黄金の循環、秘境の連戦
夕刻、ギルドでゴブリン討伐の報告を終えた俺たちの前に、快復した『鉄の樫の木』のリーダーが姿を現した。彼は深く頭を下げると、俺たちを隅へ呼び寄せ、声を潜めてこう言った。
「命の恩人のあんたらにだけ教える。カランドラから南西へ半日、険しい崖を降りた先にある『木漏れ日の隠れ谷』だ。あそこには上質な薬草が群生し、手強いが素材が高く売れる『霧猪』が棲んでいる。ギルドには報告していない、俺たちの秘密の稼ぎ場だ」
俺たちはその助言を頼りに、新装備に体を慣らすため、計三回その「穴場」へと足を運んだ。
初日は慣れない崖降りに苦労したが、谷に降り立つと空気の清浄さに驚いた。セシルとフィオが希少な『銀露草』を次々と摘み、俺とガンテツは霧の中から突進してくるミストボアを迎え撃つ。
新調した槍は、ボアの厚い皮を紙のように切り裂いた。ガンテツの盾も、一歩も退かずに突進を受け止める。夜は谷の洞窟で焚き火を囲み、新装備のクセを語り合った。二日目の夕方に帰還。
二回目以降、移動はスムーズになり、ミラの索敵精度も上がった。もはやDランク級の魔物では俺たちの足は止まらない。装備は完全に身体の一部となり、連携もチャックのパーティに迫るほどの滑らかさを見せ始めた。
三回通い詰め、俺たちの荷袋はミストボアの牙と、輝くような希少薬草でパンパンに膨れ上がった。
三度目の帰還後、俺たちはその足でゴードンの『片目鴉の店』へ向かった。
ゴードン「……あぁ? また来たのか。言ったはずだ、ガラクタなら……って、おい」
ゴードンがカウンターに広げられたボアの牙と薬草を手に取り、ルーペを覗き込む。
ゴードン「……銀露草、それにミストボアの牙か。これほど状態の良い素材は、Cランクの奴らでもそうそう持ち込まねぇぞ。……チッ、あのお人好しどもから聞きやがったな」
ゴードンは毒づきながらも、以前より少しだけ敬意の混じった手つきで査定を行い、銀貨12枚という破格の買取値を提示した。
サイドストーリー
三回の遠征を通じて、ザインは「聖水の使い所」を心得始めた。
ザイン「ふむ、この『木漏れ日の隠れ谷』は不条理なほど清浄ですね。私の聖水も、ここの湧き水で希釈すれば、より神聖な香りが増すというものです。……アル殿、見てください。このボアの牙、私の祈りで磨いたらこんなに輝いていますよ。これならゴードン殿も色を付けざるを得ないでしょう!」
ミラ「……アンタ、結局商売のことばっかりだね。まあ、そのおかげで高く売れたんだから文句はないけどさ」
一方、フィオは谷で拾った珍しい木の実で、新しいジャムを作っていた。
フィオ「やあやあ! 厳しい修行の後は、甘いものが一番だよ! 明日の朝ごはんは、このジャムをたっぷり塗ったパンを食べようね!」
過酷な連戦だったが、仲間たちの表情に悲壮感はない。確かな装備、確かな実力、そして着実に積み上がる資金。カランドラの夕焼けが、今の俺たちにはとても温かく感じられた。




