断絶の月光、物見櫓の対峙
陽が落ち、カランドラの喧騒が遠のく。アルたちは街の外れでチャックのパーティと最後の打ち合わせを行った。
チャック「……いいか、周辺の森に潜んでいる『ネズミ』どもは俺たちが掃除してやる。お前らは櫓の中のバルトロにだけ集中しろ」
チャックたちは影に溶け込むように森へと消えていった。アルは深く息を吐き、隣で硬い表情を崩さないミラを見た。
アル「行こう。あいつを終わらせて、一緒に宿に帰るぞ」
夜の静寂の中に佇む古い物見櫓は、まるで巨大な墓標のようだった。アルたちが櫓の前に到着すると、月明かりを浴びた二階のバルコニーに、バルトロが悠然と姿を現した。
バルトロ「……ハッ、本当に仲間を連れてくるとはな。お前も随分と甘くなった。その泥臭い冒険者どもが、自分の命よりもお前を優先すると本気で信じているのか?」
バルトロが指を鳴らす。本来なら、周囲の茂みから組織の伏兵が一斉に矢を番えるはずの合図だ。しかし、森は不気味なほどに静まり返っていた。
バルトロ「……なんだ? おい、どうした! 出てこい!」
焦燥の色を見せるバルトロ。その時、森の奥から低く短い口笛が響いた。チャックからの「外は片付いた」という合図だ。
アル「バルトロ。外の伏兵はもういない」
アルは新調した飛竜骨の槍を力強く突き出した。ミラの目にも、絶望ではなく、過去を断ち切ろうとする鋭い光が宿っている。
ミラ「……あんたの言う通り、アタシは甘くなったかもしれない。でも、アタシはここがいい!……だから、あんたはここで切り捨てる!」
バルトロは忌々しげに舌打ちをし、懐から奇妙な形をした湾曲刀を引き抜いた。
バルトロ「……出来損ないが!」
サイドストーリー
櫓の周囲の森では、チャックのパーティが音もなく「掃除」を終えていた。
チャック「……ふぅ、小賢しい連中だ。まさか暗殺組織の末端が、こんな辺境まで出向いてくるとはな」
チャックの仲間「チャック、アルたちは大丈夫か? 相手は相当な手練れだぞ」
チャック「信じろ。あいつらはもう、ただの農夫じゃねえ。……さて、俺たちはここで『お掃除の仕上げ』だ。一匹たりとも逃がすんじゃねえぞ」
一方、櫓の影ではセシルが魔法の陣を密かに展開し、ザインは「不条理な夜遊びです!」と呟きながらも、いつでも聖水を浴びせられるよう瓶の蓋を緩めていた。フィオの歌声が、静かに戦場を包み込もうとしていた。




