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冒険者アル  作者: テステス
6章 ロマン
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静寂の居住区画とルールの番人

野営を終え、重厚な大理石の扉を押し開けた僕たちは、思わず息を呑んだ。

第一層の自然に侵食された荒々しい景色とは打って変わり、そこは塵一つ落ちていない、冷たくも美しい空間だった。廊下には魔法光が灯り、壁には当時の王族の栄華を示すような豪奢なタペストリーが飾られている。


そして、大人が六人横に並んで歩いてもまだ余裕があるほど幅の広い、豪奢な青い絨毯が通路の中央にずっと敷かれていた。客が周囲の展示品をゆったりと安心して鑑賞できるよう、十分なスペースが確保されているのだ。


その広い絨毯の上や廊下の端を、無音で滑るように動く者たちがいた。

金属と陶器でできた関節を持つ、メイドや衛兵の姿をした「自動人形オートマタ」たちだ。アルが警戒して立ち止まると、一体のメイド型オートマタがこちらへ振り向き、滑らかな動作で一礼した。


オートマタ『未登録の来客を確認。歓迎いたします。来客の皆様は、中央の青い絨毯の上をご通行ください。絨毯から足を踏み外した場合は【警告】を行います。警告を無視したルート逸脱、および展示品への接触を確認した場合は【強制退去】を実行。さらに大きく経路を外れた悪質な侵入者と判断した場合は、【防衛機能】に移行いたします』


声には一切の抑揚がない。試しにガンテツが絨毯の端からつま先を少しだけ外に出してみると、近くの衛兵型がピタリと止まり、赤い目を向けて『警告。順路へお戻りください』とだけ告げた。ガンテツがつま先を戻すと、衛兵は再び通常の巡回へと戻っていく。


アル「……なるほど。客を招き入れる場所なだけあって、いきなり殺しにかかってくるわけじゃないのか。……セシル、地図はどうなってる?」


セシル「この青い絨毯のルートは、来客用の『展示区画』をぐるりと回って、最終的に行き止まりになる構造だ。脱出ルートや宝物庫があるとしたら、絨毯の敷かれていない『使用人専用区画』か『管理区画』の奥だよ」


つまり、どこかで必ず「大きく道を外れる」必要があるということだ。


アル「……衛兵の巡回には三十秒の死角ができる。次の角を曲がった先にある扉……あそこなら、一気に絨毯を飛び出して扉に駆け込めば、奴らが暴れる前に視界から消えられるはずだ。ミラ、鍵開けの準備を。ガンテツは殿を頼む」


ルールの隙間を縫う、針の穴を通すような隠密行軍。アルの的確な指示のもと、僕たちは広い絨毯の中央を歩きながら、決行のタイミングを計り始めた。


サイドストーリー


張り詰めた空気の中、ザインは絨毯の中央を歩きながら、こっそりと法衣の泥を振り払っていた。しかし、払った泥の塊が絨毯の少し外に落ちた瞬間、メイド型オートマタが滑るように接近してきた。


オートマタ『警告。展示区画への汚損を確認。対象を不衛生と断定、強制洗浄および退去モードへ移行します』

ザイン「ひっ!? ま、待ちなさい! その手に持っている巨大な金属製モップは何ですか! 不条理です! 私は客ですよ!」


オートマタは武器こそ抜かなかったものの、恐ろしい膂力でモップを構え、ザインを「物理的に掃き出そう」と迫り来る。ザインが涙目で慌てて絨毯の中心へ逃げ込むと、オートマタはピタリと動きを止め、無表情で泥だけを掃除して去っていった。


フィオ「しーっ! ザイン、大きな声出すと悪質な侵入者扱いされて、今度はあの衛兵さんの槍が飛んでくるよ!」


フィオに小声で窘められ、ザインは青ざめた顔でコクリと頷き、アルたちの背中にしがみつくようにして歩を進めた。

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