最終曲『カランドラの大宴会』と、暗殺者の帰還
フィオのリュートが最も激しく、そして楽しげな音色を奏で始めた。最終曲、第三曲目『カランドラの大宴会』だ。
フィオ「♪〜飲めや歌えや大宴会! ジョッキを掲げて、朝まで騒いでぶっ倒れろー!」
パーティで一番大きな声が出るというその歌は、文字通り地下遺跡を揺るがすほどの音量となって通路に響き渡る。
一方、格納エリアのミラは、再び微かな光を取り戻し始めた「連動警報ワイヤー」を見つめ、短く息を吐いた。
奥にはまだ数十機の未起動個体が並んでおり、一番奥には一回り巨大な影――戦斧を持つ「メイド長」らしき姿も見える。あと数体ならいけるかもしれない。だが、盗賊の勘が「ここで引け」と告げていた。
ミラ「……欲張らないのが長生きの秘訣さ。46機も潰せりゃ上出来だろ」
手際よくアーマーピックを腰に収めると、ミラは音もなく跳躍し、飛び降りてきた通気ダクトへと身体を滑り込ませた。
制御室の前では、フィオの底抜けに明るい宴会ソングに合わせ、15機のオートマタが狂ったような猛攻を仕掛けていた。だが、前衛の集中力は全く途切れていない。
トンッ、と制御室の天井裏から軽い着地音が響いた。
ミラ「戻ったよ! 46機、きっちりスクラップにしてきた!」
アル「よくやった! ガンテツ、ザイン! 奴らを押し返して一気に扉を閉めるぞ!」
ガンテツ「ガハハ! 待ってましただぜ! そら、どきやがれ鉄クズども!」
ガンテツが大盾を構えて突進し、入り口に群がっていた数体を豪快に弾き飛ばす。
ザイン「不条理なる者たちよ、これにてお別れです! 神聖なる光よ、弾け飛べ!」
ザインが防壁の魔力を一気に解放して閃光を放ち、敵の視覚センサーを焼く。その一瞬の隙に、アルとガンテツが制御室へと飛び込んだ。
ミラ「閉めるよ!」
ミラの掛け声と共に、重厚なスライド扉が勢いよく閉ざされ――ガシャン! と、分厚いロックが降りた。
直後、扉の向こうからドンドンと壁を叩く無機質な音が響き始めるが、ここは絶対安全なセーフルームだ。
静寂を取り戻した制御室で、俺たちはその場にへたり込んだ。
アル「……はぁ、はぁ。全員、怪我はないか?」
セシル「僕たちは無傷だよ。ミラも大戦果だね」
ミラ「ああ。マナ・ポーションを1本使っちまったけど、その価値は十分にあったはずさ。格納庫の連中は、ごっそり減ったからね」
ザイン「おお……神よ。我々の無謀なる挑戦を見守りいただき、感謝いたします。この防壁、一歩も引くことはありませんでした」
フィオ「どうだい!ボクの歌は!バッチリだったでしょ!」
誰一人欠けることなく、被弾すらゼロ。俺たちの無謀なゲリラ作戦は、完璧な成功を収めた。
これで、絶望的な防衛システムに、致命的なヒビをいれられたはずだ。
俺たちは水袋を回し飲みしながら、確かな勝利の余韻と、次の戦いに向けへの英気を養った。




