れば分かるだろ」


「クールタイムは?」


「教えると思うか?」


「思ってない」


エヴァンが銃を向ける。


マテオも向ける。


HP19%。


ノア31%。


「悪くない交換だ」


マテオ。


「そうだな」


エヴァンの指が引き金へ。


その瞬間。


通信。


『マテオ!』


ルシア。


エヴァンが僅かに視線を動かした。


マテオは動かない。


「来るな」


『でも!』


「来るな」


短い。


強い声だった。


『三人そっちにいる!』


「だからだ」


沈黙。


マテオが笑う。


「三人、ここにいる」


*


ルシアが止まった。


遠く。


採掘施設。


マテオの位置。


戻れば助けられるかもしれない。


だが。


マテオを囲んでいる三人も。


そこへ釘付けになる。


カルラが横へ来る。


「行かない」


「でも!」


「マテオの判断よ」


「HP十九だよ!」


「見えてる」


ルシアが歯を食いしばる。


テオが二人を見る。


「助けないんですか……?」


イネスが答える。


「助ける」


「じゃあ!」


「マテオのところへ行くことだけが、助けることじゃない」


テオには分からない。


ルシアには。


分かった。


カナダは五人。


そのうち三人がマテオにいる。


なら。


残りは。


二人。


ルシアが顔を上げる。


「探す」


カルラが頷く。


「イネス」


「もうやってる」


イネスが巨大な月面基地を見る。


視界。


外周。


採掘機。


アンテナ。


輸送路。


見えない。


「少し待って」


《SCAN》


薄い円がイネスを中心に広がる。


月面を。


施設を。


壁を。


一瞬で通過。


反応。


一つ。


そして。


もう一つ。


イネスが目を開く。


「いた」


「どこ?」


「基地内部。一人」


カルラ。


「もう一人は?」


「SCAN圏外」


「内部の一人をやる」


テオが驚く。


「四人で一人を?」


カルラが銃を確認する。


「向こうが先にやった」


ルシアが笑った。


「戦争だからね」


四人が走る。


*


月面基地内部。


白い通路。


外とは違う。


天井が低い。


狭い。


隠れる場所が多い。


カナダ代表。


オリバー・グラント。


一人。


輸送路脇にしゃがんでいる。


通信。


『オリバー』


エヴァン。


「何?」


『スペインがそっちへ向かう可能性がある』


オリバーが立ち上がる。


「何人?」


『最大四』


「最大四?」


少し笑う。


「人気者だな」


『逃げろ』


「珍しいな」


『何が?』


「お前が逃げろって言うの」


エヴァンは答えない。


オリバーは通路を見る。


「了解」


走り出す。


その瞬間。


前方。


角から。


何かが飛び出した。


ルシア。


「見つけた!」


「早っ!」


オリバーが撃つ。


ルシアが壁を蹴る。


低重力。


天井近くへ。


銃弾が下を通る。


オリバーが逆方向へ走る。


「一人!」


ルシア。


「分かってる!」


カルラの声。


反対側。


オリバーが止まる。


前。


カルラ。


後ろ。


ルシア。


右側の通路。


イネス。


左。


テオ。


オリバーが周囲を見る。


「……四人、本当に来たのか」


カルラ。


「悪いわね」


オリバーが笑う。


「戦争だから?」


ルシア。


「それ、今日三回目」


オリバーが銃を捨てた。


両手を軽く広げる。


テオが戸惑う。


「降参?」


「このゲームに降参なんてない」


オリバー。


《GUARD》


身体の表面に薄い光。


ルシアが撃つ。


命中。


《HP 96%》


「硬っ!」


カルラも撃つ。


《HP 93%》


イネス。


《HP 90%》


テオ。


「全然減らない!」


オリバーが走り出した。


真正面。


テオへ。


「え、俺!?」


「テオ、下がって!」


オリバーが突っ込む。


テオが撃つ。


《HP 87%》


《HP 84%》


《HP 81%》


止まらない。


「うわああ!」


テオが跳ぶ。


オリバーも跳ぶ。


低重力。


二人の身体が浮く。


オリバーの拳。


テオが腕で受ける。


《HP 79%》


壁へ。


衝突。


「痛っ!」


オリバーが追う。


ルシア。


「テオから離れて!」


発砲。


《HP 77%》


効かない。


カルラが言う。


「撃つのやめて」


ルシア。


「え?」


「全員、撃つのやめて!」


