未知の制御盤と、天への階梯
ザインの決死の陽動によって潜り込んだ使用人通路の先は、表側の豪華絢爛な装飾が嘘のように、冷たい石材と剥き出しの魔導回路が走る無機質な空間だった。
しばらく進むと、僕たちは無数の魔晶石が埋め込まれた奇妙な机や、壁一面に明滅する光の文様が並ぶ、広大な円形の部屋に行き当たった。
セシル「……これは、すごい。現代の魔導理論とは根本から構築の仕方が違う。アル、おそらくここは遺跡全体の動きを管理している『制御施設』のような場所だ」
セシルが震える手で壁の文様に触れようとするが、それ以上のことは専門知識を持つ彼にすら分からなかった。現代の魔法が「個人の魔力」を起点にするのに対し、この場所は「地脈から直接引き出した巨大なエネルギー」を複雑な術式で編み込んでいるようだった。
ザイン「不条理です……。この光の点滅一つ一つが、あの恐ろしい清掃人形たちを動かしているというのですか? どこをどう触れば彼らを大人しくさせられるのか、検討もつきませんよ」
アル「無理に触って自爆でもされたら堪らないな。お宝の気配もなさそうだ……ん?」
制御盤の陰を調べていたアルが、埃を被った重厚な鉄の扉を見つけた。ミラが慎重に罠の有無を確認し、扉を開けると、そこには居住区画の喧騒を避けるようにして、上へと続く長い螺旋階段が伸びていた。
セシル「上へ?この経路図にはない階段だね。 第一層はあんな風に崩落してしまったし、この階段がどこに通じているのかは分からないけど……」
アル「下りていく一方じゃ、いつか行き止まりになる。この未発見の遺跡の『出口』に繋がっている可能性があるなら、賭けてみる価値はあるはずだ」
僕たちは未知の古代技術への畏怖を抱きつつ、管理施設を後にして、暗い階段を一歩ずつ登り始めた。
サイドストーリー
階段を登る途中、ザインが熱心に自分の法衣の裾を点検していた。
ザイン「ふむ、やはりあの強制洗浄、生地の繊維を数ミリ削り取っていますね。おかげでこの通り、新品のような白さですが……次はもう耐えられません。神の加護も、薄くなった布地までは守ってくれないでしょう」
フィオ「あはは、ザイン、お洋服が薄くなった分、体が軽くなって階段を登るのが楽ちんになったんじゃない?」
ガンテツ「ガハハ! ポジティブだな、フィオ! よし、ザインがまた汚れたら、次はわしがブラシを持って洗ってやろう!」
ザイン「断固拒否しますッ! 不条理な友情は間に合っています!」
軽口を叩き合いながらも、アルの目は鋭く階段の先を睨んでいた。第一層での崩落、そして第二層でのオートマタの脅威。この階段の先が、さらなるロマンか、それとも出口か。一歩ごとに、遺跡の奥底から吹き上がってくる風が、少しずつ暖かくなっている気がした。




