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冒険者アル  作者: テステス
6章 ロマン
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決死の乱打

「左膝の駆動音が狂ってる! あそこを潰せば、あのクソ重い戦斧も振り回せなくなる!」


ミラの叫びを聞き、アルは瞬時に戦術を切り替えた。

あの異常な硬度を誇る装甲に対し、槍の穂先で『突き』を放っても滑るか弾かれるだけだ。しかし、内部のギアや駆動系が経年劣化で脆くなっているのなら、装甲の上からでも衝撃が浸透する『打撃』が有効なはずだ。


アル「よし!石突を叩き込んでやる!」


ガンテツ「ガハハ! ぶっ叩いて中身を揺らすんなら、わしの特注ハンマーの右に出るもんはねえぞ!」


セシル「風よ! 二人の背中を押すよ、一気にいけ!」


セシルの支援魔法が前衛二人の身体を軽くする。

アルは槍を反転させ、重い石突を前方に構えた。


メイド長が再び巨大な戦斧を振り上げ、俺たちを両断せんと凄まじい踏み込みを見せた。左足を踏み出した瞬間、ミラの言った通り『ギガッ』という嫌な軋み音が室内に響く。


「させるかァッ!!」


ガンテツが真正面から突進し、半ば砕けかけた大盾を斜めに突き出して、戦斧の柄を強引に受け流した。激しい火花が散り、ガンテツの巨体が圧し負けそうになるが、気合で耐え抜く。

そのほんの一瞬の硬直。大きく開いたメイド長の左側面に、アルが滑り込んだ。


アル「ここだッ!!」


アルは腰の捻りを最大限に活かし、鈍器と化した槍の石突をメイド長の左膝の関節部へ、フルスイングで叩き込んだ。


『ゴガァンッ!!!』


分厚い装甲を打つ鈍い金属音が響く。装甲自体は砕けなかったが、打撃のすさまじい衝撃波がそのまま装甲の内部へと浸透していく。

中から『バキィッ!』というギアが欠けるような不吉な音が鳴り、メイド長の巨体が大きくグラついた。


ガンテツ「とどめだ、鉄クズゥ!!」


アルと入れ替わるように踏み込んだガンテツが、全身のバネを使って特注ハンマーを振り下ろす。狙うはアルが打撃を与え、限界まで負荷がかかっている左膝の同じ箇所。


『ガガギィィィィンッ!!!』


制御室全体を揺るがすほどの轟音。

メイド長の左膝の関節カバーがひしゃげ、内部から黒い煙と魔導オイルがプシュゥゥッと激しく噴き出した。


『ギ、ギギ……姿勢制御、エラー……ッ』


メイド長が体勢を立て直そうと右足に体重を乗せるが、打撃によって内部機構がひどく損傷した左膝がガクンと折れ曲がり、その場に膝をつきそうになる。

完全に破壊して足を切断するまでには至らなかったものの、その巨体を支えるバランスは大きく崩れていた。


アル「引け、ガンテツ!」


深追いはせず、前衛二人は即座にバックステップで距離を取る。

メイド長は戦斧を杖のように床に突き立て、無理やり立ち上がった。赤い双眸は依然として俺たちを睨みつけているが、先ほどまでのような「目で追えないほどの異常な突進速度」は完全に失われていた。一歩足を踏み出すごとに、左膝から痛々しい摩擦音と黒煙が上がっている。


アル「……よし! 大幅に機動力を削いだぞ。これであの異常な踏み込みはもうできない!」


ミラ「ナイスだ、アル、ガンテツ! これならアタシたちのスピードで十分翻弄できるよ!」


フィオ「すごいすごい! ボクのお歌も、まだまだ続くよー!」


無敵に思えた指揮官機に、ついに明確な傷跡を刻み込んだ。

足回りの機動力を奪われたメイド長。絶望的だった戦況の天秤が、今、確かな反撃の音を立ててこちらへ傾き始めていた。

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