黄金色の祭典と、闇から届いた招待状
『初夏の祭典』当日。カランドラの街は朝から色鮮やかな旗で飾られ、屋台から漂う香ばしい匂いと人々の笑い声に包まれていた。
昼過ぎ、アルたちは領主の代理人から広場へと招かれた。先の北方遠征での功績を称えられ、市民たちの拍手の中で「カランドラの守護者」としての記念メダルを授与されたのだ。元農夫であるアルにとって、大勢の前で英雄として扱われるのは気恥ずかしかったが、街の人々の温かい目線に、この場所を「第二の故郷」として守りたいという思いがより一層強まった。
しかし、陽が落ち、夜の宴が最高潮に達した頃。賑わう大通りを少し離れたアルたちの前に、一人の見知らぬ男が立ちふさがった。
男はアルを一瞥したが、興味なさそうに鼻で笑う。「……泥臭い英雄様。お前に用はない。……そこにいる『出来損ない』を出してもらおうか」
男の視線は、アルの背後にいたミラへと向けられていた。ミラの顔が、見たこともないほど蒼白になり、無意識に短剣の柄に手が伸びている。
ミラ「……バルトロ。どうして、あんたがここに……」
『バルトロ』。アルにはまったく耳馴染みのない名だったが、男から放たれる殺気は、北の森で対峙したどの魔物よりも冷たく、そしてひどく異質だった。男は不気味な笑みを浮かべ、ミラに向けて一枚の黒い硬貨を投げ渡した。
バルトロ「お前が日向で英雄ごっこに興じて、こちらに情報が入らないとでも思ったのか?……ミラ、明日の夜、街の外の古い物見櫓に来い。逃げれば、お前のその大事な『お仲間』ごと、灰にしてやる」
「待て! 何者だ!」とアルが反射的に槍を構えようとしたが、男は驚くべき身のこなしで、まるで煙のように雑踏へと消えていった。
祭りの音楽が遠くで鳴り響く中、アルが振り返ると、ミラは手の中で冷たく光る黒い硬貨を見つめたまま、ただ小刻みに震えていた。
サイドストーリー
祭りの最中、ザインとフィオは屋台巡りを満喫していた。
ザイン「おお、この黄金色に揚げられたジャガイモ! 聖なる油の香りがします。不条理です、神への供物とする前に私の胃に吸い込まれてしまうとは!」
フィオ「あはは、ザイン、口の周りが塩だらけだよ! ほら、ボクの新しい弦の音色を聴いて、あそこの串焼き屋のおじさんが一本サービスしてくれたよ!」
二人はミラの背後に迫っていた影に気づかず、平和な祭りの夜を楽しんでいた。一方で、ガンテツはアルの隣で腕を組み、去っていった男の気配を静かに睨み据えていた。
ガンテツ「……アル、あの男の足運びは本物だ。ただのチンピラじゃねえぞ。ミラの嬢ちゃんの知り合いのようだが……かなり厄介なことになりそうだ」




