制御室の夜営と、鋼を砕くゲリラ戦
荒野の三日間の行軍による疲労を抜くため、俺たちは潤沢な遠征物資を消費し、安全が保障されたこの制御室で一晩の十分な休息を取った。
――翌朝。
魔法のランタンの明かりの下で、俺たちは展示室の宝を根こそぎ奪うための「殲滅戦」の最終確認を行っていた。
アル「展示室の宝を持ち帰るための条件は、この第2層にいるオートマタの『完全なる全滅』だ。……だが、フロア全体に何体のオートマタが配備されているのか、正確な数は把握できていない。一度の突撃で全てを破壊しようと焦れば、あっという間に数の暴力で押し潰される」
アルは床に描いた見取り図の「制御室」をトントンと指先で叩いた。
アル「だから、この絶対安全なセーフルームを最大限に利用する。扉の前を通過する巡回部隊を奇襲し、確実に頭数を減らす。もし敵の増援が押し寄せてきて危険だと判断したら、決して無理はせず、すぐさまこの制御室へ撤退してロックをかける」
セシル「ヒット&アウェイ……ゲリラ戦だね。扉を開けて叩き、囲まれる前に扉を閉めて魔力や体力を回復する。それを敵がゼロになるまで、何度でも繰り返すってわけだ」
ミラ「いやらしい戦法だけど、生存率と確実性を考えればこれ以上ない極悪な作戦だね。アタシは好きだよ、そういうの」
泥臭くても構わない。命を落とさず、宝を掴み取るための最善手を打つ。
新兵器の威力を試す絶好の機会であり、パーティの士気は静かに、だが確実に燃え上がっていた。
アル「陣形はガンテツを先頭にした楔形だ。……来るぞ、音を聞け」
『……ガシャン、ガシャン、ガシャン』
無機質な足音が、分厚い扉のすぐ向こう側を通り過ぎていく。メイド型と給仕型のオートマタが3体。
足音が扉の前を抜け、背中を見せたその瞬間――アルの合図と共に、ミラがスライド扉のロックを解除して勢いよく開け放った。
「――シィッ!」
扉が開いた瞬間の僅かな隙間から、セシルが練り上げていた雷撃魔法を無詠唱で放つ。
青白い閃光が狭い通路に瞬き、最後尾を歩いていたオートマタの金属装甲に直撃した。
『――ピガッ、ガガ……ッ!』
セシルの読み通り、雷の魔力は金属の身体を伝い、内部の魔導回路を一時的にショートさせた。火花を散らしてオートマタたちの動きが完全に停止する。
アル「今だ! 叩き潰せ!」
ガンテツ「ガハハハハ!! スクラップの時間だァッ!」
ガンテツが突進し、ゴードンの店で誂えた特注のウォーハンマーをフルスイングで叩き込む。
鈍い轟音。金属がひしゃげ、部品が弾け飛ぶ。かつては剣の斬撃を弾き返した硬質な装甲が、まるで薄い木箱のように紙屑のごとく粉砕された。
続いてアルが槍を踏み込ませ、石突に仕込んだ重い錘で給仕型オートマタの膝関節を強打する。姿勢を崩したところへ、ミラがアーマーピックを装甲の隙間――首の駆動部へと正確に突き立て、動力伝達のケーブルを引きちぎった。
ザイン「おお、神よ! 素晴らしき粉砕の音色です!」
フィオ「♪~ガラクタの山が、いっちょあがりー!」
あっという間に3体の巡回部隊をただの鉄クズに変えた俺たちだったが、戦闘の騒音がフロアに響き渡ったことで、奥の展示室の方からけたたましい警報音のような機械音が鳴り響いた。
『ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン!』
アル「……ッ、奥から十数体は来るぞ! 欲張るな、第一波はここまでだ! 全員、制御室へ引け!」
アルの的確な指示で、前衛組は一切の未練なく反転。全員が制御室へ飛び込んだのを確認したミラが、即座にスライド扉を閉めて重いロックを降ろした。
直後、扉の向こう側から「ガンッ! ガンッ!」と無数のオートマタが壁を叩く音が響くが、分厚い金属扉はビクともしない。
アル「……はぁ、はぁ。よし、まずは3体。新武器の威力も、雷撃の麻痺も完璧に通用する」
ガンテツ「ガハハ、こりゃあいい! どんなに数が多かろうが、この扉の向こうに引きこもりながら削っていけば、いずれ奴らは全滅だ!」
俺たちは息を整えながら、満面の笑みで拳を突き合わせた。
どれほど時間がかかっても構わない。この難攻不落の絶対安全圏から、遺跡の守護者たちを一人残らずすり潰し、王の宝物庫を丸裸にするための過酷で確実な「作業(殲滅戦)」が幕を開けた。




