砂海の三日間と、絶対者の再来
カランドラを出発し、『嘆きの荒野』を進むこと三日。
チャックの助言通り、こまめな水分補給と岩陰での休息を徹底したことで、俺たちは灼熱の環境下でも驚くほど消耗を抑えて行軍を続けていた。
三日目の午後。陽炎の向こうに、遺跡が隠された不自然な岩山がようやく姿を現した――その直後だった。
足元の砂丘が不気味に波打ち、重い地鳴りが響き渡った。前回の遠征でも俺たちの行く手を阻んだ、遺跡周辺を縄張りとする荒野の絶対者、サンドワームだ。
オーク・チーフテンを倒し、対重装甲用の特注武器を手に入れた今の俺たちであっても、あんな規格外のバケモノと正面からやり合えば文字通り「一飲み」にされて全滅する。戦うという選択肢は最初からない。
アル「……来たぞ。前と同じだ、岩陰に隠れろ!」
アルの慣れた合図で、全員が素早く風下にある大岩の裏へと身を滑り込ませ、息を殺す。前回遭遇している分、恐怖よりも冷静さが勝っていた。
同時にセシルが、遠く離れた砂丘へ向けて音だけの魔法(小爆発)を放つ。
『ゴァァァァッ!!』
数秒後、魔法の着弾点から数十メートルもの巨体が砂を巻き上げて飛び出した。あの分厚い装甲のような皮膚と、何でも砕く巨大な顎。サンドワームは音のした何もない空間を食いちぎると、再び地中深くへと潜り、地鳴りとともに遠ざかっていった。
ザイン「……ふぅ。何度見ても不条理な大きさですね。あの怪物がこの遺跡の優秀な『番犬』になっているおかげで、未発見のまま保たれていたのでしょうが」
ガンテツ「ガハハ、違いない! いつかあいつもハンマーで叩き潰せる日が来るかもしれんが、今日じゃねえな!」
冷や汗を拭いながら軽口を叩き合い、俺たちは正面の入り口を通り過ぎ、岩山の裏手へと回り込む。
目指すのは、前回の遠征の最後、命からがら駆け上がってきたあの「隠しハッチ」だ。
ミラ「あったよ。岩と砂でカモフラージュされた金属製のハッチ。一気に目的の『第2層』へ直行できる」
アル「ああ。前回の死に物狂いの脱出路が、今回は最高の侵入ルートだな」
ガンテツと二人掛かりで重いハッチを押し開け、全員が滑り込むように中へ入る。
外の熱気とサンドワームの脅威が完全に遮断され、ひんやりとした静寂が満ちる。
俺たちは暗い直通の階段を慎重に下っていった。前回、息を切らし、血を流しながら必死に登った長い階段。それを下りきった先には――見覚えのある、埃っぽい古代の石造りの廊下が広がっていた。
アル「……着いたぞ。第2層の制御?室だここならセーフルームにうってつけだ」
第1層を完全にショートカットし、俺たちは無傷のまま目的の階層へと足を踏み入れた。手元には潤沢な物資と、鋼を砕くための武器、更にはセーフルームまでもがある。逆襲の舞台は整った。




