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「蒸気街のパン屋と御曹司」蒸気機関が発達した世界。その下層街にあるパン屋ですが、敵企業の御曹司が毎日パンを食べに来ます  作者: かあまる01


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第4章 1話 蒸気都市の令嬢

 蒸気機関が発達した街、グラン・ロア


 下層区のパン屋で暮らす機械いじり好きの少女エマは、じいちゃんと穏やかな毎日を送っていました。


 しかしある日、「グラン・ロア再生計画」が動き出し、ルークの婚約者を名乗る少女が突然現れます。


 揺れ動くエマとルークの想い。そして、街の未来を左右する「グラン・ロア再生計画」に隠された真実とは。


 恋愛、モノづくり、そして蒸気あふれる下町の空気感を楽しんでいただけたら嬉しいです。


 感想・ブックマーク・評価をいただけると、とても励みになります。よろしくお願いいたします。


※本作は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しています。

 朝の陽光が、大きな窓から差し込んでいた。

 磨き上げられた白いテーブルの上には、湯気の立つ紅茶と焼き菓子が並んでいる。


 ここはグラン・ロア上層区。

 蒸気都市を見下ろす丘の上に建つ新築の豪奢な屋敷で、一人の少女が優雅な朝を過ごしていた。


 アリシア・フォン・ベルク。

 大都市グラン・ロアを支配するレイウッド公の令嬢であり、その美貌と叡智を誰もが認める才女。



 淡い銀色の髪を揺らしながら、アリシアはテーブルに置かれた新聞へ目を向ける。その見出しは、都市中で話題になっている事件だった。


 『巨大オートマタ暴走』

 紙面には、崩れた建物と黒煙を上げる巨大オートマタの写真が大きく載せられている。


 事件が起きたのは下層区。蒸気都市グラン・ロアの発展を支える労働者たちが暮らす区域だ。アリシアは記事を読み進めながら、小さく眉をひそめる。


「下層区で、こんなことが起きていたなんて」

 その声に嫌悪はなく、純粋な憂いが滲んでいた。彼女は窓の外、事件が起きた方向へ目を向ける。その視線の先にある下層区には無数の煙突が並び、蒸気が空を覆っている。


 上層区の人々にとってはグラン・ロア繁栄の象徴だが、その蒸気の下には貧困や事故に苦しむ人々がいる。

「未だにあの人たちは、危険な暮らしを続けているのね」


 記事を閉じると脳裏に浮かぶのは父の言葉だった。レイウッド・フォン・ベルク公爵。政府高官にして、グラン・ロアを実質的に支配する男。


『グラン・ロアは生まれ変わらなければならない。老朽化した下層区を再開発し、より効率的で安全な都市へ変える。それがグラン・ロア再生計画だ』

 

 アリシアの頭の中で様々な思考が巡り、少し頭が疲れてきた。脳が糖分を欲している。

「今日はあのパンはあるのかしら?」


 アリシアが給仕に伝えると、配膳ワゴンが運ばれてくる。ワゴンに乗っているのは、ふかふかに温められたパン。ここに来てから、アリシアはこのパンがすっかりお気に入りになっていた。


「本当に、この『蒸気リンゴパイ』はとても美味しいわ。グラン・ロアにこんなに美味しいパンがあるなんて。このパンは何処で売ってるのかしら」


 アリシアに問われた給仕達は顔を見合わせる。このパンは偶然、下層区の名もしれぬパン屋で見つけたもの。お嬢様に正直に言ってよいものかと悩む。


「これは数が少なく、中々手に入らないものでございます」

「そうなのね」

 アリシアは少しだけ、残念といった顔をする。


 そのとき、奥の父のアトリエの扉が開く音がして、扉の向こうの廊下からガウン一枚の若い女性が出てきた。父の趣味である絵画のモデルだ。


 その姿を見てとったアリシアは嫌悪感を隠そうともせず、端正な顔を歪ませる。

「お父様ったら、お母様が亡くなってからは昼間からあのようなことを……」

「お嬢様、あの女性達とお父様は決してそのような関係ではございません」

「当たり前です!」

 弁明とも取られかねない給仕の言葉をぴしゃりと遮る。


 再びアリシアはテーブルに置かれた『グラン・ロア再生計画』の資料に目を通す。資料は再生計画のために有力企業との連携、関係強化を進める要項が並んでおり、アリシアはその一枚、有力企業の御曹司の資料を手に取る。


 周囲で進められている私と御曹司との政略結婚。敬愛していたお母様より常々「国のために生きなさい」と育てられたアリシアにとって、結婚とはしょせんは政治的契約としか思えなかった。


 アリシアは御曹司の写真を見ながら呟く。


「ルーク・アシュフォード。この方が私の婚約者なのね」


 「蒸気街のパン屋と御曹司」第4章が始まりました! ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


 この作品は、月・水・金曜日の更新を予定しています。


 少しでも楽しんでいただけていたら、書いていて良かったと感じます。


 評価・感想・ブックマークなどをいただけると、とても励みになります。


 これからもよろしくお願いいたします!

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