祝杯の夜、誓いの杯
アルが目覚めたのは、気絶してから三日後の朝だった。
仲間たちの献身的な看病、そしてチャックの適切な判断のおかげで、アルの体からは瘴気の毒も抜け、あの死闘が嘘のような穏やかな目覚めを迎えた。
夜、体調が整ったアルは、仲間たちを連れて『赤猫亭』の広間に降りた。そこには既に、怪我を負いながらも快気祝いのために集まっていたチャックたちの姿があった。
チャック「おう、アル。ようやく生き返ったか。心配させやがって」
チャックは笑いながら、アルの目の前にずっしりと重い袋を置いた。
チャック「交渉の結果だ。今回の報酬、お前らの取り分は銀貨20枚だ。……5枚上乗せだ。文句ねえだろ?」
アルは袋の重みを確かめ、セシルが中身を確認して静かに頷く。
チャック「俺たちは銀貨35枚を貰い受ける。ランクC冒険者としての責任代だ。だがな、アル。……お前らが後ろを完璧に守ってくれたから、俺たちは最後に核を穿てた。この20枚は、お前らの実力で勝ち取った正当な対価だ。大事に使えよ」
アル「……ありがとうございます、チャックさん」
エールを酌み交わし、北方の冷たい霧の中での死闘を笑い話に変えていく。まだ自分たちの拠点を持つには少し資金が足りない。だが、この20枚の重みは、アルたちにとって何よりも確かな「冒険者の証」となった。
サイドストーリー
打ち上げの最中、ザインは「不条理だ」と言いながらも、上機嫌でチャックのパーティの僧侶と談笑していた。
ザイン「……いいですか、アル殿の看病のために、私がどれほど神聖なる祈りを捧げたか! あの時、私の目の前でボアが沈黙した瞬間……アル殿が天使に見えたというのは、ここだけの秘密ですよ?」
ミラ「……チッ。普段からそれくらいアルを信頼してなよ。……まあ、アタシも今回は、あの槍には助けられたけどね」
フィオはテーブルの上で、北方遠征の新しい歌を披露している。まだ家を買うのは先だが、その歌詞には希望が溢れていた。
フィオ「♪~霧を抜けて、カランドラ。金貨はないけど、絆はある! 次の依頼は、もっと大きな夢への架け橋!」
チャックの仲間たちも手拍子を送り、宿の広場は温かい熱気に包まれた。遠征の疲れを癒やし、アルたちは明日から始まる「日常」と、その先にある「家」への期待を胸に、夜を越えていく。




