未知なる宝への賭けと、先輩冒険者の金言
「――あの遺跡の第二層を落とす」
昨日の会議の終盤、アルの決断に仲間たちは頷いた。だが、セシルが構造図を見つめながら冷静に釘を刺した。
セシル「……アル、一つだけ注意点がある。あの展示室にある宝は、当時の王族の美術品や魔導具だ。歴史的価値は計り知れないけど、今のカランドラの市場で『どれほどの値がつくか』は完全に未知数なんだ。金貨1枚を軽く超えるかもしれないし、逆に買い手がつかなくて安く買いたたかれる可能性もある」
ミラ「ま、そういうことだね。綺麗なガラクタ扱いされるリスクもあるってこった。でも、Dランクをチマチマ回すより、一攫千金の夢がある分、賭ける価値は十分にあるよ」
宝の価値は未知数。それでも、あの「箱庭」の奥へ進むという決意は揺るがなかった。
翌朝、俺たちは準備のために冒険者ギルドを訪れ、顔馴染みであるチャックに声をかけた。
アル「おはよう、チャックさん。少し助言が欲しいんだ。……実はこれから、カランドラから少し離れた『深い洞窟』の調査に潜ろうと思っているんです。数日がかりの長期遠征になるんだけど、気をつけることはありますか?」
遺跡の存在は伏せ、あくまで「自然の洞窟探索」という名目で話を振る。歴戦の戦士であるチャックは、真剣な顔で答えてくれた。
チャック「深い洞窟か……。お前らもいよいよ本格的な探索に乗り出すってわけだな。いいかアル、地下の密閉空間で一番怖いのは『水と精神の枯渇』だ。埃っぽい空気と緊張感で、喉は地上の倍渇く。水と食料は、予定日数の『1.5倍』は持っていけ。それから、休む時は必ず背後が壁の『安全地帯』を確保しろ。気が休まらないと、どんな手練れでも判断を間違うぞ」
アル「水と食料を1.5倍、それに安全地帯の確保……。わかりました。チャックさんありがとうございます!」
チャック「おう。せいぜい気をつけてな。お前らがCランクに上がってくるのを楽しみにしてるぜ」
先輩の金言を胸に刻み、俺たちはカランドラの市場へ向かった。
チャックの助言通り、パーティの共通資金から銀貨10枚という大金を惜しげもなく注ぎ込み、考え得る限り最高の遠征準備を整えた。
長期間の探索に耐えられる干し肉、携帯食料、人数分の巨大な水袋。そして、即効性の高い治療用ポーションとマナ・ポーションの束だ。
サイドストーリー:重い背嚢と軽い足取り
カランドラの東門を抜け、荒野へと足を踏み出す。
ガンテツの背中には、彼自身の背丈ほどもある巨大な背嚢が括り付けられていた。
ガンテツ「ガハハ! これだけ上質な兵糧があれば、一週間は地下に籠城できるな! 荷物運びならわしに任せておけ!」
ザイン「……素晴らしい! これほど潤沢に薬品代が出るとは、前回のカツカツだった遠征が嘘のようです。これなら私も、前衛の皆さんがどれほど泥まみれの致命傷を負っても、出し惜しみなく神聖魔術を連発できますよ!」
ミラ「縁起でもないこと言うんじゃないよ。今回はチャックが言ってた『安全地帯』の確保も重要になる。展示室を攻める前に、まずは拠点にできる部屋をあの遺跡内で見つけるのが先決だね」
フィオ「♪~お水はたっぷり、お薬もいっぱい! 洞窟の奥のお人形さんも、みんなでガッシャーン!」
フィオが新調したリュートの弦を弾き、軽快な音色を響かせる。
手に入る宝の価値は未知数。だが、準備はこれ以上ないほどに万全だ。




