再会と特製寄せ鍋
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遺跡での死闘から数日後。
ライルはゲオルグ、アレクとともに、静かにロンドの街へと帰還した。彼らの顔には、リリアの離脱と王都の混乱を背負った、重い疲労の色が浮かんでいた。
街の入口で彼らを待っていたのは、すべてを知らず、ただ再会を喜ぶ優菜の姿だった。
「ライルさん!ゲオルグさん、アレクさん!」
優菜は駆け寄り、ライルの疲弊しきった姿を見て息をのんだ。彼の胸当には、激しい戦いの痕が生々しく残っている。
「ユウナ、ただいま」
ライルは、笑顔を作ろうとするが、その表情は固い。リリアの安否を優菜に告げられない辛さと、優菜に再び大きな使命を背負わせる負い目があった。
優菜は言葉を交わすよりも先に、ライルとゲオルグ、アレクの手をとり、彼らを自宅へと導き、ダイニングテーブルの椅子に座らせた。
「何かあったんですね。疲れてる……いいから、座って。すぐに温かいご飯を作りますから」
優菜は何も尋ねず、表情一つで彼らの疲労の深刻さを悟っていた。優菜は脳内で《完全献立作成》を発動。彼らの心身の疲労回復に最適なメニューを一瞬で構築した。そして《高速家事スキル》により、厨房へと向かうや否や、すべての準備を驚異的な速度で始めた。
その日の食卓に並んだのは、湯気を立てる大きな『特製寄せ鍋』だった。
地元の鶏ガラと、優菜が長期保存技術で旨味を凝縮させた乾燥野菜から丁寧に取った極上の出汁に、新鮮な肉と採れたての野菜をたっぷりと入れた、この世界では見たことのない豪華な鍋だった。さらに優菜は、この世界にはない『柑橘系薬草と醤油もどきで作った特製ポン酢』をさっと作り上げた。
ライルたちが鍋を口にすると、その滋味深くもさっぱりとした味わいに、体中の細胞が喜んでいくのを感じた。
その温かさは、ライルたちの五臓六腑に染み渡り、戦闘で張り詰めていた緊張と、リリアの離脱による精神的な疲労をゆっくりと解きほぐしていく。優菜の料理の力が、彼らの心を支えた。
「……ああ、生き返る」
ライルは深いため息をつき、顔を上げた。その目には、久々に安堵の色が浮かんでいる。
「ユウナ。こんなに心と体が休まる食事は、本当に初めてだ。正直、不安でどうにかなりそうだった。でも、この鍋を食べたら、きっと大丈夫だって思える。ありがとう」
食後、落ち着きを取り戻したライルは、リリアが王都の崩壊を防ぎ、優菜の地位を確立するための切り札を託して自ら危険な亀裂へ飛び込んだこと、そして王都の権力構造がそのせいで激しく揺らいでいる状況を、重い口調で静かに伝えた。
リリアの献身的な行動、そしてライルたちが背負ってきた重荷を知り、優菜は涙を止められなかった。しかし、優菜はすぐに、顔を上げ、涙の跡を残したまま、強い意志の眼差しを浮かべた。
「リリアさんが、私と、この街のためにしてくれたこと。ライルさんたちが、命をかけて守ってくれたこと。……もう、これ以上、誰にも辛い思いをさせません」
優菜は目を閉じリリアのことを想った。
「わかりました。リリアさんのためにも、王都へ行きましょう」
優菜は強く頷いた。
「でも、私には剣も魔法もありません。できるのは……料理だけです」




