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冒険者アル  作者: テステス
6章 ロマン
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休息の朝と、身の丈の教訓

窓から差し込む朝日で、アルはゆっくりと目を覚ました。

腕の浅い切り傷は、前日に教会でかけてもらった初級の治癒魔法と上質な傷薬のおかげで、すでに薄いかさぶたになって塞がっている。ガンテツもベッドの上で、捻った手首をぐるぐると回して調子を確かめていた。


オーク・チーフテンとの激戦。幸いにも致命傷を負ったり、意識を失うような重傷者は出なかった。しかし、極度の緊張と限界まで魔力・体力を絞り出したことによる「満身創痍」の疲労感は凄まじく、俺たちは大事をとって四日間の完全休養を取ることに決めていたのだ。


セシル「おはよう、アル。腕の具合はどう?」


アル「ああ、痛みもすっかり引いた。ガンテツの手首も大丈夫そうだな」


部屋のテーブルでは、ミラが共通資金の袋と帳簿を突き合わせていた。


ミラ「怪我が軽いのはいいことだけど、出費はそれなりに痛かったよ。教会の治癒魔法代と上質な薬草、ドロドロになった防具の修繕費……それに四日間の滞在費と、体力を戻すためにマーサに頼んだ特別メニューの食費。全部合わせて、銀貨4枚が飛んでいったね」


アルは溜息をつき、自分の手のひらを見つめた。

あの討伐で得た報酬は銀貨25枚。確かに破格だったが、その代償として銀貨4枚の出費と、パーティ全員が四日間動けなくなるほどの疲労を負った。


アル「……Cランク相当の依頼ってのは、まだ俺たちには割に合わないな」


アルの呟きに、ガンテツも手首の包帯を解きながら深く頷いた。


ガンテツ「……全くだ。今回はたまたま軽傷で済んだから四日で復帰できたが、一歩間違えればもっと長引いてた。治療費と時間を考えりゃあ、堅実にDランクを回した方が結果的に早く稼げる。わしらにはまだ、あのクラスを連戦するだけの『地力』が足りねえな」


セシル「同感だね。今回の討伐は大きな自信になったけど、『回復にかかる時間』を冷静に計算しないと」


Cランクの壁は厚い。俺たちは実力以上の背伸びをしたことで、冒険者としての「身の丈」とコスト感覚を深く刻み込まれた。しかし、あの死闘を乗り越え、確実に力をつけていることもまた事実だった。


サイドストーリー:純白への執念と必要経費


部屋の隅で、ザインが誇らしげに胸を張っていた。

彼が着ている法衣は、あの森での泥と血の汚れが嘘のように、眩しいほどの純白を取り戻している。


ザイン「ふふふ……見なさい、この輝きを! マーサ殿の紹介で、街で一番の腕を持つ洗濯屋に依頼したのです! 特殊な薬液と魔法による洗浄で、私の信仰の証は完璧に復活しました!」


アル「……まさか、その特殊な洗濯代も共通資金から出したんじゃないだろうな?」


アルがジロリと睨むと、ザインはあからさまに目を逸らした。


ザイン「ふ、不条理な言いがかりです! これは必要経費……我々が誇り高き冒険者として街を歩くために、後衛の威厳は保たれねばならないのです!」

フィオ「あはは! ザイン、洗濯代が高すぎてミラにすっごく怒られてたんだよー!」


ミラがこめかみに青筋を立てて短剣の柄に手を伸ばし、ザインが短い悲鳴を上げて部屋の廊下へ逃げ出していく。

いつもの騒がしい日常。この温かい空間こそが、俺たちが命を懸けて守り、そしてこれから「自分たちの家」として手に入れようとしているものだった。

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