2-5 修羅の世界
<マスター、どうしますか?>
路地裏でがっくり体育座りをして考えている俺達にローラが無情の質問を投げかけてくる。とりあえずお金を稼がないといけないのだが――
「ギルドへ行くしかいないか。少なくとも宿賃くらいは今日中に稼がないとな」
「そうねー……でも。チェイロはどうするの? 主人公だし見てないといけないんじゃない?」
「そうしたいのは尤もなんだけど、なんせあの速さだぞ? 追いつけなかったし、どこに行ったか分からないから保留だな。先に飯と宿の確保が先だ」
そうと決まればギルドへ向かおうと、綾香とフィリアを連れて歩き出す。宿のことで頭がいっぱいでここまで街並みをよく見ていなかったけど、建物とか中華っぽい感じだった。
「へえ、何か中国映画とか連想させるなあ」
するとフィリアが指を立てて説明してくれる。
「ゼアト様の世界は武を強調しているらしいですから、地球の中国4000年的なものと通じているのかもしれませんね」
「多分その知識は関係ないと思うわ……でもチェイロが盗賊を撃退したのは頷けるかも」
武術に長けている人が多い、ということなら第一世界のシルトと同じく戦力として期待できるから楽に攻略できそうではある。ただ、ボスがどこに居るかだけど。
そんな話をしていると『義留怒』と書かれている看板が目に入る。
「”ギルド”でいいんでしょうか……?」
「……多分な。入ろうぜ」
暖簾をくぐると、これまた中国の酒場みたいな内装の建物で、赤い丸テーブルに酒を飲みながら雑談している人が大勢いた。酒場と兼業ってところかな。
壁に武器を立てかけているけど、青竜刀みたい武器とか棍に爪といった武器もあれば、普通にロッドもあった。
「にぎわっているわね」
「お金が稼げるといいんですけど……」
「すみません、受付はここで合っていますか?」
後ろで話す綾香とフィリアの会話を耳に入れながら尋ねると、チャイナ服を着た女の子がパタパタと裏から出てきて口を開く。
「お客さんネ! 何用カ? 冒険者登録でヨロシ?」
何て胡散臭い。だが、いちいちツッコンでいては時間が勿体ないので率直に物申す。こういう時はハッキリ言った方がいいからな。
「俺達三人、登録希望だ。どうすればいい?」
「了解したアル。この手形に利き手を乗せるヨロシ」
「じゃあ俺からな。こうか?」
手形に手を当てると、一瞬ボヤっと光が出てすぐに消えた。チャイナ服はすぐに横にある箱からカードと筆記用具を取り出して俺に渡す。
「後はここに名前を書くだけでOKヨ! ささ、お嬢さん達も早くするヨ」
「はーい」
「わかりました♪」
とりあえず三人ともカードを作成し、首から下げると酒を飲んでいたおっさんからヤジが飛んでくる。
「はっはあ! 金に困ってるなら坊主、その嬢ちゃん達を売った方が早いぜ? 上玉二人、遊んで一生暮らせるかもよ」
「ご忠告サンキュー。でも仲間を売るつもりはサラサラないんでね」
すると他の冒険者が笑いながら俺に言う。
「がははは! いい度胸だ、気にいったぜ。だが、気をつけろよ最近人買いがやけに女を集めているらしい。魔物にやられて連れて行かれました、なんて奴も居たらしい」
「それは怖いな……なんで女を集めているか知っているか?」
「さあな。人買いがゴロツキを雇って誘拐、なんて噂もまことしやかに流れている。町の中でも油断するなよ」
「ま、レベル上げで死んじまわないようになあ」
口は悪いが気はいい人達だったようで、俺は礼を言ってその場を離れ、ギルドの外に出ると綾香たちに話しかけた。
「……フィリアは前科があるから気を付けるように」
「何ですかいきなり!? ……わ、わかってますよう……離れないように気をつけますね」
「ま、今の私達なら余裕でしょ? なんせ前の世界でレベルはかなり上がってたわけだし」
「おお、だな。俺は32だった……から、な……?」
「どうしたの?」
カードを見て声色が小さくなる俺を不思議がり、覗き込んでくる綾香だが、すぐに自分のカードを確認し始める。
「嘘……!?」
「どうしたんです?」
「お前も見て見ろ、フィリア……」
「??」
なんですかー? と、言わんばかりの表情でカード見ると、フィリアも開いた口が塞がらない状態になっていた。
<どうやら前の世界と魔物の強さの概念が違うようですね>
「むう……」
ちなみに俺のレベルは32だったけど、今は何とレベル8……スキルはそのまま持っているんだけど、この世界での俺の強さはレベル8程度なようだとローラは言う。何だかんだで武神の世界ってことだろうか……
「仕方ない、とりあえず魔物と戦ってみよう。さっきの門番さんが見える位置くらいで戦えるといいけど……」
「わたしの魔法はそのままみたいですから、いざとなったら魔法で一掃しましょう!」
張りきって答えるフィリアに不安しかなかった――
◆ ◇ ◆
「ふう……間に合いましたね」
「すまない、使用人が大げさに伝えたんだね。でもおかげで楽になったよ」
「い、いえいえ……領主様のご依頼ならいつでも飛んできますよ!」
「はは、助かるよ。若くして領を受け継いだけど、こんなに病弱ではね……」
「領主様は頑張られていますよ! 自信を持ってください!」
「ありがとう。……そうだチェイロ、専属の医者になってもらえないかだけど――」
領主の話を聞いた後、少しだけ困ったように微笑み、チェイロは言った。
「申し訳ありません、領主様。この界隈は医者があまり多くないですし、自分言うのもお恥ずかしいですが、腕前がある方も数えるほどしかいません。なので、他の町などにも出張ることを考えると専属になるのは……」
「しかし今のご時世、女の子の一人歩きは危険だ。君にもしものことがあったら私はどうすればいい……」
領主が頭を抱えると、チェイロはニコッと微笑んで言い放つ。
「大丈夫です。私は負けませんから! それではそろそろ失礼します。また何か用がございましたら呼びつけてくださいませ!」
そう言って席を立ち、チェイロは一礼をして領主の屋敷を後にした。
「さて、ハル達大丈夫かな? 帰る前に一応声をかけておこうっと」
「ダメでしたか」
チェイロが出て行った後の部屋で、執事のような初老の男性が入ってくると、領主は顔を上げて答える。
「ああ……こうなったら手段は選んでいられない……」
回復魔王が終わったので、こちらを更新していきますね!
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【後書き劇場MK2】
『領主、怪しいわね……』
とみせかけて……?
『どうかしらね……?』




