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冒険者アル  作者: テステス
6章 ロマン
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血と泥の帰還行、肩を貸し合う英雄たち

戦闘の興奮が冷めると同時に、鉛のような疲労と激痛がパーティ全体を襲った。

周囲には血の匂いが充満しており、他の魔物を引き寄せる危険性が高い。このまま森で休むのは自殺行為だった。


ミラ「……アル、腕を見せな。ザイン、アンタはもう魔力を絞り出すんじゃないよ。倒れられたら運ぶ手間が増えるからね」


ミラが手早く包帯と薬草を取り出し、アルの腕の切り傷とガンテツの手首をきつく縛り上げる。

ザインはミラの言葉に反発しようと口を開いたが、声にならず、代わりに震える手で最後の治癒魔法の残滓を二人の傷口へと流し込んだ。完全に魔力が底を突き、ザインはその場に崩れ落ちそうになる。


アル「ザイン!」


アルが咄嗟に怪我をしていない方の腕で、ザインの泥まみれの身体を支えた。


アル「……無茶しやがって。だが、助かった。さあ、帰るぞ。みんな、立てるか」


俺たちは満身創痍の体を引きずり、カランドラへの帰路についた。

ガンテツは痛む手首を庇いながらも、魔力枯渇で足元がおぼつかないセシルに肩を貸し、アルはザインの腕を首に回して支えながら歩いた。

普段なら数時間で抜けられる森の道が、まるで永遠のように長く険しく感じられた。警戒を解くことは許されず、ミラが先頭で血の匂いを消す粉を撒きながら、安全なルートを必死に探り続けた。


夕陽が荒野を赤く染め上げる頃、ようやく木々の隙間からカランドラの高い防壁が見えてきた。


門番「おい、あいつら……ひどい怪我だぞ! すぐに手当てを!」


門番たちが慌てて駆け寄ってくる。俺たちは血と泥にまみれ、息も絶え絶えだったが、アルの腰にはしっかりと「オーク・チーフテンの証」である巨大な牙が括り付けられていた。

誰一人欠けることなく、俺たちは生還を果たしたのだ。


サイドストーリー:眠れるエルフと重戦士の背中


道中、完全に体力を使い果たしたフィオは、歩きながらコクリコクリと船を漕ぎ始めていた。


ガンテツ「ガハハ……こりゃあ限界だな。ほれフィオ、おんぶしてやるから乗れ」

フィオ「……うぅん……重いよぉ、ガンテツ……手首、痛いのに……」

ガンテツ「馬鹿野郎、お前みたいな小鳥一羽背負ったところで、ドワーフの骨は軋みゃしねえよ。それより、お前の歌がなけりゃあ、わしらは森の土になってた。しっかり休んでおけ」


フィオは遠慮がちにガンテツの広く分厚い背中にしがみつくと、安心したのか数秒でスヤスヤと寝息を立て始めた。


ザイン「……アル殿。私も、おんぶを要求しても?」

アル「ザイン、お前はフィオより随分と重くて骨が軋みそうだから、肩を貸すだけで我慢してくれ」

ザイン「不条理です……!」


軽口を叩くザインの顔は土気色だったが、アルの肩に預けられたその体重は、これまで共に死線を潜り抜けてきた「確かな信頼」の重さだった。

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