2-7 合流と事情説明
「ビッグスコルピオンの尾にハサミ、こっちはワイルドコヨーテの毛皮と爪、牙。それにフロッガーの舌と肉だな。やるなお前達、ちょっと出て行ってこれだけ倒せたんなら十分だろう。素材の状態もいいし高値で引き取ってやる」
あの後、俺達はフィリアに俺の上着を着せて魔物退治にいそしんだ。レベル上げというのもあるけど、まずは先立つものが無いと睡眠と食事を取ることが出来ないからだ。
あのサソリ……ビッグスコルピオンという名前らしいけど、この辺りじゃかなり高レベルの魔物らしく、苦戦したのは仕方がないようだ。他には犬っぽいワイルドコヨーテに巨大ガエルのフロッガーを倒した。
水辺が無いのにカエルかよ!? と思ったけど、地球にも乾燥地帯にウォーターホールディングフロッグのような種もいるので有り得なくは無いかと倒しておいた。
で、今は冒険者ギルドの素材屋さんにそれを持ってきた所だった。
「何が売れるか分からないから適当に剥いできたんだけど良かった?」
「おう、大丈夫だ嬢ちゃん。まあ欲を言えばスコルピオンの甲殻も欲しかったがな。コヨーテは肉が臭くて食えないし、フロッガーは皮が使えない。これで適性じゃないかな」
なるほど甲殻か……あれは大きすぎて剥ぐのが面倒だったから止めといたが、結構金額になるのか? 俺が考えていると綾香が代わりに聞いてくれていた。
「ちなみにおいくらくらいに……?」
「甲殻は一枚五百セリアだ。で、こいつは報酬の五千セリア」
「戻りましょう陽。そして夕食を一品増やすのよ」
「わたしは早く服が欲しいです……」
「ということだ綾香。先に服屋に行くぞ。その後、チェイロを探そう」
「ちえー」
「また頼むぜ!」
素材屋さんの元気な声を受けながら立ち去り、今度は服屋へ足を運ぼうと通りを歩いていると、前から見知った顔がきょろきょろしながら歩いているのが見えた。
「あれ? チェイロ?」
「あー! 居た!」
ぱたぱたと嬉しそうに走ってくるチェイロ。どうしたのかと尋ねてみると、頼もしい言葉が返ってきた。
「何か危なっかしいから町を案内しようかと思ってさ! 私も少しこの町に滞在しないといけなくなったから」
「そうなんですね! ちょうど私達も探していたんですよ」
「え? 私を?」
「それについては服屋でフィリアの服を買ってから話すよ。どっかいい店無いか?」
フィリアが俺の上着をはだけてチェイロに見せると、チェイロはごくりと喉を鳴らす。どうしてだ? それはともかく、フィリアの服を新調することに成功した俺達はチェイロを伴い再び宿屋へと向かった。
「……色男だな兄ちゃん。増えてるじゃ無いか」
「そういうんじゃありませんから。とりあえず別――」
「四人で一部屋、お願いできます?」
「お、おい!?」
「わ、私も!?」
「いいのよ。この後話を聞いたら恐らく嫌でも一緒に居ることになるでしょうしね」
「?」
一部屋に慌てる俺と、首を傾げるチェイロ。結局俺の要求は無視され、四人一部屋で泊まることになった。そして、荷物を降ろし、俺達はベッドに腰掛けるとチェイロに話始める。
「どうしたの、改まって? さっきのアヤカさんの話?」
「ああ。俺達は――」
チェイロに俺達が世界を創った神様に依頼されて世界を救いに来たことを伝えた。チェイロはこの世界の"主人公"であり、悪い神のしもべに殺されたら世界が消滅してしまうなどを教えると、チェイロはぷっと吹き出した。
「ええー? 私そんな大層な人物じゃないよ? それに創造神って……えっと、ゼアト神だったっけ? 確かに銅像とかあるけど、実在はしてないわよ」
カラカラと手を振って笑っていると、コントローラーから声が聞こえてきたので俺は腰から取り出しモニターを見る。
<マスター、ゼアト様から通信です>
「いいタイミングだ。回してくれ」
<かしこまりました。3,2,1……映像出ます>
ローラが短く呟くと、モニターからホログラフのようなゼアト様が浮かび上がってきた。それが「よっ!」と手を上げてニカッと笑い、口を開く。
『よう、元気か? あれから通信できなくて困ってたんだが、ルアが何とか直してくれた。で、チェイロには会ったか?』
「ここに居ますよ!」
フィリアが指を向けると、ゼアト様がうんうんと頷いた。
『驚かせたな。俺はゼアト。この世界を創った、まあ神様ってやつだ』
「ええええ!? ほ、本当だったの? だ、騙してない……? というかこれ何……?」
『話はだいたい聞いたと思うが、そっちにユーベルという神が送り込んだ、お前を殺すための刺客がいるはずだ。それにやられないよう注意してくれ。刺客はハル達が相手をするから無理しないようにな』
ゼアト様がさりげなく俺達に押し付けているのを横で聞きながら、チェイロは手を上げて質問をする。
「な、何かそいつらだっていう目印みたいなのは無いんですか?」
『うむ、いい質問だ。基本的には現地人に擬態しているから分からない。ただ、主人公を殺す為に、世界をじわじわおかしくしていくようなことをしているようだな』
そこでチェイロは顎に手を当てて考え始め、しばらくして「あ!」と声をあげた。
「もしかして今の流行病がそうなんじゃ……」
『さっきも言ったが俺達でも分からん。それを調べて見るのもいいかもしれんな。チェイロはハル達から離れるんじゃないぞ?』
「わ、分かりました……」
チェイロがなぜか敬礼をして答えると、ゼアト様がぶつぶつ何か言い出した。
『……何、時間だと? 電池がもう無くなる? ちょっと早すぎないか? あ、じゃあこれだけでも――』
ぶつん
<通話時間:36分27秒>
「どうでもいいよ!? 何言おうとしてたんだろうな……ローラ、繋がらないか?」
<……現在電波の届かない所に――>
「あー、もういい。と言う訳だチェイロ、済まないが行動を共にしてくれるか?」
「あ、はい。それは構いませんけど……私もお仕事があるからそこはケースバイケースでいいです?」
「いいんじゃない? どうせ情報収集しないといけないだろうし、お金も稼がないといけないしね」
綾香の言葉に俺が頷き、今後の方針が決まった。
「とりあえず怪しい話が無いかギルドなどで情報収集。で、チェイロの仕事状況によっては中央都ク=ビシネに行く、それでいいな!」
「オッケー!」
さて、まず一つ目の主人公に会う目標は達成できた。次は――
俺達は冒険者としてしばらく過ごすことになった。
とりあえず第二世界、本格始動です!
いつもまって頂きありがとうございます!
【後書き劇場mk2】
『キナ臭い冒険者と邂逅するでしょうね。次の世界は私のところよ!』
さりげなくアピールしないでくれる?




