表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/76

ささやかな祝宴と柔らかなベッド

すっかり日の落ちた街を歩き、俺たちは定宿である『赤猫亭』の扉を開けた。

夕食時で賑わう食堂の中は、肉の焼ける匂いとエールの香ばしい匂いが充満しており、空腹の胃袋を容赦なく刺激してくる。


アル「マーサ! 今日は水で薄めたスープじゃねぇぞ。まともな肉とエールを頼む!」


俺が大声を上げると、厨房の奥から女将のマーサが大きな鍋をかき混ぜながら顔を出した。


マーサ「おかえり! おや、随分と景気がいいね、アル。ちゃんと稼いできたってわけかい? よしよし、今日はアタシの特製肉込みシチューと、石じゃない柔らかいパンを出してやるよ!」


ガンテツ「ガハハ! ドブさらいの報酬だがな! 腹に入れば同じ肉と酒だ! さっさとエールを樽ごと持ってきてくれ!」


俺たちはテーブルに陣取り、それぞれの取り分から大銅貨1枚ずつを出し合って、まともな夕食と今夜のベッド代を支払った。

久しぶりに口にする温かい肉の味に、自然と顔がほころぶ。


セシル「……需要と供給だね。僕たちが大銅貨を払えば、マーサさんはまともな食事と安全な寝床を提供する。実に健全な取引だ。……ああ、硬い床で寝なくて済むのが一番嬉しいよ」


ザイン「おやおや、私はこの不浄なるネズミの匂いを洗い流すのが先ですよ……。ですが、神の恵みであるワインと肉は、冷めないうちに頂きましょう。これも立派な功徳ですからね」


ミラ「……ベッド代と飯代でまた金が飛ぶね。でも、たまには屋根裏のネズミを気にせず寝たいし、今日くらいは贅沢してやるか」


ミラは少し不満げに呟きながらも、自分の分のシチューをあっという間に平らげていった。

どん底から始まった一日だったが、終わり良ければ全て良し。俺たちのささやかな祝宴は、夜遅くまで続いた。


サイドストーリー


食事の後、ザインはワインのおかわりを頼もうとマーサに擦り寄っていた。


ザイン「おや、マーサさん。今日のシチューはまさに神の奇跡と呼ぶにふさわしい美味でした。この感動に免じて、もう一杯だけワインをツケで……」


マーサ「こらザイン! ツケが溜まってるの忘れたとは言わせないよ! 今日の稼ぎから少しでも返しな! 払えないなら皿洗い百枚の刑だよ!」


ザイン「ひっ!? わ、分かりましたよ! 神の使いに向かってなんという暴挙……!」


ザインが慌てて小銭を差し出す姿を見て、食堂のあちこちから常連たちの笑い声が上がった。

騒がしくも温かい、いつもの赤猫亭の夜だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