断絶の月光、英雄の連携
アルが身を挺して作った、最大かつ唯一の隙。バルトロが血に濡れた湾曲刀を捨て、崩れかけの体勢を立て直そうと跳躍しようとした、その一瞬だった。
フィオ「♪~逃がさないよ、闇のネズミ! これがボクらの、勝利の旋律!!」
後方でフィオが歌声を戦闘行動へと切り替えた。リュートを背負い、ゴードンの店で新調した「替え弦の弓」を構える。エルフの鋭い視線がバルトロの動きを捉え、魔力を帯びた矢が月光を切り裂いて放たれた。
ギィィン! という音と共に、矢はバルトロの態勢を立て直そうとした右肩を正確に貫いた。
バルトロ「ぐああぁっ!? エルフの、矢が……!」
攻撃特化で打たれ強いバルトロにとって、その追い打ちは致命的だった。肩から力が抜け、跳躍は不完全に終わる。アルの挺身、セシルの結界、そしてフィオの矢。パーティ全員が、ミラのために、この一瞬を創り出したのだ。
ミラ「……アル、フィオ、みんな……ありがとう!!」
ミラが、アルの挺身に蒼白になっていた表情から、かつてないほど鋭い、過去を断ち切る覚悟の表情へと変わった。短剣を構え、フィオの矢によって完全に動きを封じられたバルトロの懐へと、音もなく、だが誰よりも速く飛び込む。
アル(……行け、ミラ! )
ミラの短剣が、月明かりの下で銀色の奇跡を画き、態勢を崩したバルトロの心臓へと吸い込まれるように突き刺さった。
バルトロ「出来損ない……が……お前……は……」
バルトロは最期に、ミラの瞳の中に、組織の誰も持っていなかった「仲間への信頼」という光を見て、そのまま地面へと崩れ落ちた。
月光が照らす中、物見櫓には静寂が戻った。アルは血を流しながらも、ミラがバルトロの心臓を貫いた瞬間を見届け、安堵の表情で膝をついた。
サイドストーリー
戦闘が終了した瞬間、ザインが悲鳴のような声を上げながらアルに駆け寄った。
ザイン「アル!! 不条理です! 神の恵みた、私の最高級の聖水瓶を二瓶も消費して、この傷を……! セシル、早く魔法の循環を! フィオ殿、もう勇ましい歌はいいです、アルの精神を安定させる歌を!」
ザインは震える手で聖水瓶を構え、アルの傷口に聖水を惜しみなく注ぎながら、必死の祈りを捧げ始めた。セシルは杖を構え、アルの体内の魔力循環を整え、失血による衰弱を防ぐための魔法的処置を施した。
フィオ「……うん。ボクの弓、役に立ってよかった。アル、大丈夫、ザインとセシルがいるから。ミラ、お疲れ様。……もう、大丈夫だよ」
フィオは弓を収め、小さな鼻歌でアルの痛みを和らげながら、トドメを刺して立ち尽くすミラの肩を優しく抱いた。ミラの瞳からは、これまで堪えていた熱いものが溢れ出し、アルの挺身と仲間の信頼に、静かに感謝の言葉を呟いた。
一方、櫓の周囲の森では、チャックのパーティが「掃除の仕上げ」を終え、アルたちの勝利を確認していた。
チャック「……ふぅ。小賢しいネズミどもめ。」
チャックは血を拭いながら、櫓から聞こえてきたミラのトドメの気配を感じ、ニヤリと笑った。
チャック「……終わったみたいだな。あいつらはもう、ただの農夫じゃねえ。……さて、俺たちはここで『貸し』の清算をするとするか」




