見えない兵站と防衛線
いくら倒しても通路の機械音が衰えない異常事態に、アルは戦術の一時中断を決断した。闇雲に引きこもり戦術を続けても、こちらの消耗が激しくなるだけだ。敵の「カラクリ」を見極める必要がある。
アル「ミラ、すまないが隠密偵察を頼めるか? 奴らがどこから湧き出しているのか、その出処を突き止めたい」
ミラ「任せな。こういう時こそアタシの出番さ」
ミラは不敵に笑うと、制御室の天井付近にある通気ダクトの格子を手際よく外し、音もなくその闇へと這い上がっていった。
残された俺たちは武器を構えて扉を警戒しつつ、息を潜めて彼女の帰りを待った。
約30分後、ダクトからするりとミラが飛び降りて着地した。その表情は、いつになく真剣だった。
ミラ「……戻ったよ。ダクトを伝って、展示室の奥まで覗いてきた。分かったことが二つある」
ミラはチョークを手に取り、床の見取り図のさらに奥に新しい四角を描き加えた。
ミラ「まず、あのエリアで動いているオートマタの数は、『15機』。メイド型と給仕型が入り乱れて厳重に警備してる。そしてもう一つ……展示室の奥に、奴らの『保管庫』があるのを見つけた。そこに、まだ動いていない未起動のオートマタが、おぞましい数でズラリと直立不動で並べられてたよ」
「保管庫……」と、アルは呟いた。やはり、あの中に予備が眠っていたのだ。
話を聞いていたセシルが、顎に手を当ててミラの描いた図面を見つめ、一つの仮説を口にした。
セシル「……なるほど。ミラ、その格納エリアから新しい人形が出てくる瞬間は見たかい?」
ミラ「ああ。アタシたちが通路で1体壊すごとに、奥の格納エリアのハッチがガシャンと開いて、新しいやつが1体、目を光らせて警備に加わっていくのが見えたよ」
セシル「確信した。あのフロアの防衛システムは、『稼働数が15機以下になると、格納エリアから自動的に新しい個体が補充される』という仕組みになっているんだ。だから、私たちが通路でいくら各個撃破しても、総数が15機未満になった瞬間に奥から補填されて、実質的に敵が無限に湧いているように見えていたんだね」
ガンテツ「ゲッ……じゃあ何か? わしらがここで何十体スクラップにしようが、あの格納庫のストックが切れるか、システムそのものを止めねえ限り、永遠に15機の鉄人形を相手にし続けなきゃならねえってことか?」
ザイン「なんと不条理な……。古代の王族は、どれほど強欲な泥棒避けを設置していれば気が済むのですか」
敵の防衛ロジックは見えた。しかし、それは同時に、今の「扉に引きこもるヒット&アウェイ」だけでは絶対にこのフロアを制圧できないという非情な現実を突きつけていた。宝を回収するためには、あの15機の防衛線を食い破り、補充の元凶である格納エリア、あるいはシステムそのものを叩く必要があった。
アル「……いや、仕組みが分かれば対策の立てようはある。補充される前に15機を上回る速度で殲滅するか、あるいは格納エリアを直接封鎖するか…」
アルは槍の柄を強く握り直し、次なる作戦を見据えて不敵に目を細めた。




