盟友の計らいと、戦士の休息
物見櫓の死闘が終わり、静寂が戻った現場に、森の影からチャックたちが姿を現した。彼らは数人の縛り上げた伏兵を引きずっており、アルの負傷した肩を見て、チャックは短く口笛を吹いた。
チャック「……へっ、派手にやられたな、アル。だが、しっかり仕留めるとはな。Dランクの枠に収めておくのが勿体ねえ働きだぜ」
チャックはそう言うと、懐からずっしりと重い袋を取り出し、アルに放り投げた。
チャック「約束だ。案の定バルトロ達には懸賞金がかけられていた。全員で銀貨20枚ってとこだ。これは遠慮なく俺達がいただく。が……今回は特別だ。協力費の5枚は受け取らねえ」
アル「チャックさん……。いいのか、そんな……」
チャック「気にするな。伏兵どもの小銭も悪くなかった。それに……お前らには、まだ死んでもらっちゃ困るんだよ。早くその傷を治して、また酒を奢らせろ」
アルは、血の滲む手で銀貨の袋を握りしめた。
宿に戻ると、セシルがすぐに自分の荷物から、以前購入し大切に保管していた「薄め液」の小瓶を取り出した。
セシル「……アル、じっとしていて。……少し染みるけど、我慢して」
セシルは手際よくアルの傷口を洗浄すると、魔法で直接治す代わりに、薬水の効能を最大限に引き出すよう、細心の注意を払って塗布し、清潔な布で固く縛り上げた。アルの農夫として鍛え上げられた頑強な肉体と、セシルの的確な手当て、そして高価な薬水の効果により、出血は止まり、傷口は最悪の事態を免れた。
治療を見守るミラの目には、まだ消えない不安と、それ以上の深い情愛が宿っていた。彼女はアルの手を握り、彼が深い眠りにつくまでその場を動こうとはしなかった。
サイドストーリー
宿の階下では、ガンテツがチャックのパーティの戦士と酒を酌み交わしていた。
ガンテツ「ガハハ! あのバルトロとかいう野郎、わしの盾を飛び越えた時は肝を冷やしたがな。……だが、アルもあそこで体を割り込ませるとは。わしもまだまだ修行が足りんわい!」
一方、ザインはセシルの手伝いをしながら、空になったポーションの瓶を見て溜息をついた。
ザイン「……不条理です。あの高価な薬水を使い切るとは。しかし、アル殿の命に代えられるものではありませんからね。神よ、薬の巡りが良くなるよう、私の祈り(と、せめてもの気休めの冷却魔法)を捧げます」
フィオは宿の窓辺で、穏やかな鎮魂歌を口ずさんでいた。アルの痛みを和らげ、ミラの荒んだ心を癒やすためのメロディ。戦いの余韻が、カランドラの穏やかな夜の空気の中に溶けていく。




