武器なき肉体労働と、汗にまみれた銀貨
ゴードンに主力の武器や防具を預けてしまった俺たちは、ギルドの掲示板の前で頭を抱えていた。
アル「……よく考えたら、俺たち予備の武器なんて持ってないじゃないか」
ミラ「バカだねぇ、勢いで全部預けちまうからさ。護身用のナイフくらいはあるけど、これじゃスライムのだって相手にしたくないよ」
魔物討伐や危険地帯の探索は不可能。
そこで俺たちが選んだのは、ギルドの端に貼られている「非戦闘系」の依頼――商人の荷運びや、倉庫の整理といった純粋な肉体労働だった。
それから三日間。俺たちはカランドラの商業区画で、ひたすら汗を流した。
「ガハハハ! ほれ、次の木箱を持ってこい! まだまだ背中に乗るぞ!」
ガンテツが丸太のような腕で巨大な木箱を軽々と担ぎ上げ、周囲の商人たちから感嘆の声を浴びている。肉体労働において、ドワーフの重戦士の右に出る者はいない。
アルも持ち前の体力で黙々と荷車を引き、セシルとミラは荷物の検品や帳簿の確認など、頭脳と正確さが求められる作業で雇い主の信頼を勝ち取っていった。
ザイン「……不条理です! なぜ神に仕えるこの私が、埃まみれの倉庫で小麦粉の袋を担がねばならないのですか! また純白の法衣が汚れてしまいます!」
フィオ「あはは、ザイン頑張れー! ♪~えっほ、えっほ、汗かき神官、小麦粉まみれで真っ白け~!」
文句を言いながらも決してサボらないザインと、リュートを弾いて作業のペースを作ってくれるフィオ(彼女は小柄なため、帳簿係の助手だ)のおかげで、仕事は驚くべきスピードで片付いていった。
サイドストーリー:積み重なる夢
三日目の夕方。全ての荷運び依頼を終え、雇い主の商人から日当の銀貨を受け取った俺たちは、夕日に染まる広場で冷たい果実水を飲み干した。
アル「……ふぅ。久しぶりの安全な仕事もわるくないな」
魔物討伐のような一攫千金はないが、着実に増えていく銀貨の重みが心地よい。
ガンテツが首のタオルで汗を拭いながら、満足げに笑う。
ガンテツ「ガハハ! たまにはこういうのも悪くねえ! 武器を振るわなくても、仲間と力を合わせりゃ金は稼げるってもんだ!」
ミラ「まあね。でも、やっぱりアタシは短剣を握ってる方が性に合ってるよ。……早くゴードンのオッサンの仕事が終わらないかね。あの『箱庭』のお宝が、アタシたちを待ってるんだからさ」
心地よい疲労感の中、俺たちは「自分たちの家」という夢に向かって、また一歩前進したことを噛み締めていた。




