新装備の咆哮と、地下室の鉄槌
「待たせたな。注文通り、硬い鎧だろうが石の壁だろうが叩き潰す特注品だ」
ゴードンがカウンターに並べたのは、鈍い銀光を放つ重厚な獲物たちだった。ガンテツには身の丈ほどもある、巨大な頭部を持つウォーハンマー。ミラには装甲の継ぎ目をこじ開けるための、鋭利かつ頑強なカギ爪状の刃を持つアーマーピック。そしてアルの飛竜骨の槍には、石突に重厚な金属の錘が仕込まれ、槍としても棍としても機能する調整が施されていた。
アル「……重い。だが、この重さが頼もしいな」
装備を受け取り、赤猫亭に戻った俺たちを待っていたのは、眉間に皺を寄せたマーサだった。
マーサ「あんたたち、いいところに帰ってきたね! 地下室に、どこから入り込んだのか『鎧ネズミ』が住み着いちまってさ。普通の包丁じゃ刃が立たないんだよ。追い出してくれるなら、一週間分の夕食はタダにしてあげるよ!」
鎧ネズミ。Dランクの魔物だが、その名の通り金属並みに硬い毛皮と表皮を持つ、今の俺たちの試運転にはこれ以上ない相手だ。
アル「よし、ちょうどいい。新しい装備の感触、確かめさせてもらうぜ」
暗い地下室に足を踏み入れると、暗闇の中で赤い目がいくつも光った。
アルが槍を構え、まずは石突側の錘で床を叩く。その振動に反応して飛び出してきたネズミに向け、ガンテツが新しいウォーハンマーを振り抜いた。
「ガハハ! 潰れろッ!!」
凄まじい衝撃音が響き、鎧ネズミの硬い表皮が紙細工のように容易く粉砕される。ミラもまた、目にも止まらぬ速さでアーマーピックを突き立て、ネズミの唯一の弱点である甲殻の隙間を正確に貫いていく。
アルも槍を振るい、穂先での刺突と錘での打撃を使い分ける。以前なら弾かれていたはずの攻撃が、確実に獲物の内部を破壊する感触が伝わってきた。
サイドストーリー:オーバーキルな掃除時間
数分後、地下室には物言わぬネズミの亡骸(と、粉砕された古い木箱の破片)が転がっていた。
地下室へ様子を見に来たマーサが、その光景を見て絶句している。
マーサ「……ネズミを退治してくれとは言ったけど、地下室を壊してくれとは言ってないよ! なんだいその物騒なハンマーは! 建物が揺れたじゃないか!」
ガンテツ「ガハハ! すまんすまん、ついノリが良すぎてな!」
ザインはというと、端っこでネズミの死骸から飛び散った体液を避けながら、ホッと胸を撫で下ろしていた。
ザイン「……不条理です。ネズミ相手にこれほどの破壊力が必要だとは。しかしアル殿、これならあの展示室のメイド共も、ただの陶器の破片に変えられそうですね」
フィオ「♪~ネズミさんはぺったんこ、ボクらのお腹はシチューを待ってる~」
新しい武器の確かな手応えに、俺たちは確信した。今の俺たちなら、あの「ルールの番人」たちを正面から打ち破れる。そして遺跡の再攻略が、はっきりと現実味を帯びてきた。




