新しい牙、盤石の布陣
『片目鴉の店』で装備を整えた俺たちは、その足でギルドへ向かい、エリーナから「南の街道を荒らす、はぐれゴブリンの群れ(10匹程度)の討伐」という手堅いランクD依頼を受注した。
新しい武具の感触を確かめ、連携の精度を上げるにはまさに打ってつけの相手だ。
南の街道沿いの森で、荷馬車を襲う算段を立てていたのか、街道の様子を窺っているゴブリンの小さな野営地を発見すると、俺たちは事前の打ち合わせ通りに動いた。
ガンテツ「ガハハ! 来るなら来い、小鬼ども!」
ガンテツが意図的に大きな音を立てて野営地に踏み込むと、警戒していたゴブリンたちが奇声を上げて一斉に群がってきた。錆びた剣や粗悪な棍棒がガンテツの大盾に降り注ぐが――
ガンテツ「……ほう! 全く腕に響かんわい!」
ゴードンが取り付けてくれた『魔導金属の装甲板』は、ゴブリンたちの渾身の打撃をいとも簡単に弾き返し、逆に彼らの粗末な武器を粉砕した。
その鉄壁の守りの陰から、俺は新調した槍を突き出す。
アル「いける……! 軽いのに、威力が段違いだ!」
『飛竜の骨材』で作られた柄は驚くほど手に馴染み、わずかな踏み込みで信じられないほどの刺突力を生み出した。まるで槍が自ら獲物を求めて伸びていくような感覚だ。ガンテツの盾に阻まれていた前衛のゴブリン数匹が、反応する間もなく一瞬で串刺しになる。
セシル「僕も行くよ!」
後方からセシルが放った魔法は、今までよりも詠唱が短く、威力も鋭かった。『戦術魔石の短杖』が魔力の通りを最適化し、密集しようとしたゴブリンの中衛を正確に切り裂いていく。
ミラ「……チッ、アンタらだけで片付けられちゃたまらないよ」
そして、頭上の木の枝から音もなく飛び降りたミラが、たまらず逃げ出そうとしたゴブリンの背後に滑り込んだ。『暗殺者用の特注革鎧』は衣擦れの音すら立てず、新調された完璧な重心の投げナイフが、見張りのゴブリンの急所を的確に貫いた。
圧倒的だった。
以前なら10匹の群れでも、囲まれないように立ち回りながら多少の傷は覚悟しなければならなかった。しかし今は、個々の装備の暴力的な性能差が、戦術の安定感を劇的に引き上げている。
銀貨15枚の先行投資は、決して無駄ではなかった。俺たちは無傷のまま、瞬く間に10匹のゴブリンの野営地を制圧した。
サイドストーリー
後方では、フィオとザインがそれぞれの新しいアイテムの使い勝手を試していた。
フィオ「♪〜見て見て! 新しい弦の音色、すごく澄んでるでしょ! 小鬼たちもうっとりして動きが止まっちゃうよ!」
フィオがリュートをかき鳴らすと、確かにゴブリンたちの何匹かが、その美しい音色に気を取られて隙を見せていた。
ザイン「おお、なんと不浄な小鬼ども! しかし、ゴードン殿から巻き上げたこの高純度の聖水を、このような下等生物に使うのは不条理の極み……。ええい、一滴だけです! 一滴だけ撒いてやりますから、その僅かな恩恵に感謝して逃げ散りなさい!」
ザインは渋々といった様子で聖水の瓶の蓋を開け、指先で弾くようにほんの僅かな水滴を飛ばした。それだけでもゴブリンたちは聖なる力に怯え、陣形を完全に崩していた。




