2-6 第二世界で初戦闘
「お、兄ちゃん達でかけるのか?」
入って来るときに会った門番が煙草を咥えて俺達に声をかけてくれた。
「ああ、ちょっと金を稼ぎに……一応これでいいか?」
俺はカードを見せると、満足げに笑って頷いた。
「問題ない。外は無法地帯だし気をつけろよ」
「そういや、さっきも盗賊らしき男にチェイロが狙われていたな……俺達は山で暮らしていたから情勢に詳しくないんだけどどこもそうなのか?」
すると門番は眉を曲げて俺を訝しんだ顔で見る。む、ちょっと山で暮らしていたのは無理があったか?
「……いい物を着ているし、冒険者でもないから、中央貴族のおぼっちゃん、お嬢ちゃんかと思ったけど違うのか? このラクシネズの町はここから10キロほど離れている中央都のク=ビシネの管轄の町なんだが、最近この町で病気が流行っていてな」
「病気、ですか?」
門番さんは煙草を捨てると残っていた煙を口から吐いてフィリアの言葉に返答する。
「ああ、子供が一番かかっているんだけど、肺をやられるらしく酷く咳き込むんだ。咳が酷くなって段々体力が無くなってしまいには……」
「死んでしまうんですか?」
綾香が辛そうな顔で聞くと、門番さんは頷く。
「多分」
俺達はガクッと崩れた。
「多分!? え、まだ死んだ人は」
「まだ居ないよ。でも、さっきチェイロさんが会いに行ったお方の具合が最近悪化したらしいんだよ。だから最初の犠牲者になるかもしれないな」
なるほど、『あのお方』ってくらいだから偉い人なんだろうな。それでチェイロは急いでいたって訳だ。それにしても病気か……ユーベルと関係あるかな? でも主人公はチェイロだと分かっているし、あいつを狙うそれっぽいのを追って行けば尻尾はつかめるか? そう思っていると、門番さんが話を続ける。
「他の町はどうか分からないが、中央都はまだそういうのは無いらしい。もし冒険者を続けるならこの町より中央都へ行った方がいいかもな。ここだと移る可能性がある」
「……門番さんは、町を出ないのか?」
「ははは、俺はここが故郷だからな。おっと、旅人か……じゃあな気をつけろよ」
そう言って俺達とすれ違うように入ってきた男女の応対に入ったので頭を下げて町の外へ出た。
◆ ◇ ◆
「……はい、確認できました。この町へはどういった目的で?」
門番が尋ねると、目つきの悪い男がボソリと呟く。
「この町にいる領主に会いに」
「……」
門番は目を細めて男を見ると、隣にいた怪しい雰囲気の女が口を開いた。
「なーんて、冗・談・よ♪ こんなところに領主様が居るわけないわよねえ。さ、ギド宿へ行きましょう」
「……ごゆっくり」
門番はそれだけ言うと、道を空けて二人を通す。男女は町に入り、しばらく歩いた後チラリと門番を振り返りひそひそと話し始めた。
「余計だったか?」
「いいえ、いいんじゃないかしら。これで領主の館が警戒されるから、この町の数少ない冒険者や兵士はそっちに回されるでしょうね。本命はこの世界の人間にとってそれほど重要でない人物なのにね♪」
「チェイロと言ったか……そいつを殺せばこの世界は消える」
「そう。テンタシオはしくじったらしいからここは成功させるわよ、ユーベル様のために。とりあえずこの町におびき寄せるために盗賊を使って病気を流行らせたのだから、どこかにいるはずよ」
女は腰の袋から怪しげな粉を取り出し、振り撒く。
「異世界からの勇者はどうする?」
「しゃしゃり出てきたら殺す。見かけたら殺す。喋ったら殺す。息をしても殺すわ」
「いつも通りか。では、探そう」
男はチェイロの写真を胸元から取り出し、歩き出した――
◆ ◇ ◆
「さて、外に出たはいいけど……」
門から300mほど離れた場所まで来て改めて見るがこれは――
「来るときにも思いましたけど、荒野ですよねこれ」
そう、フィリアの言うとおり草木が殆どない荒野なのだ。身を隠す場所が無いから奇襲もできないし、逃げようにも視認できない位置まで一気に消えないとどこまでも追いかけて来るだろう。
……そんな魔物が、目の前にいる。
これでもかってくらいサソリの化け物で、体は綾香の胴体くらいはあり、尾を含めると3mくらいあるのではという大きさだ。
「目が合ったわ」
綾香が短くそう言うとコントローラーを変形させてレイピアに変えた。俺もささっと剣にし、攻撃に備えてフィリアに指示を出す。
「何でもいいから魔法で牽制してくれ、怯んだらあの厄介な尻尾を斬る。綾香は目を狙ってくれ」
「分かったわ」
「はい! では早速……<ライトニング>!」
星型ステッキを掲げて魔法を唱えると、ステッキから雷が迸る! 魔法はそのまま使えるみたいだな、体系が違うとかで使えなかったらどうしようと実はドキドキしていたりする。
バチバチ!
