昼下がりの休息と、見えない敵の総数
分厚いスライド扉のロックを幾重にも確認した後、俺たちは極度の緊張から解放され、そのまま制御室の床で数時間の深い仮眠を取った。
外の通路からは相変わらずオートマタたちの無機質な機械音が響いているが、この絶対安全圏にいる限り脅威ではない。
アル「……よし、まずは昼飯にして、次の作戦を立てよう」
アルの言葉で、張り詰めていた空気がふわりと緩む。
それぞれが背嚢から干し肉や堅焼きビスケットを取り出し、水袋を回し飲みしながら、無傷での作戦完遂を労い合った。
ガンテツ「ガハハ、美味え! しかしフィオよ、あの途中の激しい歌はなんだ? 足並みを揃えるどころか、危うくわしまで前に飛び出しちまうところだったわい!」
フィオ「だってさあ!オートマタの動きが変だったから、ボクの歌でガンテツたちのテンションを上げちゃおうと思って! ノリノリでぶっ飛ばした方がやりやすいでしょ?」
ザイン「ええ、フィオ殿の機転には大いに助けられました。メイド人形風情が恋人たちの静寂を乱すなどという不条理……我が信仰の光が断じて許しはしません!」
セシル「……ザインのあの尋常じゃないバリアの硬さ、信仰心っていうか、ただの個人的なメイドへの執念だよね」
ミラ「アタシも壁越しにザインの怒声が聞こえてきて、工作しながら思わず笑っちまったくらいさ」
地下遺跡の最前線とは思えない軽口が飛び交う。もっとも過酷な防衛と暗殺を潜り抜けたことで、パーティの結束と信頼はかつてないほどに高まっていた。
アル「ともかく、作戦は成功だ。ミラ、格納庫の状況はどうだった?」
アルが話を振ると、ミラは干し肉を飲み込み、床に描かれた見取り図へとアーマーピックの先端を向けた。
ミラ「アタシがぶっ壊したのが46機。だけど、格納庫は薄暗くて正確な数は把握できなかった。ただ、奥にはまだ見渡す限りの未稼働の予備が並んでたよ。少なくとも数十機は下らないね。それと……一番奥には、ワイヤーの罠とは別枠っぽい、巨大な戦斧モップを持った『メイド長』が控えてる」
セシル「なるほど。今この扉の向こうをうろついている稼働中の15機を合わせると、メイド長を含めてまだ相当な数が残っているってことだね」
正確な数が分からないという事実に、一瞬だけ場が静まり返る。
元々どれだけのオートマタが配備されていたのか。古代の王族がどれほどこの宝物庫の防衛に狂信的だったかが窺える。
アル「……だけど、敵に『限界』がある。無限に補充されるかもしれないという絶望感はない。俺たちの物資と体力が続く限り削りきればいい」
ガンテツ「ガハハ! 違いねえ! 」
ザイン「その通りです。全てはあの不条理なるメイド長をこの手で浄化するための布石。何十機いようとも、必ずや粉砕してみせましょう!」
未知の恐怖は、すでにただの「こなすべき作業」へと変わっていた。
正確な数は分からずとも、終わりは必ず来る。俺たちは十分な昼食を取り、次なる殲滅戦に向けた準備を進めた。




