堅実な対価と今夜の晩餐
地下水路の悪臭から解放され、俺たちは無事に冒険者ギルドへと帰還した。
夕方に差し掛かったギルド内は、一日の仕事を終えて酒をあおる冒険者たちの熱気でさらに騒がしくなっている。
アル「ふぅ……やっと終わったぜ。ドブの臭いが染み付く前に、さっさと報告を済ませよう」
セシル「そうだね。エリーナさん、依頼の『発光苔』、指定された量を確かに採取してきたよ。検品と報酬の支払いをお願いする」
セシルがカウンターにずっしりと重い麻袋を置くと、エリーナは手際よく中身を確認し、満足そうに頷いた。
エリーナ「あら、おかえりなさい。……ええ、量も質も完璧ね。Dランク依頼を無理して受けるより、身の丈に合った手堅い仕事を選ぶのは良い判断だと思うわ。はい、報酬の大銅貨15枚よ」
エリーナがカウンターに積み上げた大銅貨の輝きに、俺たちは思わず息を呑んだ。
たかが雑用かもしれないが、確かな労働の対価だ。
ザイン「おお……神よ、この輝かしい光! これぞまさに私たちが成し遂げた功徳への正当なる評価ですねぇ! さあリーダー、私の神聖なる取り分を……」
ガンテツ「ガハハ! ヤブ医者はすっこんでろ! この金は明日のための大事な命綱だ! だがこれで今日は水みたいなスープじゃなく、肉とエールにありつけるぞ!」
アル「ああ、今日は『赤猫亭』でまともな飯を食おう。……セシル、報酬の確認はいいか? 変な名目で引かれたりしてないよな?」
セシル「うん、契約通り全額支払われているよ。代読料の天引きもない。これで、ようやく床じゃなくてベッドで寝る計算が立つね」
サイドストーリー
俺たちが報酬を受け取っている横で、ミラは素材買取カウンターの強面な査定係を相手に交渉を始めていた。
ミラ「おっさん、このガラスの小瓶、水路で拾って綺麗に洗ってきたんだ。傷もないし、薬屋に卸せるだろ? 買い取ってよ」
査定係「チッ、こんなガラクタ……まあ、欠けてはねぇから銅貨1枚だな。で、そのネズミの尻尾3本はどうするんだ? 10本で銅貨3枚の規定だぞ」
ミラ「まいど。尻尾の方はまだ3本だから、アタシのポケットでキープしとくよ。腐らせないように塩でも振っとくさ」
ザイン「おやおや、ミラさん。その不浄なる尻尾と小銭を同じポケットに入れるのはいかがなものかと。私が浄財として、その銅貨を一時的にお預かりしましょうか?」
ミラ「寝言は寝て言え。アンタの腹の中に消えるくらいなら、ネズミに噛まれた方がマシだよ。この銅貨1枚は、アタシの大事な取り分さ」
ミラの抜け目のなさに、アルは呆れながらも感心して笑った。




