減らない足音
「ガンッ! ガンッ!」と分厚い金属扉を叩く音が響く制御室の中で、俺たちは車座になり、水袋を回し飲みしながら先ほどの第一波の感触を確かめ合っていた。
アル「……どうだ、ガンテツ。新調したハンマーの手応えは」
ガンテツ「ガハハ、最高だぜ。装甲の厚さはシールド・ゴーレムの半分以下だ。雷で動きが止まってさえいりゃあ、豆腐を叩き潰すのと変わらん」
ミラも愛用のアーマーピックの刃先についたオイルを拭き取りながら頷く。
ミラ「関節や駆動部も丸見えだったよ。ただ、人間みたいに急所を刺しても一撃じゃ止まらない。完全に動力の管を引きちぎるか、頭部をごっそり潰さないとダメだね」
セシル「雷魔法の効き目も確認できた。でも、足止めもせいぜい3秒から5秒。その間に前衛が確実に仕留めきれないと、反撃をもらうリスクがある」
アルは自分自身の槍の石突を見つめた。オーク・チーフテンを沈めたその重みは、機械仕掛けの人形に対しても十二分に通用していた。
アル「……結論としては、十分やれる。俺たちの火力なら、数さえ絞れば絶対に負けない」
扉の外の喧騒が、時間と共に少しずつ遠ざかり始めていた。学習機能がないのか、あるいは侵入者の姿を見失ったと判断したのか、オートマタたちが再び元の「巡回ルート」へと戻り始めたのだ。
アル「よし。外の警戒が薄れた。作戦は予定通りだ。敵が扉の前を通りかかるのを待ち、少数の時だけ扉を開けて雷撃からの物理粉砕。そして即座に扉を閉める。これを繰り返すぞ」
ザイン「……なんと泥臭く、冒険のロマンに欠ける不条理な戦術でしょう。ですが、命と神の加護を無駄にしないという意味では、これ以上ないほど完璧です」
――それから、数時間が経過した。
俺たちはひたすらに、感情を排した「作業」を繰り返していた。
足音が近づく。
ミラがロックを外し、扉を開ける。
セシルの雷撃が閃き、アルとガンテツが飛び出して麻痺したオートマタを秒殺する。
すぐさまミラが扉を閉めてロックする。
倒しては休み、休んでは倒す。遠征物資は潤沢にあり、魔力が尽きかければ高級なマナ・ポーションで回復した。順調なゲリラ戦だった。
『ガシャン……!』
ガンテツのハンマーが、通算で「十二体目」となるメイド型オートマタの頭部をひしゃげさせ、アルが素早く制御室へ飛び込んでロックをかけた。
アル「……ふぅ。よし、これで十二体だ」
確かな手応えを感じていた俺だったが、扉に耳を当てていたミラが、険しい表情で振り返った。
ミラ「……アル。おかしいよ。アタシたちが最初に覗き見た時は、この通路を巡回しているのはせいぜい5、6体だった。でも……」
ミラが指差した扉の向こうからは、相変わらず無数の機械音が鳴り響いていた。
『……ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン……!』
ガンテツ「おいおい、嘘だろ? 通路にあふれかえってる音じゃねえか。十二体もブッ壊したのに、数が減ってる気がしねえぞ」
セシル「……おそらく、どこかから『補充』されているんだ。もしくは、この第2層の規模が私たちの想定を遥かに超えていて、数十……下手すれば百体近いオートマタが配備されているのかもしれない」
その言葉に、部屋の空気が一気に重くなった。
俺たちの作戦は完璧に機能している。だが、それは「敵の数に限りがある」という前提のもとに成り立っていた。もし相手が無限に近い数で補充されてくるのだとすれば、いずれこちらの集中力が切れるか、潤沢なはずのポーションや物資が先に底を突いてしまう。
ザイン「……不条理です。これではまるで、海に向かって水をかき出しているようなものではありませんか」
フィオ「ボ、ボク、ちょっと喉が渇いてきちゃったかも……」
アルは静かに息を吐き、壁の見取り図を睨みつけた。
安全圏での引きこもり戦術だけでは、宝には辿り着けない。戦術の根本的な見直しが必要だった。




