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「蒸気街のパン屋と御曹司」蒸気機関が発達した世界。その下層街にあるパン屋ですが、敵企業の御曹司が毎日パンを食べに来ます  作者: かあまる01


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第3章 第8話 暴走するオートマタ

 蒸気機関が発達した世界、機械いじりが好きな少女エマは、とあることから古いオートマタ『ノア』と出会います。

 機械との向き合い方でルークとの関係はぎくしゃくしてしまい、やがて街全体を巻き込む大事件に発展してしまいます。

 機械いじり好きな少女が、パン屋を守るために奮闘するスチームパンク作品です。

 恋愛、モノ作り、下町の空気感を楽しんでいただければ嬉しいです。

 感想・ブックマーク・評価、とても励みになります。

よろしくお願いします。

※この作品は小説家になろう、カクヨムで同時掲載しております。

 ノアを探すため、エマたちがグラン・ロアの街に戻ったとき、遠くから悲鳴が聞こえてきた。

「逃げろ! オートマタが暴れてる!」

 広場の方角から声が聞こえる。エマとルークは顔を見合わせて、広場まで駆けつける。


 二人が広場へ到着すると、そこでは荷運び用オートマタが荷車を投げ飛ばし、清掃用オートマタが石畳を掘り返している、。人々はただ必死に逃げ惑うばかりだ。


 しかも前回と違い暴走しているオートマタの数が圧倒的だった。

「こんなのって……!」

 エマはその光景に息を呑んだ。

 街のあちこちから機械音と悲鳴が響いている。

 まるで全ての旧型オートマタが一斉に暴走したかのようだった。


 工房へ戻ったエマはじいちゃんに状況を伝えると、じいちゃんは苦々しい顔で頷いた。

「とうとう感情模倣機関の寿命が来たか……あれは人の感情や記憶を再現するための特殊な機関じゃ。だが永久には動かん。長い年月による摩耗、劣化。そしていずれ限界が来て機関の一部が壊れると、感情や理性の機能から失われていく」

 話を聞いて二人の背筋が冷えた。

「じゃあ暴走は……」

「人間で言えば記憶や人格が崩れていくようなもの、わしの責任じゃ」

 じいちゃんは悔しそうに拳を握る。


 その時、外から大きな爆発音が響いて窓ガラスが震える。今にも割れそうだ。

 エマたちが飛び出すと、街は混乱の渦に包まれていた。暴走したオートマタの群れがこちらに向かってくる。逃げる群衆の数に警備隊だけでは到底対応しきれない。

「きゃあっ!」

 エマが声の方を見ると少女が転んでいた。そこに暴走した作業用オートマタが迫ってくる。

「危ない! 立って!」

 エマが飛び出すが、遠くて間に合わない!


 少女にオートマタが迫るその瞬間だった。

 ばんっ! と空中で何かが炸裂した次の瞬間、巨大な網が広がる。それは粘着性のある特殊ネットで、オートマタを包み込みその場へ縫い付けた。

「相変わらず無茶するわね」

 聞き覚えのある声だった。

 建物の上から飛び降りてきた女性が笑う。

 長い黒髪に、工具だらけのベルト。

「セレナさん!」

「ここは任せなさい!」

 そして腰の発射装置を構え、次々とオートマタ達を粘着ネットで狙い撃つと、セレナの正確な射撃で暴走するオートマタが次々と行動を封じられていく。


 さらに別方向からは装甲蒸気車両が現れる。

「間に合ったか。よし、負傷者を優先しろ!」

 ルークが呼んだロイヤル・ギアの警備隊が負傷した住民の救助にあたる。

 ルーク自身も子供を抱えて安全地帯へ避難させる。


 だが、残っているオートマタたちの行動に異変が現れ始めた。暴れていた機体が突然動きを止めたかと思うと、次は街の上層部へと歩き始める。それも一体ではない。何十体、ほぼ全ての旧型オートマタがまるで何かに呼ばれているように歩いている。

「どこへ向かってるの?」

 オートマタの向かう方向を見て、ルークの顔色が変わった。

「あの方向は……中央格納庫だ」

 エマは息を呑む。そこに何があるの?

「急ぐぞ!」

 ルークが走り出し、エマも後に続く。


 中央格納庫の地下深くにある、図面には記されていない巨大空間。そこへたどり着いた旧型オートマタが集結していた。

 まるで墓場へ帰るように、中央に横たわる巨大な影へ近づいていく。それはじいちゃんにも知らされていなかった機械人形開発計画の最後の遺産、未完成の巨大オートマタ。


 旧型オートマタたちは自ら残されたエネルギーを巨大オートマタに送り込む。

 巨大オートマタに光が流れ、蒸気が噴き出す。役目を終えた機体は次々と倒れていった。

 最後の一体が停止した時、地下空間全体が大きく震える。巨大な指が動き、腕が段々と持ち上がる。やがて巨人の瞳に赤い光が灯り、起動音が鳴ると数十年の眠りから目覚めるように、鋼鉄の怪物が立ち上がった。

 

 中央格納庫に向かっていたエマ達は、中央格納庫の方から警報が鳴り響くのを聞いた。

 そして、巨大な格納庫の壁が軋むのが見えた。これは人力ではない。とてつもなく大きな力だ。やがて轟音が街中へ響き渡り、格納庫の扉は完全に破壊された。


 そこには夕日を背に立つ鋼鉄の巨人がいた。


 そして巨人はゆっくりと顔を下層街の方向へ向けた。まるで何かを求めるように、エマたちの住む下層街へ向かって歩き始めた。


 第3章、始まりました!ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回は月、水、金曜日に更新する予定です。

 少しでも楽しんでいただけたなら、書いてて良かったです。


評価・感想・ブックマーク、など頂けたら嬉しいす。

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