銃声が止まった。


オリバーが僅かに振り返る。


「……?」


カルラが見る。


薄い光。


まだある。


《GUARD》


「待つ」


ルシアが理解する。


「あ」


イネスも。


「時間制」


オリバーの表情が変わった。


テオだけ分からない。


「何がですか!?」


カルラ。


「防御が切れるまで撃たない」


「でも!」


「逃がさないだけでいい」


四人。


銃を構える。


撃たない。


オリバー。


前。


カルラ。


後ろ。


ルシア。


左右。


イネス。


テオ。


「……なるほど」


オリバーが走る。


ルシア側。


ルシアは撃たない。


横へ。


通さない。


逆。


イネス。


同じ。


オリバーがテオを見る。


テオ。


「俺ばっかり!」


突っ込んでくる。


「でも!」


テオが銃を構えた。


撃たない。


後退。


通路を塞ぐ。


「今度は逃げません!」


オリバーが止まった。


身体の光。


弱くなる。


カルラ。


「まだ」


消える。


「まだ」


オリバーが跳ぶ。


「今!」


四方向。


銃声。


《HP 64%》


《HP 48%》


《HP 29%》


オリバーが着地。


走る。


ルシア。


追う。


「逃がさない!」


《ORBITAL》


壁へ。


軌道を変える。


オリバーより先に。


出口。


着地。


「こんにちは」


「……さっき会った」


オリバーが拳を振る。


ルシアが身体を引く。


避ける。


腹へ銃口。


「じゃあ」


発砲。


《HP 11%》


「さようなら」


もう一発。


《CANADA / OLIVER GRANT》


《HP 0%》


身体が光へ変わる。


消える。


一瞬。


静寂。


そして。


世界中の画面。


《CANADA》


《4 PLAYERS REMAINING》


歓声。


スペイン。


初撃破。


テオが画面を見る。


「……勝った?」


カルラ。


「一人ね」


ルシアが拳を握る。


「よし!」


イネス。


「まだ喜ばない」


「ちょっとくらいいいじゃん!」


その瞬間。


表示。


《SPAIN》


《4 PLAYERS REMAINING》


ルシアの笑顔が。


止まった。


「……え?」


通信。


ノイズ。


そして。


消失。


《MATEO ROJAS》


《HP 0%》


テオ。


何も言わない。


カルラも。


イネスも。


ルシアが。


ゆっくりと目を閉じた。


数秒。


「……マテオ」


*


採掘施設。


マテオがいた場所。


ライフルだけが。


消えていく。


ノア。


《HP 31%》


肩で息をしている。


ソフィーが基地上部から降りてくる。


エヴァンは。


スペイン側の表示を見る。


四人。


カナダも。


四人。


「交換された」


ノアが言う。


「マテオ一人に、俺たち三人」


ソフィー。


「その間にオリバーを取られた」


ノアが顔をしかめる。


「損した?」


エヴァンは少し考える。


「いや」


「なら得?」


「それも違う」


銃を確認する。


「四対四になっただけだ」


ソフィーが聞く。


「次は?」


エヴァン。


遠く。


月面基地を見る。


その中に。


ルシアがいる。


「ルシア・アルバレス」


ノア。


「新派生を調べるんじゃなかった?」


「ああ」


「まだやる?」


エヴァンが歩き出す。


「もちろん」


ソフィーがついていく。


ノアも。


その少し後ろ。


基地外周。


誰もいない場所。


一人の女が立っていた。


カナダ代表。


ミア・チェン。


通信を聞いている。


『四対四』


ミアが呟く。


「違うよ」


誰にも聞こえない。


スペイン代表の位置。


カルラ。


イネス。


テオ。


そして。


ルシア。


すべて見えていた。


「もう囲んでる」


《GHOST》


表示が消える。


ミア自身の反応も。


スペイン側の索敵画面から。


消えた。


月面基地内部。


ルシアが突然振り返る。


「……どうした?」


カルラ。


「いや」


誰もいない通路。


「なんか今――」


静かすぎた。


ルシアが銃を握り直す。


四対四。


数字だけなら。


互角。


だが。


そのすぐ近くにいる一人を。


スペインはまだ――


知らない。

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