ギギギ……!
クリーンヒットし、少しのけぞるサソリ。いい傾向だ、フィリアの魔法発動と同時に横に回り込んでいたのでそのまま尾を斬り裂こうと剣を振る。
ビュオ!
「!? あぶね!」
ドス!
こっちを見ていないのに、的確に尾を俺に振り下ろしてきた。二度、三度攻撃して来たところで俺は一歩下がると、尾は攻撃を止めた。そこへ綾香がレイピアでサソリを正面から攻撃する。
「はあああ!」
鋭い突きがサソリの目を貫くため踏み込むと、サソリの尾が即座に反応し攻撃を仕掛けてきた。
「綾香下がれ!」
俺が叫ぶと、綾香は仕方なくといった感じでバックステップし攻撃を回避し、呟く。
「思ったより早いわね。前の世界なら今ので少なくとも片目は潰せたかな」
サソリはギチギチと嫌な音を立てながら尾をブラブラさせている。恐らくだが、"範囲内”に入らなければ尾で攻撃しては来ないタイプと見た。
「ど、どうしますか!」
フィリアが叫ぶと、サソリはかさかさとフィリアに向かって前進を始めた。
「き、来ましたよ!? あれ、これわたしヤバい状況!?」
「魔法で牽制しろ! 俺が先に行くから、綾香は続いてくれ!」
「任せて! ……尾がそっちに行くようにするんでしょ? 優しいんだから」
お見通しか……! まあそれはこの際どうでもいい。俺が再び斬りかかると、やはり尾は俺の方へ振り下ろしてくる。
<マスター少し右へ。それで地面に刺さると思います>
「急に来たなローラ。サンキュー!」
ズド!
少しだけ体をずらすと、直前まで立っていた場所に針が突き刺さる。それを引き抜こうとする前に真ん中から切断する。
ギギギギギ!
緑の体液を撒き散らしながら尾をぶん回すサソリ。緑の体液が地面に落ちると、じゅう、と焼ける音がした。
「酸かこれ!? 綾香、フィリア気をつけろ! 皮膚についたら焼けるかもしれない!」
「大丈夫! <シャープエッジ>……からのクイックシュート!」
ズブシュ!
素早い二段突きでサソリの目を潰す! 雄叫びを上げながらよろよろと明後日の方向へ走り始める。
「逃がすか! フィリア魔法だ!」
「は、はい! <メガフレイム>!」
ゴウ!
ギィイィ!?
「いやぁん!?」
巨大な火の玉がサソリを襲い、その体が炎に包まれ暴れ出す。激しく尾を振り回すのを掻い潜って俺は脳天に剣をぶっ刺した。あれ? 何か叫び声が聞こえた?
ギ!? ギギ……ギギ、ギ……
「やった?」
綾香が近づいて来たところで、サソリは動きを止めぐったりと尾が地面に倒れ込んだ。どうやらこれで討伐できたようだ。
「ふう……三人がかりでこれか、確かに強いな。複数で来られたらアウトだぞ」
「少しレベリングしとく? ここを任されているボスは流石に油断はしないんじゃない?」
「そうだな。第一世界を解放したのはもう伝わっているはずだし、無理してでも上げておこうか」
二人で頷くと、フィリアが近寄って来ないことに気付く。
「フィリア、どうしたん――」
俺が振り返ると、フィリアは地面にへたりこんでいた。いや、へたりこまずにはいられなかったのだろう。なんせフィリアの上着が溶けてあられもない姿になっていたからだ。
「ふえええん、避けきれませんでしたぁ!」
「エロいわね……」
ごくりと喉をならす綾香に呆れながら、俺はフィリアに上着をかけてやるのだった。チェイロにもまた会わないと行けないし、結構時間との戦いだなこれは。
というわけで初戦闘&怪しい影?
いつも読んでいただきありがとうございます!
【後書き劇場】
『駆け足?』
とりあえず想定している話を進めようかと
『8世界あるからあまり長くならない方がいいかもね。次は私の世界へ……!』
そうなるかな……?




